それでもまだ、やれることはある。 ~ 洋裁教室 開業ヒストリー ~

執筆者 | 21/06/29 (火) | コラム

皆さん、こんにちは。
2020年9月入会の間宮まさかずです。

PROGRESS TVにて不定期配信しています「関西おしゃべりカフェ」。
今回は、奈良県で洋裁教室「トトリエ」を経営されている碓氷朋恵(うすいともえ)さんにお話を伺いました。

最近の碓氷さんと言えば、「#朝から晩ごはん」という配信で、ニコニコと、そして手際よく晩ごはんの準備をされる姿が印象に残っている方も多いかもしれません。
また、このPROGRESS PUBLICでも、ほのぼのとした文体で綴る 「*碓氷の徒然コラム*」 を投稿されており、ファンの方も多いのではないかなと感じています。

そんな碓氷さんの、出産と仕事、コロナ禍での経営の紆余曲折など、洋裁教室にまつわるドラマのようなストーリーをお伺いしました。
まさに混沌とした状況の中を泳いできた碓氷さんの熱い想いを、どうぞお楽しみください。

開業のきっかけ ~まだやれることがある~

間宮:
碓氷さんは、昔から洋裁で起業・開業をしたいという思いがあったんですか?

碓氷:
開業したい、という思いを元々抱いていた訳ではありませんでした。

お裁縫に関しては
子供の頃から、針と糸に慣れ親しんで育っていたので、
もはや好きというより、生活の一部だと感じる程に身近な存在でした。
学生時代は服飾関係の学校で勉強をして、
その後、某海外ブランドを取り扱う会社に勤めました。

私のいたアパレルの世界では、
「大きな会社の中でデザイナーになる」
という道を目指す人が多かったので、
私もまさか自分が洋裁教室を経営するなんて
当時は考えもしなかったです。

間宮:
そうだったんですね!
では開業に至ったのは何がきっかけだったんですか?

碓氷:
それはもう、結婚ですね。
仕事に熱中していたので、実は元々結婚自体するつもりはありませんでした(笑)

間宮:
そうなんですね(笑)

碓氷:
しかも結婚直前には、
ベトナムにある工場の生産管理の仕事を
任せてもらえる事が決まっていたんです。

そんな中、
主人は奈良県から出る事の無いような仕事をしているので
さてどうしようかと悩みましたが、
結婚出来るタイミングも人生でそう何度もないと思い
結婚を選びました。

その後、私と主人の勤務時間のズレを解消するために
私は専業主婦になると決意したんですが、
一日中家の中にいるとそれはそれでストレスで(笑)

ついこの間まで
海外に行って自分の持っているスキルを全部注ぎ込んで
仕事を頑張ろうと思っていた人間が、
急に奈良県の小さなアパートの一室に閉じこもる事になり
私は一体何をすればいいんだろう」と急に分からなくなっちゃって(笑)

間宮:
これまでとのギャップがすごく大きかったんですね。

碓氷:
そうなんです。あまり考えずに行動し過ぎた!って(笑)

でも、家にミシンなど裁縫道具はあったので
何か出来ないかと考えてはいました。
当時はまだ今のように
個人で手作りしたものを販売するような
プラットフォームは充実していなかったんですが
少しずつ、メルカリやFacebookを通じて
手作りしたものが売れるようになりました。

ただ、狭い家の中では
夜な夜なミシンで作業する事も出来なかったので
これまでに貯めていた貯金を使って
作業場所として、家の近所に小さなアトリエを借りる事にしたんです。

そこで、せっかくアトリエを借りたんだから、という事で
人を招いて裁縫を教え始めたんですよね。
そこが洋裁教室開業のスタートと言えますね。

「私はこのまま専業主婦として一生生きていくのか?」と思いながら
いや、まだやれることはある!」という気持ちで
その時その時に出来る事を少しずつ試していって、
その結果今があるという感覚がありますね。

出産とコロナ襲来 ~それでも諦めない~

碓氷:
最初のアトリエで、ぼんやりと
「こういう風にすれば自分はお金をもらう事ができるんだな」
というのが見えてきた段階で
第一子を妊娠します。

妊娠中も、仕事はしていたんですが
お腹が大きくなるにつれて売り上げも上がっていって(笑)
嬉しい反面、
子どもが生まれたら絶対にしばらく働けなくなる
という事は目に見えていたので
困惑もしていました。

出産も近づいてきて
半ば強制的に仕事をストップさせたんですが、
出産後もなかなか体調が戻らず
その間もアトリエの賃料は発生するので
それが家計を圧迫し始めます。

そこで、泣く泣く、アトリエを手放すことにしました。

ようやく商売の何たるかが見え始めた段階で
アトリエを手放すことになったので
私にとっては喪失感がすごく大きくて。
結構辛かったですね。

間宮:
そんなことがあったんですね。
では、現在の洋裁教室は
2回目の起業だったと。

碓氷:
そうです。
1人目のお姉ちゃんが2歳になった頃、
世間では、経済産業省が主体となって
女性の起業を支援する動きが活発になってきたんですね。

そのような支援も活用しつつ
2回目の起業は、しっかり事業計画書も作成してスタートを切りました。
最初のアトリエを畳んでからというもの、
ずっと頭の片隅で
「あの時のあれがいけなかった」
「もっとこうすればよかった」
という思いが消えなくて。

