最大感度で堪能して【元バイオ研究者による酒雑学】

執筆者 | 21/10/11 (月) | コラム

 

みなさん、こんにちわ。

2021年1月入会の鈴木リカです。

私は元細胞生物学の研究者で、現在はお酒のお仕事をしています。

 

ワクチン接種で途絶えてしまいましたが、先月末から自分のアウトプットも兼ねてお酒コラムにトライしています。

再開1回目の今日は、「きき酒」についてです。

 

■そもそもきき酒ってなんだっけ

「きき酒」とは一般に、お酒の「種類/品質」・「状態」・「出来」・「管理状況」などについて評価することですが、「お酒当てクイズ」みたいなものから「品質管理」まで様々なレベルで活用される言葉です。

 

たとえば右のテーブルにA~Eのお酒が、左のテーブルに①~⑤のお酒があったとして

・A~Eが実は①~⑤に対応していて、それをあてることもきき酒だし

・A~Eと①~⑤はそれぞれ異なる10のお酒で、それぞれについて出来や状態を評価するのもきき酒です

 

私が仕事で行う場合のきき酒は後者ですが、この場合に着目するのは大きく分けて「見た目」「香り」「味」の3つです。今日はこれらの着眼点にについて、ざっくり解説してみたいと思います。

 

■見た目

日本酒の色、といって皆さんどんなものを思い浮かべますか?

透明?あるいはほんのりとした黄色?古酒であれば琥珀色だよね、という方もおられるかもしれません。

 

強い色がつくことは稀ですが、日本酒は状態によってさまざまな色を示します

 

例えば、出来立ての新酒は実はわずかに黄緑色がかっています。(途中で処理をして透明化することはできますが、)基本的には放っておくと時間とともに色は黄金色に近づいていき、またその度合いは一般に元の味の濃さに比例します。このため、作ってからの時間が経つほど、またはもともとが重厚な味わいであるほど、お酒は琥珀色を呈する傾向があります。

 

さらに科学的に「濁っている」とは「光が透過せず散乱・反射されている」状態ですが、これはお酒にも当てはまり、透明度が高いほど、味もキレイ(=成分が少なく、すっきりしている)傾向があります。

 

このように見た目からでも多くの情報を得ることができるため、お酒の見た目(色、透明度など)はきき酒における第一の着眼点なのです。

 

■香りと味

既出の見た目と比べ、香りと味は非常に複雑です。そこで、ある程度「狙いをつけて」評価することになります。

 

例えば「香り」の場合は

・「あると良い香り」があるか

・「あると好ましくない香り」がないか

などの観点に沿ってきき酒をします。

 

「あると良い香り」とは、いわゆる「吟醸香」と呼ばれるものです。代表的なものは2つあり、どちらもフルーティで爽やか~あまい香りがします。それぞれ物質として特定されており、機器分析で定量することもできますし、訓練している人であればきき酒により香りの有無や過多をある程度見積もることもできます。

 

お店でお勧めの日本酒を出してもらうと、「香りがよい」「華やか」などと説明されることはありませんか?この時出てくるのはおそらくこのような香りが特徴のお酒です。

 

特に最近は香りのよいお酒が増えているので、「いい香りがするらしい」とご存じの方は多いかと思います。

それではこの香り、どのようにして発生しているのかはご存じですか?

 

実は日本酒のよい香りの多くは酵母の行う反応によりつくられます。裏を返せば酵母の制御で香りをつくれるとも言えますが、酵母は生き物なので機械のように制御できるわけではありません

 

このため、上述のような香りを狙ってもうまくできない場合がある、または、そもそも酵母のコントロールがうまくいかず好ましくない香りをつくらせてしまうことがある。このようにして発生するのが「好ましくない香り」です。

 

好ましくない香りの例としては、乳製品様の香りや青臭い香り、不自然に酸っぱい香りや化学的薬品様の香り、など様々です。数としても好ましくない香りの方が多く特定されており、これらは一般に「良い香りの邪魔をする」ために嫌われています。

もちろん、これらは香りにバリエーションや個性を与える場合もあり、一概に「欠点」と片付けてしまうのはナンセンスですが、どうしても「ん?」と違和感があるものは気になってしまいます。

結局(先日も書いたように)、大きなプラスと大きなマイナスを併せ持つものより、大きなプラスがなくても目立った欠点がないものの方が相対的にまとまっているように見えることもしばしばです。

 

また、好ましくない香りがある場合、同時に味も崩れることが多くなります。

これは共通の原因(酵母の調子が悪かった)ことで二つの結果(好ましくない香り、好ましくない味)になることもあれば、香りと味が同時に影響している場合もあります(うまく言えませんが…例えば酸味は味としても香りとしても感じることがありますし、一部の好ましくない香りが存在するとお酒の舌触りが悪くなる傾向にあります…)。

 

味の観点は他にも「甘さ/辛さ」、「後味」、「キレ」、「苦味・甘み・旨味」、「渋み、えぐ味」など様々あるため一概には言えませんが、個人的には正直なところ、香りをかいだ段階で(飲まなくても)おおよそお酒の味の推測はついてしまうのです。

 

私は飲んでいる時本当にうれしそう、と言われますが、これは口に含む時は「(既に美味しいことは想定済みで、その)美味しさをしみっじみと最大感度で堪能している段階だから」なのです。

 

■おわりに

いかがでしたでしょうか?

長くなってしまいましたので、まとまっているか不明ですが笑、今日はここまでにします。

 

きき酒は私も日々勉強中で、まだまだ至らないことも多いです。

一方でとても興味を持っており、まだまだ書いてみたいこともたくさんあります。

 

今日は概説を書こうと思ったため、ひととおりをカバーするのに長くなってしまいましたが、今後は個々にフォーカスして取り上げてみたいなと思います。

きき酒に限らず、質問や書いてほしいテーマがあればいつでもどうぞ!

 

また、Instagramではお酒や料理とのペアリングについて発信しています。知っている銘柄を増やせること間違いなしなので、ぜひフォロー下さい(笑)

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

ではまた!

執筆者 | 21/10/11 (月) | コラム


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