そのお水、どこから?【元バイオ研究者による酒雑学】

執筆者 | 21/10/04 (月) | コラム

みなさん、こんにちわ。

2021年1月入会の鈴木リカです。

私は元細胞生物学の研究者で、現在はお酒のお仕事をしています。

 

今朝はコラムを取り上げていただき(ありがとうございました!)

「一般化して伝わりやすい話題」の重要性を認識する、貴重な機会を頂きました。

 

しかしここで貫いちゃうのが研究仕込み(笑)

 

また技術寄りの話に戻って、

今日はお酒づくりに欠かせない「水」について書いてみたいと思います。

 

■一口に水というけれど

実はどんなお酒でも、アルコール分(ビールなら約5%、日本酒なら約16%…)以外の部分はほぼ水です。勿論、タンパク質、アミノ酸、香り成分なども含まれますが、体積で言えばほとんどは水なのです。

ではその「水」、一体どこからきているものだと思いますか?

日本酒の場合、多くの場合は「水道水」または「地下水」です。

 

まれに水を別な場所から汲んでくる場合もありますが、

実際にお酒になる分以外にも、器具を洗ったり、掃除をしたりと、酒造りにはかなりの水を使います。

 

このため自身の敷地で井戸水が出る蔵は、その水を使っていることがほとんどのように思います。

とはいえ、日本の水道水が高品質なことも事実です。このため、水道水をそのまま仕込みに使っている蔵も多くあります。

 

場合によってはそのようにして得た水を加工したり、フィルター処理したりしてから使う場合もありますが、これは必ずしも必要な工程ではありません。

案外、自然体ですよね。

 

■軟水と硬水

仕込みに使う水というと、詳しい方は「軟水と硬水でも違うんだよね!」とおっしゃるかもしれません。

 

ざっくり言うと、軟水とはミネラル分(主にはCa, Mg)が少ない水、硬水とはそれらが多い水です。

 

ミネラル分は生物のあらゆる化学反応に関わっています。アルコール発酵の担い手である酵母にとってもそれは当てはまり、硬水=ミネラル分が多い水の方が酵母は活発にアルコール発酵を行います。

一般に活発に発酵したお酒は度数が高く、いわゆる辛口お酒になりやすいため、硬水で仕込んだ酒はきりっとした酒に、逆に軟水で仕込んだ酒はまろやかな味わいになる傾向があります。

 

とはいっても日本は軟水の場所が多いので、「柔らかいですね~」と言っておけば大体の場合大丈夫なのですが(笑)

 

また、ミネラル分自体もある程度多く含まれると味に影響します(苦かったり、しょっぱかったり)。お酒の香味対してどの程度直接影響しているかは不明ですが、この影響もあってか、利き酒の時には軟水の水を口直しとして使用することが多いです。

 

■テロワールってあるの?

ただし最近は、「硬水、軟水」以外にも「pH」(正確にはアルカリ度という指標)も重要なのでは?という知見もあるようです。

 

アルカリ度は水に含まれるアルカリ成分(OH-や(CaCO­3)^2-)の量を表す指標です。

このCaCO3などは、「石灰岩」や「海で堆積した成分を含む地形」を通過した水、または「地下水」などで多く、「花崗岩地帯の水」や「雪解け水」では少ないとされています。

 

硬水、軟水ももともとは地形的な影響を受けている指標です。

このように考えると、日本酒にも「テロワール」(土地の自然要因がそこで育つ作物などに特有の影響を与えること)があるのかもしれません。

 

■おわりに

いかがでしたでしょうか?

文章にすると、自分でもあいまいだった部分を調べるので勉強になります。

 

同様な内容のコラムはたくさん流通しており、正直内容としての新規性はないですが、「あのお酒の人が書いたのねー!」と気軽に読んでいただければ幸いです。

質問や書いてほしいテーマがあればいつでもどうぞ!

また、Instagramではお酒や料理とのペアリングについて発信しています。知ってる銘柄を増やせること間違いなしなので、ぜひフォロー下さい(笑)

最後までお読みいただきありがとうございました。

ではまた!

執筆者 | 21/10/04 (月) | コラム


65 ビュー
4いいね!
読み込み中...