燃え尽きを予防する6つの秘訣【とべっち流】

執筆者 | 21/07/10 (土) | コラム

自己紹介

はじめまして。20214月入会、フラーシア所属の戸部有希子と申します。とべっちと気楽に呼んでください。職業は精神科医です。いつも「先生」と呼ばれるばかりで、昔の知り合い以外は、なかなかあだ名で呼んでくれる友達なんてできなかったので、PROGRESSではそういう出会いがあることに、大きな喜びと幸福を感じています!

さて、本日は最近HRで[燃え尽き]のことが話題に上がっているので、精神科医として少し書いてみようと思います。

ご注意: 以下は戸部が臨床経験を踏まえつつ、独断と偏見で既存のいろんな理論を組み合わせて恣意的にまとめたものに過ぎず、臨床研究などのデータはございませんので、あらかじめご了承くださいませ。

燃え尽きとは

[燃え尽き]とは、仕事などに熱心に取り組んでいた人が、ある日突然全てにおいて無気力になってしまう現象です。

肉体的な限界を超えて頑張ってしまった場合や、頑張ったにも関わらず、自分が求めるような結果が得られなかったときに起こることが多いとされています。

燃え尽きるまで頑張った!というのはかっこ良くもあるのですが、最後までやって燃え尽きるならまだしも、道半ばで燃え尽きてしまうと、それまで頑張っていたものが、本当に全て台無しになってしまうこともあります。それに、楽しみは終わりませんから、いつまでも元気でいるためには[燃え尽き]は防ぎたいですよね。

燃え尽きてしまう方も、熱心に仕事をしているときには、意欲に満ち溢れているので、仕事そのものに苦痛を感じておらず、むしろ仕事を喜びと感じていることが多いように思います。しかし、あるとき不意に「何のために頑張っていたんだろう」と虚しくなってしまうのです。

実は、やりたい仕事をやりたいだけ頑張っているときには、いかに仕事量が多くてもストレスを感じにくいことがわかっています。つまり頑張れば素晴らしい未来が待っていると信じていられる時は、ものすごいパワーが出てしまうんですね。しかし、あるとき、努力の先にある未来が、期待したほどではないと気付いてしまったときに、目の前にある仕事全てがやりたくないけどやらされている仕事に見えてきます。人間は自然と自分の努力に見合う報酬が得られるかどうかを意識してしまうということなんですね。そんなわけで、やりたくない仕事をたくさんやっているときは最もストレスが強くなり、心身の不調が生じると言われています。

とべっち流、[燃え尽き]にならない方法を考えてみましたので、ご紹介します!

燃え尽きを予防する

どれだけ仕事が沢山あっても、疲れていなくても、十分な睡眠時間は確保する。(最低7時間)

「睡眠負債」、「元気の前借り」は、のちに大きな代償を払うこととなります。睡眠時間をしっかり取ろうとすることで、あまり無茶しないで済むことと、ストレスがあっても脳機能を正常に保つことで問題解決能力をMAXに保ち、多少の気持ちのつらさも立て直すことができるのではないかと思います.

頑張れる体を作るために、良い食生活と運動、そして太陽光を浴びる。

もちろん、アルコールも控えましょうね。ビタミン、ミネラルを意識しつつバランスの良い食事を。適度な運動と栄養でセロトニン量を保つことで、気持ちにゆとりができ、ストレス耐性を上げることができます。

過活動になっていて、かつ糖質をもし制限しているとしたら、むしろ糖質を取ることでブレーキをかけることができる。

ケトン体でテンションが上がり、糖によってテンションが下がる。原始人時代は飢餓状態では獲物を取りにいかなければなりませんでしたから、人は飢餓により脂肪が分解されケトン体が生成されると、意欲がめちゃくちゃ湧いてくるようです。しかし、高すぎるテンションは長続きせず、その後には必ず大きなしっぺ返しがやってきます。テンションは持続可能なレベルに保ちましょう。

日中は糖質を制限しても、夕食は糖質を取ることで、夜にゆっくり休むことができます。

気持ちが昂ってイライラして誰かに八つ当たりしてしまうような時は、甘いものを少し口に入れてみましょう。

人から賞賛されたい、愛されたいと思う自分のありのままの欲求を認めつつも、他人の評価は「得られるとは限らない」という現実に対する覚悟を持つ。(コフート+アドラー)

