ストロベリー・ストーリー 赤くて甘くておいしい苺 第3話

執筆者 | 21/03/24 (水) | コラム

こんにちは。アリスカーナの竹内睦(たけうち ちか)です。
ストロベリー・ストーリー第3話をお読みいただきありがとうございます。

第1話はこちらから
第2話はこちらからお読みいただけます。

一攫千金を夢見る男の元に、ある夜、突然届いた不思議な物語。

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それを聞いたあなたは、ビックリしました!

そして・・・
心の中に複雑な思いが浮かんできました。

さっき食べたあの甘い苺は、一番おいしいものではなかったのか?
他の箱の中には、もっとおいしい苺が入っていたのかもしれないのか?

さっき感じた幸福感が、遠のいていくような気がしました。

あれは、苺そのもののおいしさでなく、
一番甘くておいしい苺を、選ぶことができた、
という満足感だったのか?

女の言葉を聞いて、あなたは
その決断が間違っていたのかもしれない、と思いはじめました。

さっきまでの自信が、
いいようのない不安に変わってしまっていました。

それは、時間にすると、
ほんの一瞬のことだったのかもしれません。

けれど、あなたは、その一瞬のあいだに、
自分の価値観が、めまいのようにゆがんで、
揺れ動いているのに気づいてしまいました。

あなたは、目を閉じて、
もう一度、苺の味を思い出そうとします。

口に入れた、あの赤いつやつやした苺

甘い果汁が口の中いっぱいに広がって、
旅で疲れた体に、しみわたるようだった・・・

なんて幸福なんだろうと思った・・・

そう、幸福だと思った・・・

あの苺は、
本当においしかった・・・

一番目だろうと、二番目だろうと、三番目だろうと
そんなことはどうでもいい
本当においしかった。

本当に幸福だと思った。

そうやって、自分の感情をていねいにたどってみると、
不思議に心が落ち着いてきました。

すると、あなたの頭の中に、こんな考えが浮かびました。

自分は、おいしい苺があと1つと聞いて、
自分がそれを手に入れることしか、考えなかった。

けれど、あとの二組は、もしかしたら、
自分たち以外の、誰かのために
美味しい苺を残して置いてあげよう、と思ったのかもしれない。

疲れた体にしみわたる、あの苺のおいしさ、
さっき味わったあの幸福感を、
彼らは、もうすでに手に入れていて、
他の誰かにも味わわせてあげたい、と考えたのかもしれない。

もちろん、
本当のところなんて
わかりはしないのだけれど・・・

あなたは、手にしていた箱に目を落としました。
苺がまだ2つ残っています。

その1つを、女に差し出しました。

女はにっこりと微笑んで苺を受け取り、口に入れました。

女 「おいしいわね」

あなた「うん、おいしいね」

今度は胸の中に、女の声が響きました。

『そう、それが人生よ。

自分で選んだ苺を味わうことよ。

他の人の人生を、生きることなんてできない。

これからも、何度もこうやって、苺を選ぶ場面がやってくるわ。

自分の決断を、選び取った幸せを信じて、味わうことよ。

そのおいしさを、人とくらべることに、なんの意味も無いのよ』

女 「旅を続けるんでしょう。楽しんでね」

あなたは、女に別れを告げて、また歩き出しました。

はるか遠くに、また別の看板らしき物が、
陽射しに反射して、光るのが見えます。

終わり

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終わりと書いているから、これで終わりなんだな。
結局、なんだったんだ、これは?

時間は夜の12時を過ぎていた。

彼はファックスの紙を、届いた順番に並べてみた。

そして、最初の言葉を読んだ。

「あなたが探していたものです。見つけましたよ」

なぜだろう?
よくわからないけれど、そう言われてみれば、待っていたような、
そんな気がする・・・

俺が探していたもの?
探していたもの?

考えているときに、携帯電話が鳴ってドキッとした。
友人のFだった。

同じくらいの時期にネットビジネス、情報起業に興味を持って
あるビジネスセミナーで彼と出会った。

同い年で気が合った。

そのFが最近、趣味のロールプレイングゲームを題材にした
情報商材を完成させたということも、
彼を焦らせていた原因の一つだった。

「明日、Dさんに会うんだけど、一緒に話を聞きに行かないか」

Dは彼とFが出会ったセミナーの、講師をしていた情報起業家だった。

いや、厳密には情報起業家の肩書きは趣味のようなもので
会社をいくつも経営している社長だった。

「どうして、Dさんが個人的に会ってくれるんだよ?」
びっくりして彼は聞いた

「だって、セミナーに参加した人には、個人面談してくれるって
前から言ってたじゃないか。忘れたのか?」

あぁ、そういえばそうだった。
彼は忘れていた。

けれど、覚えていたとしても、
自分は面談を申し込む勇気はなかっただろうと思った。

「俺は自分の商材の売り方とか、アドバイスしてもらおうと思ってるんだけど、せっかく、Dさんが時間をとってくれるんだから、一人で聞くのはもったいないじゃないか。だから、誘ったんだよ。」

「いいやつだな」と彼は思った。

俺だったら、わざわざ、誰かを誘ったりしないだろうな。

さっき読んだ苺の話を思い出した。

最後のほうにそんな話が出てきたな。

中身が見えない箱に入った苺の話・・・

    つづく

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もう少しだけ続きます(^^)

苺の画像はPROGRESSメンバーの池本幸大郎さんの暁いちご農園のものを使わせていただいてます。

執筆者 | 21/03/24 (水) | コラム


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