物とご縁の話
ちょっとオカルトっぽいのですが、10年以上作家活動をしていて、物にもテレパシーってあるのかなと思うようになりました。
私は着物の生地でアートを作る作家活動をしています。
常時500種類程の生地の中から、色味や風合い、柄の意味などを組み合わせて作品を創ります。
沢山あるようですが、一つの箇所にピタッと合う布は案外少なく、多くても2、3種類、合うものがないこともあります。
面白いことに作業に集中してグッと着物地のことを考えているとき、身体から何かを発しているのか、あるいはキャッチできるようになるのか、友人知人、人を介して知らない方からも、ご家族の古いお着物やお気に入りの古布など寄付したいというご連絡をいただいたりします。
ありがたく国際郵便で送っていただくと、その中の妙な形の小さな端切れが、色といい柄といい制作中の作品の重要な1ピースにピッタリになることがあり、ここに収まるためにNYやスイスまで来てくれたのかーと驚くと同時に、私を見つけてくれたことを嬉しく、愛おしく感じます。(全部思い込みと言えばそうなんですが。笑)
出来上がった作品も同様で、ああ、あの人を待っていたのだねと納得するご縁があるもので、近頃は売れ先を心配することがなくなりました。
「男山(Manly Mountain)」、「女谷(Womanly Valley)」90cm x 90cm
この作品はニューヨークにいた頃ペアで制作しました。二つを分けたくなくて、ペアでご購入いただくことにこだわってきましたが、去年ふと決心がついて「混沌を泳ぐ」の表紙に使用した「CLARITY」という作品を所有されるスイスのコレクターさんに「男山」だけお譲りしました。その際、「カップルを別つようで申し訳ない気持ち。」とおっしゃってくださったので「彼女(WomanlyValley)には新しいハンサムボーイフレンドを作りますからノープロブレム!」とお伝えして笑い合いました。
そしてこの秋、「女谷」をお求めくださったシンガポールの木村共男さんのために、新しい「男山」を制作しました。作品には、共男さんにご提供いただいた新潟県十日町名産の古い紬(つむぎ)3種類に加え、男物の帯地や大島紬、鮫小紋などかっこいい系の着物地を沢山使っています。
バランスを考えつつも前作以上を目指して額も刷新、柄も鵜から鷹に。鷹の柄はコレクションしているのですが、海外で羽ばたくともおさんや、お客様方をイメージして富士山の上を舞うものを選び、常夏のシンガポールにマッチするように、涼しげに仕上げました。
新しいボーイフレンド、自分で言うのもなんですが、セクシー&ワイルドでかっこよくなった気がします。例えるなら007のジェームズ・ボンドが、ウォームで甘いピアーズ・ブロスナンから、クールで不良なダニエル・クレイグになったみたいな感じ。笑
世界が落ち着いて、実物を見ていただける日が待ち遠しいです。