間宮:
そうだったんですね!
1回目の経験があったからこそ、
しっかりと準備も出来た訳ですね。

碓氷:
そうなんです。
そして準備と計画の甲斐もあり
事業はうまく進んでいきました。
そんな中、今から3年前ですね、
第二子を妊娠します。
セカンドインパクトです(笑)
焼け野原に隕石が落ちてきたみたいな大変な状況でした(笑)

間宮:
いつかのホームルームの話を思い出しますね(笑)

碓氷:
新しい教室は、以前のアトリエの倍程の家賃がかかっていたのと
前回の出産から当然私も年齢を重ねているので
産後の体調の回復も遅いかもしれない。

そんな状況で、生徒さん達に
「出産後も戻ってきます」
と自信をもって言えなかった。

なので腹を括って、
生徒さん達にはいったん全員辞めて頂いたんです。

でも、
「教室で教える」という仕事が無くなっただけで
それ以外に動いてるプロジェクトや
色々な仕事は継続していたので、
結局妊娠中もほとんど休んでいませんでした。

そこで一気に体調を崩してしまって、入院します。

これはダメだ、ペースダウンしよう、と思い直し
出産後は、ぼちぼちマイペースにいこうと決め、
仕事を再開し始めた矢先に、
コロナ襲来ですよ。
終わったなと(笑)これ完全にあかんやつやと(笑)

外出もろくにできない、
ましてや教室に生徒さんも呼べない。

もうこのまま店を畳むんだったら
在庫の布を全部マスクに変えてやろう。
世間でマスクが足りないんだったら、
うちの布を全部マスクに変えてやろうじゃないか。
これで私は散るんだと。

そんな思いで在庫を切り刻んでマスクを作っていました。

するとある日突然電話がかかってくるんです。
突然申し訳ありません、NHKなんですが

耳を疑いましたが
どうも話を聞くと本当らしい。

マスクの作り方を取材させて頂きたいんです。
 早速ですが、明日お伺いしてもよろしいでしょうか?

もちろん、うちにはもう生徒さんは来ていませんので
予約もあるはずがなく、承諾しました。

間宮:
すごい事になってきた!(笑)

マスク量産大作戦 ~時代の流れを掴む~

碓氷:
翌日、カメラクルー達と女性アナウンサーが教室に来て、
無事撮影は終わりました。

放送は2週間後という事で、
私は生徒さん達に片っ端に声をかけました。
「マスクを作るぞ!」と。

放送日に合わせてドンと売り出すから
1人100枚ずつ作ろう」と号令をかけると
洋裁教室に通えず悶々としていた生徒さん達にも火がついて
皆で一気に作り上げました。

そして放送終了後に合わせて、
マスク受注のフォームを立ち上げたんです。
そして、Enterボタンをポチッと押した瞬間、
ハッキングに合ったんじゃないかという勢いで
画面上に注文のメッセージが殺到したんです!

間宮:
ドラマみたいな展開じゃないですか!(笑)

碓氷:
それでね、
マスクを郵送する為にポストに投函しに行く訳ですね。
そこで体感したのが
中田さんも「しくじり武勇伝」でもおっしゃっていた
ポスト無限説ですね(笑)
明らかにポストの容量より多いであろうマスクが
なぜかポストに全て入るという体験を私もしました(笑)

その時のマスクの売り上げで設備投資をして
教室ももう少し大きな所へ移転しました。
お陰様で今は生徒さんも150人程になり
経営も安定しています。

間宮:
いやぁ~、時代の流れを掴む力がすごいです、碓氷さん!

コミュニティの舵取り ~中田さんから学んでいること~

碓氷:
今は、中田さんのホームルームを聞いて
コミュニティをどう運営していくかという話が
すごく学びになっています。

私の教室の生徒さんは
繊細さんだと感じる人が多いんですが、
そのような方ばかりケアしていると
「もっとレベルの高い事をやりたい」という生徒さんから不満が出ちゃう。

中田さんが「そのバランスを取る事が政(まつりごと)なんだ」と
語っているのを聞いて、
「なるほどな~!」と気付かされています。

間宮:
そういう視点でホームルームを聞いておられるんですね!
実際に体験しているからこそ、中田さんの言葉が刺さるんでしょうね。

碓氷:
本当に、PROGRESSにはたくさん学ばせてもらっています。

あとがき

碓氷さんの開業ヒストリーだけで書籍が作れるんじゃないかと思うくらい、面白いお話でした。
お話をこうして振り返っていると、本当に人の人生はドラマチックだなぁと改めて感じます。
開業、出産、コロナなどを通じてご経験された苦労や挫折を乗り越えられたのは、碓氷さんが「決して諦めない気持ち」を持ち続けたから。これに尽きると思います。

穏やかでほんわかした印象の碓氷さんの、熱い想いに触れさせて頂き、私もたくさんの刺激を頂きました。
碓氷さん、ありがとうございました。
「トトリエ武勇伝」、いつか電子書籍化しましょ(笑)

本編はこちら
https://www.facebook.com/groups/574803796465423/posts/843233179622482

最後までお読みいただき、ありがとうございました。


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