同性婚について思うこと

執筆者 | 21/07/02 (金) | コラム

 こんにちは!今回は、いわゆる「LGBT」関連の法律について動きが活発になってきたことについて、色々と思うところがありましたので、もっとも有名な課題である同性婚について書いてみたいと思います。

はじめに

 筆者は、いわゆるセクシュアルマイノリティのくくりには含まれません。私のような人物がLGBTについて語ると、まれに「当事者でないくせに偉そうな・・・。」という批判を招くことがあるのですが、これについてはしっかりと反論しておこうと思います。

 物事の実際的な解決のためには、当事者だけでなく第三者が声をあげることが大事です。例えば、とある女性が会社の男性上司に「それは、女性蔑視だ!マタハラだ!」と訴えたとしましょう。このとき、周囲の人間、特に男性が援護した方が効果がありますよね。逆に、当事者の女性がひとりで訴えたとしても、状況が改善しないばかりか、「自意識過剰」「被害妄想」とさらなる攻撃を受けることもあります。

 そんなわけで、第三者の立場からしっかり書いていこうと思います。

 また、筆者にはいかなる政治団体・政党、宗教に対しても礼賛ないしは中傷の意図のないことを付言しておきます。

結婚できないの!?

 現在、日本では同性婚は認められていません。逆に同性婚を認めた国々としては、オランダ、ベルギー、スペイン、スウェーデン、デンマークなどが挙げられます。また、アメリカでは、2015年に連邦最高裁判所が同性婚を認める判断を下しました。

 先進諸国が軒並み同性婚を認めている中で、なぜ日本は同性婚を認められないのでしょうか。

 理由の一つとして、憲法24条1項があります(民法と戸籍法については今回は触れません)。同条項は以下のように規定しています。

「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない」

 ここでいう「両性」とは、男女のことですから、同性婚は憲法に反して認められないのではないか、という議論が生まれるのです。

 憲法24条1項については、改憲が必要だという意見と、改憲は不要だ、という意見に分かれています。

 改憲が必要とする理由には様々なものがありますが、「両性」という文言を素直に受け取れば同性婚は許容されていないから憲法の文言を書き換える必要がある、とするのが有名な意見です。

 他方で改憲が不要とする理由には、同項は同性婚を禁止する趣旨ではない、とするものがあります。

 これに関して、最高裁判所は、同項について「婚姻をするかどうか、いつ誰と婚姻をするかについては、当事者間の自由かつ平等な意思決定に委ねられるべきであるという趣旨を明らかにしたものと解される。」(最大判平成27年12月16日民集69巻8号2586頁)と判示しています。つまり、憲法は同性婚を禁止する趣旨ではないとしたわけです。

 司法権を持つ最高裁判所が自身の立場を、立法権をもつ国会に対して明示したと言えるでしょう。加えて、今年になって札幌地裁においても、同性婚を認めないことは憲法14条(法の下の平等)違反だとする判決が出ました(令和3年3月17日判決言渡 平成31年(ワ)第267号 損害賠償請求事件)(判例および裁判例の詳しい内容を知りたい方は個別にご連絡ください)。

 「裁判所が同性婚を禁止していないって言ってんるんだったら、認めてしまえばいいじゃない!」と思う方も多いと思いますが、ことはそう単純ではありません。

「理解増進法」と自民党の動き

 先月、「理解増進法」いわゆるLGBT法の受け取りを自民党が拒否し、国会への提出が見送られたことがニュースとなりましたよね。その際、議員の偏見と差別・事実誤認に基づいた発言も問題となりました。具体的な発言内容はあまりにも不愉快なため、ここではあえて触れませんが、国の代表が偏見に満ち満ちている状態で立法がすすむわけがありません。そもそも、法の文言も差別や偏見の打開には不十分なものでした。

 いかに裁判所が同性婚を禁止していないと述べたところで、法律を作るのはあくまで国会です。議員が動かなければ現状は好転しません。

パートナーシップ制度

 法律ができないのならば、自治体ごとにパートナーシップ制度を導入すればいいのでは?という声もききますが、法律で同性婚が認められることと、パートナーシップ制度との間に大きな隔たりがあります。

 一番の違いは、相続です。パートナーシップ制度には相続権が認められません。民法が規定する結婚とは異なるからです。これがもたらす弊害は大きいです。

 例えば、とある同性カップルが事実婚状態で長年生活していたとします。カップルの一方が亡くなったとして、相続権がないということは、金銭の受け取りができないという以上の問題があります。カップルがふたりですごした思い出の家や、思い出の品までも受け取れない可能性が出てくるのです。もし、亡くなった人がLGBTなどを理由に親族と疎遠であった場合、残された恋人はたいして交流もなかった人々に思い出の品を持っていかれるわけです。この場合、家を残して欲しい、遺品を譲って欲しいという交渉は、困難なものになることが予想されます。

