アメリカコロナワクチン事情(パート2)

執筆者 | 21/05/30 (日) | コラム

アメリカのコロナワクチン事情(パート2)

PROGRESSの皆様、こんにちは!

ウォルクスクラス所属、若生円佳(わかいきまどか)、ニックネームをまどりーなと申します。

どうぞよろしくお願いいたします。

私は現在ニューヨークに在住しております。十数年在住する中で様々感じたこと、今の現地のCOVID-19(新型コロナ)に関する現状などを、少し自分なりの意見も含めながらお伝えさせていただきたいと思います。

以前、アメリカのワクチン事情について書かせていただいたコラムはこちらです。

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今回はパート1からの現状アップデートとして、パート2とさせていただきました。

ワクチンツーリズム

今月上旬、衝撃のニュースが世界を駆け巡りました。

「ニューヨーク市長が市の観光地や主要駅で、『観光客に』『無料で』『予約無しで』『18歳以上の証明書だけで』1度の接種で済むジョンソン&ジョンソンワクチンを提供すると発表した」というニュースです。

翌日には、自称「メキシコから来た」「コロンビアから今着いたばかり」という方が、早速ワクチン接種を受けに来ていたニュースが流れました。

そして二日後には日本からのカップルも入国し、飛行機で到着した当日に接種を受けたということもニュースとなっていました。「日本で待っていても一体いつになるかわからない、これでようやく不安から解放された」という感想を述べていらっしゃいました。https://www.youtube.com/watch?v=sVaN3jIL9hQ

これで、「ワクチンツーリズムという言葉が現実となった」、と沸き立ったのも束の間、実際の試みや意気込みの発言の割に、この観光客向けの無料ワクチンは20日ほどオープンの後、5月末には一旦終了となりそうです。

米国のCOVID0-19関連の直近アップデート

ここでCOVID19(新型コロナ)に関連して、この数週間でどのような動きが米国内で起こっていたのかを振り返ってみます。(以下、内容は5/29/2021現在のものです)

*全国の18歳以上(今までは18歳以上にしか接種されていなかった)の50.9%がワクチン接種完了者となる

*12歳以上にもワクチン接種を認める、ただしファイザー製薬のワクチンのみ

*インド株、南アフリカ株、ブラジル株、イギリス株にも既存のワクチンが効果的だと発表される

*海外旅行者向けに限定的に、無料でワクチンを提供すると発表した州、ニューヨーク、アラスカ、カリフォルニア、テキサス、フロリダなど(移民ステータスは問わない州と、問う州とに分かれる)

*CDC(米国疾病予防センター)より、ワクチン接種完了者は、屋内屋外関わらず公共交通機関以外はマスクをしなくても良いという指針を発表。ただし、実際の規定は州の判断に委ねられる

*日本がDo Not Travelのカテゴリーレベル4に規定される(米国務省)

*米国への入国禁止対象国:中国、イラン、UK、EU諸国、アイルランド、ブラジル、南アフリカ、インド

(上記の国に14日以内に滞在した人が対象)

というところでしょうか。

米国市民、在住民のワクチンへのアプローチの違い

今、①米国では積極的にワクチンを打とうという人、②なんらかの理由で打てない人、③打ちたくない人が大きく分類されていると思われます。(細かく指摘するともっとあると思いますが、今回は割愛)

私は①にあたります。

実際4月中に2度のワクチン接種を受け現在は2週間以上経っているので、ワクチン接種完了者となりました。

ウェブサイト上で最初の1度目の予約をし、2度目にいたっては1度目にチェックインした際にすでに2度目の日時が指定されて(きっちり3週間後の同じ時間)Eメールで送られてきましたので、自ら2回目の予約をしなくて済みました。

副作用は、1度目は軽い頭痛と腕の痛み。

腕の痛みは筋肉注射のため100%出るものだそうなので、致し方ないですね。

2度目はちょうど接種から12時間後に全身の震えから始まり、直後に熱が39度ほど出ました。

注射を打つ際の注意事項に、「熱や頭痛が出たときはTYLENOL(タイラノル社アセトアミノフェン系)を服用すること、イブプロフェン系は避けるように」と言われていたので、事前に購入してあったTYLENOLを2錠を服用しました。熱は37度ぐらいまで下がり、約1日半ぐらいは薬を飲んで熱と頭痛をおさえていました。

