日本とアメリカ、ダブルに生きてきた

執筆者 | 21/03/22 (月) | コラム

Progress のメンバーさん、こんにちは!

はじめまして! 春は日本の新学期。つい先日Progressに加入した私は、久しぶりに新学期を迎えた学生のように、ワクワクドキドキとこの数日を過ごしている。

お友達何人できるかなぁ~、どんな人との出会いがあるのかなぁ~、どんな自分の気づきがあるのかなぁ~、 こんな気持ちになるの、嬉しいなぁ! と。

アメリカに来て30年以上、ルーツはしっかり日本人ながら、ダブルの文化を生きてきたこの30年間。 日本の「失われた30年」の時空を飛び越え、世代交代しつつある日本の世代と、どんな新しいシナジーを生みだすことができるのであろうか、という好奇心こそがProgressに参加しようと思った動機である。勿論あっちゃんの大ファン!

Progressのメンバーの多くは、30年前の日本を実際に知らない人も多いにちがいない。親やその上の世代から伝え聞いている人もいるかもしれない。しかしそれは、多分私が子どものころに親から戦争の話を聞いていたように、イマイチ現実味のないもののような気もする。

私は、あっちゃんのシンガポール移住に大拍手を送った一人である。 自分の生まれ育った場所をあとに、海外で新しいことを試してみよう、というスピリットには多大なる共感を抱く。 特に最近は、外務省の人でさえ海外に出たがらない、と伝え聞く内向きのご時世、あっちゃんのチャレンジが多くの人への素晴らしい影響となることと信じている。

日本を飛び出した頃

では、私はどのようにアメリカにやってきたのか。 31年前の1990年、日本はバブル絶頂期、私は六本木に本社がある某大手IT 企業にて、仕事に遊びにブイブイと毎日を過ごしていた。 世界は日本をたたえあげ、人々は自信に満ちていた。エズラ・ボーゲルのJapan as Number One は日本人の誇りであったし、日本は他の国と違うユニークな強国である、と多くの人が信じていた。

でも私は日本を出たかった。職場が外資系だったこともあり、各国から海外出張でやって来る同世代の女性たちの活躍を、うらやましくみていた。そんな中、日本の中であがいている自分が、世界のビジネス界において、どのくらいの立ち位置なのかを知りたくてたまらなかった。 日本は今なお、女性の進出に関して世界の中でも大きな遅れを取っているといわれ続けているが、その当時は今の比ではなかった。 

まずは、オフィスの中には、女性のヌード写真やカレンダーが至る所に飾られていた。人事部長の部屋にさえ、等身大の女性のビキニ姿のポスターが貼ってあった時代である。普通の男子社員が、普通にそれらの写真やポスターを机の周りに飾っており、女性はその隣の席でそれらを見ぬふりをして仕事をする。海外からの出張者は男女問わずにその状況には度肝を抜かれていた。多くの企業が女性のヌードカレンダーを発行していた時代である。

バブル期のジュリアナ東京は、テレビでよく取り上げられるが、その当時の一般的なオフィスがどんなものであったかを、正確に後世に伝える報道は少ないように思う。

オフィスのヌード写真は氷山の一角、一時が万事、職場は女性にとって仕事の厳しさプラスの厳しい場所であった。 そんな状況に違和感を持つ女性たちに与えられた選択肢は、大きく3つ。頭をゴツゴツとあちこちにぶつけながら状況と戦うか、仕方ないと受け入れるか、その世界を飛び出すか、だったように思う。ただし違和感を持たずに、状況に従っていた女性が多かったことも確かではある。

頭にたんこぶがたくさんできた私は、日本を離れてみようと思った。 ビジネススクールでMBAの学位を取ることで、自分が世界の中でどのくらいの立ち位置なのかを確かめてみたく、まずはそれを目指すこととした。

アメリカに着いたぞ!

1990年の5月14日は私の人生にとって忘れられない日である。超絶忙しい職場では、出発の前日遅くまで仕事をし、アパートはそのまま、会社の後輩に引っ越しや家具の処理などすべて託し、毎朝出社するように成田空港に向かった。成田空港から飛行機に乗るギリギリまで、公衆電話から仕事の指示を行い、飛行機に飛び乗る。 30年たっても、アメリカに降り立った時の空気感や緊張感、すべてを昨日のことのように鮮明に覚えている。

手足を大きく伸ばしたような、のびのびとした感覚、自分の中では異様と思うような行動をしても誰も気にしない、という解放感。これからは一人なのだという孤独感、これからいろんなことを開拓していくぞ、という冒険心。 いろんな気持ちがつまった一人きりの渡米。私にとって、5月14日は今だに、リメンバー514の記念すべき日なのである。

振り返ってみると、あの時日本を離れなかったという人生は、今や考えることができない。もし今、日本を離れてみたい、と悩んでいる人がいたら、私は大きな声で言いたい。”Go for it!”と。 また、今の生活や発想に行き詰まりを感じている人も、一度環境を変えてみることで、経験や考え方を大きく飛躍することができるかもしれないと思う。 

 

執筆者 | 21/03/22 (月) | コラム


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