コフート心理学というのを知っていますか?YouTube大学で紹介された「嫌われる勇気」はアドラー心理学でしたね。コフートはフロイトの欲動心理学や自我心理学、アドラーの個人心理学などに真っ向から立ち向かい、「自己心理学」という分野を打ち立てた人です。アドラーが究極にドライな人間関係の割り切り術なのに対し、コフートは人間関係がある以上感情を排除することはできず、人間は愛されたいし、認められたいと思う存在であると考え、その感情を満たす共感的な関わりが大切だと考えました。ありのままでいられる人間関係も大切にしたいですね!

しかし、とはいえ社会で生きるということは、様々な価値観の人と出会うことでもあります。そのため、アドラー的な割り切りも同時に持っておくと良いのでしょう。

子供は親に愛されないと死んでしまいますから、親の期待に応えようとするのは人間のざっくり言えば本能なんだと思います。しかし、大人になると親の残像を社会に見ることとなり、気づいたら見えない誰かの期待に応えるために体をボロボロにしていたなんてこともあるかもしれません。自分と周りの人との関係にについて客観的に捉え直す時間を、時々作ると良いのかもしれませんね。

少しの努力で達成できる中間目標を立て、休憩を入れながらスモールステップで大きな目標を目指す。

3mの壁をいきなり登れと言われると、途方に暮れてしまいますよね。しかし。30cmの段差を10段登るのはとっても簡単なことです。焦らずに一歩ずつ進めば、目的地に近づいていくという確信を持って、落ち着いて進むと良いんでしょうね。

結果よりもプロセスの楽しさ・喜びを意識する。

プロセスにより人間は成長します。結果が伴わなくても、確実にそこには成長があるはず。経験による成長という大きな報酬があることに目を向けてみると良いかもしれません。また、そのプロセスの楽しさがあると、一つのプロジェクトが終わっても、次のプロジェクトを始め、その新しいプロセスを楽しみたいという意欲にも繋がるのではないでしょうか。

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まとめ

燃え尽きやすい人

正直、私はそんなに根性はない人間なので、燃え尽きるほど何かに猛烈に取り組んだことがないのですが、周囲には燃え尽きてしまうまでめちゃめちゃ頑張っちゃう人が結構いらっしゃいます。すごいなぁ、頑張ってるなぁ、ちょっと無理しているかなぁ、どのくらい持つのかなぁと思ってみていると、多くの場合やっぱり数ヶ月以内には息切れしてしまうようです。そのような方は、ものすごい周囲に気配りをしながらも、生活リズムが乱れていたり、無理な食生活をしていることが多いように思います。

燃え尽きにくい人

一方で、頑張り続けられている人がいます。

中田さんを毎日HRで拝見していて、「よくこんなに頑張り続けられるなぁ」と私は興味津々でした。中田さんが日々の変化の中で、全く気持ちがぶれていないわけではないのはみていて明らかなのですが、にもかかわらず、毎日気持ちをしっかり立て直して、活動を継続することができているのは、やはり中田さんの自己管理の賜物なのではないかと思います。

あとは、私たちの業界だと外科医などで多くみられますが、とにかく「俺様」で周りにあまり気を遣わないタイプだけど、めちゃくちゃの生活でも何十年と走り続けている人がいます。ただ、結構周囲は苦労しているかもしれないことと、ある日突然ガタンと倒れたりするので、良し悪しですね。

頑張り続けるということ

精神科ではよく、「頑張りすぎるとよくないから、頑張らないように」というアドバイスをする人が多いですが、頑張るって楽しいし、頑張るからこそ登れる高みってありますよね。

成功への秘訣は何よりも継続することですので、爆発力よりも頑張り続けるという持続可能性を意識していくと良いのではないかと思います。

燃え尽きてしまったら

ただし、ついつい、限界突破して燃え尽きてしまったら、それ以上がんばり続けると病気になってしまいます。睡眠や食欲に異変が現れたら危険信号ですので、いったん使い果たしてしまったエネルギーを充電し直すために休みましょうね。


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