 遺言書を残すことやパートナーと養子縁組をすること、死因贈与契約を結ぶなど、相続ができるようにする方法はいくつかありますが、異性カップルでは想定できない法的処理を要求することには疑問が残ります。また、この場合でも、法定相続人から異議申し立てがなされたり、裁判になることも予想されます。

世界の潮流は

 冒頭で述べた通り、同性婚については認める方向に動いているのが世界の潮流です。ただ、驚くべきニュースもあります。

 同性婚からは話がすこしそれますが、先月、ハンガリーで「反LGBTQ法案」が可決しました。18歳未満の児童に同性愛や性転換についてのコンテンツを提供することを禁止するというものです。与党側の意見は、「小児性愛から守る」のが目的なのだそうですが、LGBTとポルノコンテンツをごちゃ混ぜにする意図が理解できません。

 さすがに、人権団体などから批判の声があがっているようですが、だからと言って即座に状況が変わることはないでしょう。

 ジェンダーに限った話ではないですが、マイノリティに対する偏見と差別がなくなる日が来るのは遠そうです。

 また、先日、宇多田ヒカルが「ノンバイナリー」であることを公表して話題になりました。著名人がジェンダーに関する発信をすることが、必ずしも功を奏するわけではありませんが、考えるきっかえを与えるという意味では大事なことだと思います。

 かねてよりバイ・セクシュアルを公表しているレディ・ガガや同性愛者であることを公表しているアダム・ランバート、アップルCEOのティム・クック、性は無いとする大天才オードリー・タン(彼女の著作物については後日コラムを書きたいと思います)など、人気者がジェンダーを公にすることで、世論が動くこともあると思います。もちろん、全ての人に「カミングアウト」して欲しいわけではないですが、これにより生きる希望を見つける人も多いのでは、と思います。

最後に

 憲法の問題から解ることは、LGBTについて議論が成熟していないということです。ある一定の方向性、例えば「差別はしない、同性婚は認める」ということが明確に見えていたならば、改憲するにせよしないにせよ動きは早いはずです。それでも、なかなか事態が進まないのは、自身の(差別的な)考え方に固執している人物もいるからです。議員が動かなければ現状は好転しない、と書きましたが、議員を動かすのは世論であり、世論を動かすのは我々です。最初に書いた通り、当事者ばかりが訴えていても世論と言えません。第三者が与して初めて世論となり、それが法を動かします。

 「当事者でないから説得力に欠ける」とか「当事者を傷つけてしまったらどうしよう」と思うこともあるでしょう。私もそれを考えます。けれども、クラス内で起こっているいじめと同じで、何も言わず見ているだけ、は加害者に属します。

 私もまだまだ発信できることがあると思いますし、世論を形成するひとりぐらいにはなりたいです。そして、その際には必ず知識をつけて当事者の話を聴いて、なるべく傷つけないように想像力を働かせていきたいです。きっと、当事者の方々も第三者の意見を求めていると思います。

 また、文中でLGBTという表現を多用しましたが、本当はこういうくくりもLGBTQやその他の表現も要らなくなればなあと思っています。言葉だけが溢れて、より一層混乱している感があるからです。「カミングアウト」も使って欲しくない言葉です。分類分けなどせずに、もっと自由に生きられればいいと思います。

ではまた(*´`*)

あとがき

 筆者は、ミステリーマニアである。ミステリー小説のトリックは、たいていの場合、大前提を覆すことで解ける。死んだと思っていたけど死んでいなかったとか、自殺だと思われたが他殺だったとか。

 この大前提を覆すという考え方、実はいろんなところに応用が効くものだ。今回の話題で言うと、この世にはふたつの性しか存在しない、という大前提を覆してみて欲しい。

 すっきりすると思いませんか?

*参考リンク*

東京新聞(自民に大幅譲歩したのに自民がつぶすLGBT法案 保守派の抵抗激しく…今国会の提出断念)

ヤフーニュース(ハンガリーで反LGBTQ法案が可決)

朝日新聞デジタル(同性婚の不受理、初の違憲判断 札幌地裁「差別的扱い」)

裁判所(最高裁大法廷判決)

執筆者 | 21/07/02 (金) | コラム


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