永遠の文学青年ちゃかし誕生物語その①

執筆者 | 22/11/09 (水) | コラム

中学2年生のとき、既に猛烈な映画マニアだった私は、地元名古屋市の大きな映画館で行われた、水野晴郎MCの映画クイズのイベントに参加していた。客席には250人から350人くらいの人々がいて、全員が〇✕のプラカードを持って立ち上がり、二択のクイズに挑戦しては、外れたら即着席して、どんどん人数が減っていくという方式だった。

しかし私は、物凄く自信があったのに、比較的早い段階で間違えて着席してしまった。その後の問題は苦もなく解答が分かったので悔しかった。

ところが、ある問題で、一気に正解者が減った。

それは、『蜘蛛女のキス』の原作者はブラジル人である、〇か✕かという問題で、この映画がブラジル映画であることは良く知られていたので、〇で間違えてしまった人が多発したのだ。かく言う私も原作者のことをまるで知らなかった。監督の名前は覚えていたのに。

その後、優勝者が決まるのだが、それはセーラー服姿の女子高生だった。
彼女は勝利者インタビューで、「『蜘蛛女のキス』は原作を読んでいたので答えは知っていました」と言った。
私には、それが、途轍もなくカッコ良く思えたのだ。

ここで注意事項だが、私が男性で尚且つその時、思春期ともいえる中学2年生であることも、彼女がセーラー服姿の女子高生である事にも、ほとんど意味はない。私には異性だろうが、同性だろうが、人間だろうがそれ以外だろうが、あらゆる対象に恋愛感情も性的感情も抱かない。

ただ、純粋に、『蜘蛛女のキス』を読んでいると、そのことが堪らなくカッコ良く思えたのだ。

こうして私は、ラテンアメリカ文学を代表するアルゼンチンの作家であるマヌエル・プイグを知り、文学の沼に入って行くのである。

つづく。


146 ビュー
4いいね!
読み込み中...