不遇な人を攻撃してしまう心理【公正世界仮説】をご存知ですか。

執筆者 | 21/08/15 (日) | コラム

 

みなさんこんにちは。2020年8月入会組の宮薗喜代美(みやぞのきよみ、きよみん)と申します。

被害者の非を何故か責めてしまう謎の心理

さて、皆様はいじめや性暴力犯罪の被害者、もしくは生活保護を受給するほど困窮することになった人に対して「被害者・受給者側にも落ち度があったのでは?」と考えてしまったことはありますか。

正直に告白しますと、私はあります。

更に言うと、自分が中学時代に特定の女子グループに無視を食らった時、「自分に落ち度があるんじゃないか、というか100%自分に落ち度がある」と考えて自分を責めました。

そのため長年、この「被害者側の落ち度を責めてしまう心理」については、なんとなく「容認」してしまっていました。

そして「いじめダメ、絶対」という論調に対しては否定も肯定もせずに距離を置いていました。

さすがに自殺や暴行死まで行ってしまうと加害者が悪いだろうとは思いつつも、そうでない「無視」くらいのレベルから100%加害者が悪いと言ってしまっては、「逆に被害者側の努力では状況は何も変わらないっていうメッセージになりそうじゃない?」と思っていました。

しかしつい最近、たまたま聴いていたラジオ番組「TBSラジオ 荻上チキのSession」(放送日時不明、たぶん今年7月下旬頃)でこの「被害者に落ち度があるんじゃないかと思ってしまう心理的仕組み」をわかりやすく解説しているのを聞いて、めちゃくちゃ目から鱗が落ちました。

そして「いじめダメ、絶対」でやっぱりいいんだ!と被害者落ち度説を一蹴できるようになりました。

感動レベルだったので、PGの皆さんにも知っていただきたく、コラムにして紹介したいと思います。

 

【公正世界仮説】とは

「被害にあった人に落ち度があったと思いたい」という心理、それを社会心理学界隈では「公正世界仮説」と言うそうです。

 

【公正世界仮説】とは

「この世界は公正であり、公平にできている」と考えたがる認知バイアスのこと。

世界や社会に理想を抱き、理不尽に傷付けられることを否定する深層心理。

引用元:『被害者を責める人の心理』を描いた漫画に反響 「そういうことか」「気を付けたい」

https://grapee.jp/698606

 

被害者批判はこの世の不条理に抵抗する心理的防御だった

世の中は何て不条理なのでしょうか。

個人のひたむきな努力や人生に対する真摯な姿勢とはまったく関係なく、事故や事件に巻き込まれたり、病気になってしまったり、いじめっ子に目をつけられていじめられたり、災害の被災者になったりします。

しかし、ただのいち視聴者としてその不運なニュースに触れた人は、「自分にはそういう事態はふりかからないでほしい」と思うあまり、被害者と自分を心理的に線引してしまうことがあります。

そして、「自分は気をつけてさえいれば大丈夫だ、安全だ」と思いたくなるわけです。

そのため、「被害にあった人はなにか落ち度があったんじゃないか。そのつけを払ったというだけなんじゃないか」と思ったり、実際に口にすることで、「自分はそのような落ち度はないから安全だ」と思い込もうとする。そうやって自分を納得させようとする心理的防御が働きます。

しかしそれは「この世界は努力さえすれば報われる世界であってほしい。能力さえあれば重宝がられる世界であってほしい。悪い出来事にあう人間は悪い人間であってほしい」という願望や偏見に過ぎず、さらに不遇の人々を攻撃までしてしまうのは、「世界は不条理で、自分はいつまでも安全ではないかも知れないという不安」に耐えられないだけの、心理的な弱さをごまかそうとする残念な行為に過ぎません。

これが「公正世界仮説」に基づく被害者攻撃の心理です。

実際には、この世に不条理は存在します。

どんなに努力しても、どんなにもともとの能力が優れていても、病気・事件・事故・災害などで大切なものを失うことだってある。

「才能があり、努力を怠らない=今後100%安全保障」ではない

「世界は公正で公平だ」という認知バイアスがなく、「誰にでも不遇な出来事は起こりうる」と冷静に思える人は、「自分が優秀で努力もしてきたから今の地位を享受している」と慢心しません。さらに、「自分にもいつ何が起こるか分からない。助けが必要になることも起こりうる」と自覚している人は、むやみに弱者を攻撃したりはしません。共感して手を差し伸べることも出来ます。

先日のメンタリストDaiGoさん炎上の件で、この心理を解説してくれた荻上チキさんが、再度この「被害者攻撃をしてしまう心理メカニズム」について触れた上で発言していました。

ポッドキャスト音声

https://www.tbsradio.jp/articles/42974/

声はとても穏やかなのに、ほんとにぐうの音も出ない至極真っ当かつ冷静なコメントでした。鮮やかすぎて自分もこんな風に即興でスラスラ喋れたらどんなにいいかと妄想します。興味がある方は聞いてみてください。

さて、今回初めてコラムを書いてみましたが、いかがでしたでしょうか。

誰かを無意味に傷つけないためにも、「知る」って改めて大事だなと思いました。

ところで、PGメンバーのある方がDaiGoさんについて「本来は繊細で優しい方だ」とおっしゃっていたのを廊下やHRコメント欄で見かけました。

繊細さんは、本来弱者への共感力が高いのですが、それゆえに他人の不幸に対して自分のことのように傷ついてしまうこともあります。

実はそのような繊細さんこそ、高すぎる共感力で自分まで傷つかないようするあまり、この「公正世界仮説」の心理を過剰に働かせて、心の安全を保とうと試みてしまうのかも知れません。

もちろん、本当のところは分かりません。

知ることで防ごう、弱者攻撃

いずれにしても、自分もいつこの心理に陥るか分からないから、今回把握したことを忘れず、弱者を傷つけないようにしようと思います。

こちらの記事もとても参考になります。

よろしければ参考にしてください。

ネットの誹謗中傷の要因公正世界仮説とは?(TOKYO MX

https://s.mxtv.jp/tokyomxplus/mx/article/202007140650/detail/

それではまた〜!

執筆者 | 21/08/15 (日) | コラム


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