腕の痛みは1度目より強く感じましたが、さほど気になりませんでした。3日目にはすっかり熱も頭痛もおさまり通常の体調に戻りました。

それ以降現在に至るまで、全く問題はありません。

現在米国政府は、7月4日の独立記念日までに全国接種完了率70%を目指しています。

特別な接種会場の他に、近所の薬局などでも接種が可能です。

ヤンキース球場では、ワクチン接種完了者のスタンド席では100%のキャパシティでの入場が可となりました。ワクチン未接種者は別の離れた席の一角が設定され、そこでは33%のキャパシティで6フィート(約2m) 離れて座らなくてはなりません。ただし両者ともマスクは必要とされるようです。

このように、球場内での席の割り振りでもすでに差別化されています。ワクチン接種完了者が優遇されているとも見受けられます。

今後、「ワクチンパスポート」が主流となってくることが予想されるため、より快適に過ごしやすいためにもワクチンを打とうという風潮があるのは確かです。

そんな中、②の打ちたいけどなんらかの事情で打てない人、はどういった理由があるのか考えてみました。

まずは宗教的理由、信条・哲学的理由・医学的理由があるのかと思います。

これが顕著に州ごとにその対応が分かれるのが、公立学校におけるワクチン接種の義務化の免除理由です。**免除理由:はしかワクチンなど数種のワクチン接種が通常求められるが、州ごとに規定している免除の理由に当てはまる場合は、打たなくても良い

現在米国では、以下のように免除範囲を規定している州が存在しています。

*以下地図の色分けによって州ごとに免除する内容を説明します

黄色:医学的理由(アレルギーやアナフィラキシーなどを起こす等)で免除

水色:宗教的理由と医学的理由で免除

青色:信条・哲学的理由、宗教的理由、医学的理由のどの内容でも免除

それぞれの州によってかなり免除理由の範囲が違うことがお分かりいただけたかと思います。

なんとなくこの色分けに、選挙の時の票の分かれ方との類似性を見い出した方もいらっしゃるかもしれません。

このように、米国では子供たちのワクチン接種の義務の規定や、どのようなワクチンが必要かどうかも州ごとによって違います。

現在、COVID-19ワクチンを義務化している州はまだありませんが、今後検討するとしている州はあるようです。こうしたことで移住先の州を決める理由になさる親御さんもいらっしゃるかもしれません。

そしてもうひとつ②の理由として挙がるのは、不法移民の方々です。いわゆるキャッシュ(現金)でしかお給料が貰えない、合法ではない形で米国に滞在する人たちも多くいらっしゃいます。

今までのコロナワクチン接種には、事前の予約が必要でした。その際には様々な情報を登録する必要がありました。そのため、こうした本来は米国の公式な記録には存在しない方々は、ワクチンを打ちに行きづらいという状況が続いていました。そしてそういった方々ほど最前線で働いて、危険にさらされていらっしゃる方々だったりするのです。

その方々の救済措置になったのが、冒頭でご紹介した、『観光客に』『無料で』『予約無しで』『18歳以上の証明書だけで』1度の接種で済むジョンソン&ジョンソンワクチンを提供する、というニュースでした。

もちろん、本来はこれは「米国市民の州外の人のため」というのが表向きの内容ですが、当初よーくよーく州の発表を読んでも、「米国市民でなければならない」という明文化された内容は実は探せませんでした。むしろ、滞在ステータスは問わないと書いてありました。これはあえて「抜け道」を用意したということなのかと感じました。これで今まで打ちたくても打てなかった不法移民の方々が、堂々と自国のパスポートだけを持参して、接種することが可能になったわけです。

