知っておいて損はない、茶の湯の知識〜梅の話〜

執筆者 | 22/02/19 (土) | コラム

 こんにちは!キャシーです。

 昨日(2/18)のHRでひさしぶりに茶道が話題にあがったので、すかさず茶道にまつわるお話を書いておこうと思います。

 タイトルでネタバレですが、梅のお話です。今は、ちょうど梅の花の季節ですからね。

 梅は茶花としてだけでなく、着物や棗(なつめ:お抹茶を入れる容器のひとつ)などの文様として茶席で使用されることも多いです。それにまつわる知識があると主人のおもてなしの気持ちがよくわかるので、知っておくととても良いと思います。

松竹梅に優劣はない

 梅と言われて真っ先に思い浮かぶのが松竹梅ではないでしょうか?ただ、松竹梅のイメージは、たとえば定食屋さんのランチや品物などの三階級のランク付です。けれど本来はこの三つに階級はありません。

 松竹梅は中国の思想が元になっており、すべてめでたいもののしるしです。

 常緑樹で寒い冬にも緑を保つ松と竹、そして百花に先がけて咲く梅。みっつを合わせて「歳寒三友(さいかんさんゆう)」と呼びます。

 ですから、松竹梅に優劣はないのです。

 松竹梅は、基本的には春(1月〜3月)のおもてなしに使われます。季節感を交えながらおめでたいものをたくさん集めて、こころからのおもてなしとしているのではないでしょうか。

鉢木

 さらに、梅といえば松・桜と共に描かれることも多いです。これは何を表現しているのでしょうか?答えは謡曲「鉢木」(はちのき)です。

 

 大雪の夜、貧しい武士である佐野源左衛門常世(さのげんざえもんつねよ)の元に旅の僧が現れます。常世は領地を追われ落ちぶれた身の上で、暖を取るための薪さえろくにありませんでした。それにもかかわらず、常世は自身が大切に育てていた松・梅・桜の見事な鉢植えをいろりにくべて僧をもてなした上、鎌倉(幕府)より召集があればいち早くかけつける覚悟であると僧に語ります。

 後日、鎌倉より召集があり馳せ参じた常世を待っていたのは、北条時頼でした。あの時の旅の僧は、実は北条時頼であり、常世の行動に胸打たれた時頼は、失われた領地を返し、さらに松竹梅にまつわる領地をあたえました。

 観阿弥・世阿弥作とも言われるこの謡曲。己の身の上にとらわれず最大限のおもてなしをした常世のように、こころづくしのおもてなしをしていることを表現するために、松・梅・桜が茶席に並んでいるのかもしれませんね。

最後に

 「鉢木」をよんでピンときた方もいると思いますが、北条時頼とは、鎌倉幕府の執権だった人物。先日のYouTube大学の授業「北条政子」で出てきた北条時頼の子孫です。いろんな知識がつながると、楽しいですよね。

 ほかにも、梅といえば菅原道真の飛梅があまりにも有名ですし、「暗香不動月黄金」という林和靖(林逋)の漢詩を知っていると物を見る目がかわります。利休梅、四愛や四君子も、おもてなしを理解する上では外せません。また、梅だけの模様に見える箱の素材が松と竹で、実は松竹梅になっていたりと、知識と工夫は計り知れません(表千家・裏千家・武者小路千家好みの「三友棚」のこと)。

 一言に梅と言ってもとても奥深く、手強いです。ですから、茶道は深入りすると大変危険なのですが(笑)、その分学び甲斐があるというものです。

 極めつくすということは叶いませんが、一生楽しめる趣味にもなりますので、ぜひ足を踏み入れてみてください。

 ではまた・:*+.(( °ω° ))/.:+

*主要参考文献*

・「文様を読む」木下明日香 淡交社 2019年

・「漢詩鑑賞辞典」 石川忠久 講談社 2009年

 (イラストは筆者が書いたものです。)

 

 

執筆者 | 22/02/19 (土) | コラム


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