オリエンタルな不老不死

執筆者 | 21/05/19 (水) | コラム

※5月20日追記

下記内容について、ギルガメッシュ叙事詩のあらすじ部分については、矢島文夫 訳「ギルガメッシュ叙事詩」に依拠しています。特に太字斜体部分については、矢島先生の訳の引用ないしは再構築となります。ご了承ください。

 

 

 こんにちは!第一印象がラズベリー賞でお馴染みの私です(よくわからなかった方は、5月19日のホームルームをご覧くださいね)。

 今回は、ホームルームであっちゃんが「不死は無理だけど、不老はいける!」と言っていたことから想起して、不老不死のお話をしたいと思います。とは言っても、医学的なことではなくて、不老不死は人間が太古の昔から追い求めているよ、というお話です。

ギルガメシュ叙事詩

 ギルガメシュという名前を聞いたことはあるでしょうか。同名のキャラがあらゆるアニメやゲームに登場するので何となく名前は知っている方も多いかも知れません。元ネタは、古代オリエント最大にして世界最古の叙事詩、ギルガメシュ叙事詩の主人公、メソポタミア文明シュメール初期王朝時代に実在していたと考えられる伝説的な王ギルガメシュです。このギルガメシュ叙事詩を読んだことのある方には出会ったことがないので、軽く内容をお伝えします。もちろん、不老不死に繋がるお話です。

暴君ギルガメシュ

 ウルクの都城の王ギルガメシュは、英雄であるとともに暴君都の乙女を奪い去ることは特に都の住民たちから恐れられていた。天なる神々は、都の人々の「ギルガメシュの悪業を止めさせてほしい」という願いを聞き入れ女神アルルに何とかせよ、と命ずる。女神は粘土からエンキドゥという名の猛者を造り上げ都から少し離れた野に解き放った。エンキドゥは裸で全身は毛に覆われ、野獣のような生活をしていた。そこへ、ギルガメシュからおくられた娼婦がやってきて彼の欲望を満たすとともに人間らしくしてしまうエンキドゥが人間らしさに目覚めると、彼と仲の良かった野獣たちは彼から去っていき、エンキドゥは娼婦から着衣や食事の作法を教わる。

ギルガメシュvsエンキドゥ

 ギルガメシュは夢でエンキドゥが彼の元までやってくることを知る。己の権力誇示のため大宴会を催してエンキドゥを迎えたギルガメシュ。会場の入り口で二人の大格闘がはじまり、長時間の乱闘の末、お互いの力を認め合い友情が芽生える。

 ウルクでの安楽な生活に満足できないギルガメシュとエンキドゥは、遠方の杉の森に住む森番フンババを殺し杉を切り払いあらゆる悪を国から追い払おうとする。幾多の難儀を乗り越えてついに二人はフンババを倒す。

女神イシュタル

 ギルガメシュに魅せられた愛と逸楽の女神イシュタルは、多くの報酬を約束して彼を誘惑するが、昔日の暴君とはことなるギルガメシュはその誘いをあざけり返す。激昂したイシュタルは、天の牛ウルクを送り、彼と都城を滅ぼそうと試みる。何百という兵士が殺されたが、ギルガメシュはエンキドゥと力を合わせてこれに打ち勝った。

 しかし、フンババとウルクを殺した罪でエンキドゥは神々により「近いうちに死ななければならない」と告げられる。12日間の病の後ギルガメシュに看取られてエンキドゥは最期を迎える。

不老不死

 エンキドゥが死んだように己もやがては死ぬ。ギルガメシュには悲嘆が付き纏い、ついに彼は不老不死を求めて旅に出る。

 古都シュルッパクの聖王ウトナピシュティムだけが不死を得たと知っていたギルガメシュは、聖王の住まいを尋ね不死の秘密を聞く。そこで昔あった大洪水のことが物語られる大洪水の最中、ウトナピシュティムだけは四角い船を造り難を逃れたというのだ。永遠の生命は神々の贈り物であって彼の預かり知るところではない、というのが聖王の答えだった落胆するギルガメシュにウトナピシュティムは海底にある永遠の若さの植物のことを教える。

 喜び勇んで植物を採り帰途につくが、水浴びをしている間に蛇が来てこの植物を食べてしまった。失望の中、ウルクに辿り着いたギルガメシュがその後どのように暮らしたかは、誰も知らない。

不老不死ってさ

 以上が、物語の大まかな流れとなります。読み解ける内容が多すぎて大変ですが、まずは不老不死のお話を。

 この物語が書かれたのは概ね紀元前3000年紀。今からざっと5000年前です。人間て5000年も前から不老不死を追い求めていたんですね。そして、それが絶対に手に入らないことを知っていたんです。しかも、不老不死を追い求めるのは、往々にして勝者。ギルガメシュは王であるばかりではなく、身近には親友エンキドゥもおり、安楽な生活に満足できないほどに満たされ過ぎた人です。そこでフンババを倒し杉を切り倒す、つまり神殺し(自然破壊)をして土地を開拓し、それでもいずれ死ぬことが我慢ならずに不老不死を求めて旅に出るわけですよね。

 なんだか、現代でも為政者とか成功者とか、暇を持て余した人ってこういう発想になってませんかね(あっちゃんのことじゃない。断じてあっちゃんのことじゃない笑)。人間て5000年程度じゃ進歩しないのかも知れない。楔形文字で力強く刻まれた文章に考えさせられます。

 他にも、男の友情(喧嘩の後に同じ空見て笑う系)のはしりだとか、ノアの方舟の原型だとか、言いたいことは目一杯あるのですが、今日はこの辺で。

 あ!あと、梅原猛先生の「ギルガメシュ」もめちゃめちゃ面白いので!!ぜひ!お読みください(*´꒳`*)

 ではまた。

執筆者 | 21/05/19 (水) | コラム


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