私は旅行業界で長年つとめており、NY市観光局の方々や米国観光協会などの会議にも出席しております。そんな中、このワクチンツーリズムに関しては、各機関から即座に「たとえオンサイトで海外旅行者が接種が出来てしまっているという事実があったとしても、あくまで今回の措置は米国市民のためのものであって、公的機関が海外からの観光客に対して奨励するものではない」というお達しが出ましたので、一瞬色めきたった一部の旅行会社も釘を刺された形となり、それ以上のアクションは起こせませんでした。

どこの世界でも同じですね、やはり「抜け道より正攻法」はここでも守られていました。

州にとって一番大事なのは、今実際に住んでいる住民が一人でも多くワクチン接種をすることであり、それに便乗して国外の方々が接種に訪れたとしても、不法移民者が積極的に接種してくれるという「利」の方が大きいとの判断から、こうした実験に踏み切ったのだと思われます。

そもそも本当に観光客向けであるというならば、通常は数週間後に旅行の予定を立てるものであろうに、発表から即開始して3週間弱で一旦終了とすることから、本来のターゲットは身近な人たちであったのでは、という印象はぬぐえません。(その後突然延長されたり、突然打ち切られたりしている臨時接種場所もあります)

もちろん海外からの観光客からの外貨を期待しているところもあるでしょうが、今はまだその段階ではないのかもしれません。今後ニューヨーク市民の接種率が上がりワクチンが余ってくれば、第二弾としてもっと大っぴらに「海外旅行客さんいらしゃーい!」とアピールし、外貨獲得のための積極的に提供することでしょう。その時こそ我々旅行業界も遅れず動くときと心得ています。

では、③の方々とは、どういった方々なのでしょうか。

実は②の理由とも類似しておりますが、今回のパンデミックの特有な理由として「ワクチンの安全性に疑問」、「国家の強制する姿勢に疑問」が多く、また陰謀論関連の主張もよく耳に入ります。

こちらに関しては、私から言えることはありません。ひょっとすると、私自身のこうした情報収集が十分でないため、③の理由にいたらなかっただけかもしれません。

③の方々も、今のこと、未来のことを検証の上、ご自身の責任で判断されることと思いますので、一切否定も反論もありません。逆に、その理由の根源を知りたい、教えていただきたいと思っています。なぜなら私自身は自分で触れてきた様々な情報を検証した上で①を選んだので、③に至った方が触れた情報を知った上で、思考のベクトルがどう変化するのか、又は全く変わらないのか、という自分自身の振れ幅の可能性に興味があります。

なぜCOVID-19(新型コロナ)が特別なのか

よく、「コロナなんて、ただのインフルエンザ」という言葉を聞きます。実は去年の1月に、私も全く同じことを言っていました。そして、3月の惨状に接して自分の考えが間違いだったと気づきました。今までの人生であれほどの絶望感と恐怖を味わったことは、かつてなかったと思います。

では、なぜこのCOVID-19が特別なのか、医療の専門家ではないので詳細は申し上げられませんが、何よりも現時点でCOVID-19にピンポイントで効く特効薬が無いことが他のインフルエンザとの大きな違いということが、筆頭に挙げられる理由だと思います。そして、自分が重症化するかしないかだけの問題ではなく、自分が媒体となって重症化するかもしれない人たちにうつしてしまう可能性があることが問題なのだと思っています。

薬事関係の友人と話している際にも、ウィルスに対しての治療薬開発は難しく、時間がかかるのだと聞きました。それまでに予防できる手立てがワクチンしかないのであれば、私個人は打ち続けようと思っています。個人的な宣言なので、どなたに強制することも特におススメも致しません。

マスクの義務化引き下げ宣言と、現場の戸惑い

そして、マスクの義務化を取り下げるというニュースもほぼ同時に入って参りました。

公共交通機関などを除き、ワクチン接種完了者にいたっては、屋外屋内関わらずマスクは外して良い、という指針が米国疾病予防センター(CDC)から発表されました。

ただ、これも州ごと、市ごと、また施設ごとにその規定は異なります。

カリフォルニア州などは6/15までは今まで通りの規定を続けるという発表があったり、ワシントンDCなども同様に、現時点では慎重な姿勢を見せています。 

またディズニーランドなどは当初は今年の夏までとしていたマスクの義務化を、2022年まで続けることも検討しているようです。コンベンションセンターやモール、レストラン、小売店などでも、各々の管理者によって規定の設定は様々です。

実際先週末にマンハッタンの混雑する場所を歩いた時には、マスクを外していたのは5分の1~4分の1程度ぐらいというところでした。私自身マスクに慣れてしまったということもありますが、接種完了しているにも関わらずマスクを装着しておりました。ここは日本人らしい気遣いになってしまうのかもしれませんが、私の近くにいる人が不安を感じないようにという思いもあってそう摘えいます。

一点気になる事と言えば、今後もっとマスクを外す人が増えてくると、逆に「マスク無し=接種済み」「マスク有り=未接種」という見方が広がって、つける方々(未接種とみなされて)が差別されるような文化になってしまわないかという心配です。 

花粉症がひどい私としては、このマスク文化もなかなかに重宝しておりますので、いつでも気軽にマスクをつけられる環境だと個人的に助かるので、出来ればマスクが身近な日々が普通であって欲しいと希望しています。

日本が旅行禁止勧告対象になったという報道

そして、つい先日報道された「米国が日本を旅行禁止勧告のレベル4に指定した」というニュースについてですが、実は去年からしばらく日本がレベル4だった時期がありました。ですので、私にとっては全く驚きではなく、少し前にレベル3に引き下げられていたのが、また4に戻っただけという認識でした。(菅総理大臣が米国を訪問した頃は、『ちょうど』一時的にレベル3…) 現在、世界約150か国がそのレベル4に指定されています。

※地図のピンク:レベル4、ベージュ:レベル3、黄色:レベル2 (レベル1:該当国無し)

そもそも日本側の国境が日本国民以外に関して、入国に厳しい状態に設定している中で、米国側がレベルを引き上げることに関して実質の問題はほとんど無いことと、あくまで勧告であり法的拘束力は無いこともあわせると、「行ってコロナになっても国は先に勧告したんだからね!それでも行って問題が起きても大使館に駆け込んで文句なんて言わないでね!」と言えるように勧告を出したのかなぁ~と個人的に思いました。(主観なので本当の米国政府の意図はわかりません)

なにせ、この国務省が発表している勧告レベルと、CDCが発表している入国禁止リストにも少々矛盾が生じています。それが中国やUKです。旅行レベルとしてはレベル3としているのに、米国への入国に関しては去年以来ずっと入国禁止指定国のままです。レベル4の日本からの入国は禁止にしていないのにもかかわらずです。

もちろんその他の入国禁止となっている国々は、変異株が発見されたという理由などもありますが、なにがしかの意図も含まれている可能性は否定できないと思っています。(日本でも変異株が発見されていますが、まだ入国禁止国にはなっていません)

パンデミック禍で、あらためて米国と向き合う

そのような毎日の変動を見比べて、あらためて米国内の政治、近い未来のポストコロナ時代の生き方、海外と米国との関係性なども学び続ける1年半となっています。

本当に大変な状況ではありますが、こんな事でも無ければ普段の仕事に追われて、世界情勢や米国の政治などにこれほど目を向けることも無かったと思います。

自ら情報を探しに行くと、陰謀論も含めて様々なベクトルの情報を目にします。その中で自分自身が腑に落ちるものだけを専門家でもない私が取捨選択していくのは至難の業ですし、自分の信条が正しいかどうかの判断も難しい時代ですが、その検証し続ける事は決して諦めたくはないと心から思います。

与えられた情報だけでは、一方に偏りがちなニュースばかりに不安になることもあったり、もしくは知らされていないことで安易な行動をとってしまったりすることに繋がるのかもしれないと思います。

少なくとも私個人は、自分や周りの大切な人達の未来を諦めず、今後も自分自身の判断と責任で決めて行動していくつもりです。

日本でもようやくワクチン接種が加速してまいりましたね。一日も早く日本にも日常の生活が戻ってくることを願ってやみません。

大好きなPROGRESSの皆様のご健康、そして笑顔溢れる日々を心から祈っております。最後までお読みいただきありがとうございました。


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