集団の「チーム」化を妨げる3つの罠(1)

執筆者 | 21/03/27 (土) | コラム

みなさん、こんにちは。

2020年7月30日入会の福原昌子(ふくはら まさこ)と申します。

大阪で社会保険労務士をしています。

人は、集団になったとき、「協力したほうがいい」と分かっていながら、なぜ協力できないのか?

単なる「人の集まり」ではなく、個々が協力し合い目的を達成するための集団を「チーム」と呼ぶなら、集団が「チーム」になることを妨げているものは何か?

職業柄なのか、このことをずっと考え続けています。

私は心理学を学んだわけではないので、あくまでも経験から得たもの・感じたことの記録にとどまりますが、ここにまとめてみようと思いました。

お付き合いいただけましたら幸いです。

 

デマだと知っていながら、買いだめせざるをえない

2020年3月頃、新型コロナウイルス感染症が流行する中、「トイレットペーパーが品薄になる」というデマが流れ、トイレットペーパーを買い求める人がスーパーやドラッグストアなどに押しかける騒動が起きた。

注目すべきは、買いだめをした人のうち、「トイレットペーパーが品薄になるという情報はデマだと知っている」と答えた人が大半を占めていた、という調査結果だ。

デマだと知っているにも関わらず、「必要な分量だけ購入する」という、集団全体にとって最適な行動を取れないのはなぜか。

それは、自分が集団全体のためになる行動を取ったとしても、他の人間がそうしなければ、自分だけが割を食うことになる(と、大多数が信じている)からである。

実は同様のことが、新型コロナウイルス感染症流行という異常事態下でなくても頻繁に起きている。

会社の中で何が起きているのか

会社という組織がうまく機能するためには、個人や、一つ一つの部署が、全体にとって最適な行動を取る必要があるが、多くのケースでそうはなっていない。

ここでも、「自分が集団全体のためになる行動を取ったとしても、他の人間がそうしなければ、自分だけが割を食うことになる」という思いが蔓延しているのである。

すると、次のようなことが起こる。

①多くの人が「失敗=恥(無能の証)」と考えるため、ミスを隠す、あるいは失敗事例を共有しない → 会社内のあちこちで同じような失敗が繰り返される(工事現場等で言うところのヒヤリハットを共有しないということなので、大きな「事故」が起きるまで問題が顕在化しない)

②部署に所属する人にとっては、「部署の利益を守り、余分な仕事を持ち帰らないこと」が部署横断会議等における最適な行動となるので、問題解決の可能性がより高そうな手段があったとしても、自部署が不利益をこうむりそうであれば提案しない。

③多くの人が「自分の技術や知識を他人に伝えることは、自分の立場を危うくする」と感じているので、後進の育成をせず、知恵の共有をしない。

①②③の行きつく先は、組織の停滞、最悪は崩壊である。

組織の問題は、絡まった糸のようであり、力まかせに引っ張ったところでほどけるものではない。

それぞれ糸の端を持つ人間が、バラバラに引っ張り合いをしていては、かえって強固に絡まってしまうだけである。

時には糸を引く手を緩めたり、手を離したりと、互いに声を掛け合って、助け合って、ほどいていくしかない。

集団に働く力

このように「協力できない」原因を、個人の能力が低いから、勇気が無いから、などと、「個人」にあると認識している限り、根本的解決からは遠ざかるだろう。

「自分が集団全体のためになる行動を取ったとしても、他の人間がそうしなければ、自分だけが割を食うことになる」という不安や恐れが、集団の力となって、個人個人の行動に作用している。

この集団の力とは、個人で抗えるようなものではない。

では、どうすればいいのか?

「自分が集団全体のためになる行動を取ると、自分に良いことがあった」という体験を積み重ねさせることである。

失敗したことや悪い情報を提供しても自分が窮地に立つことはないんだ、と信じられる状況を作ってやることである。

このような「場の安全」を確保するにあたり、集団のリーダーが担う役割は大きいが、リーダーだけでは集団の力に抗えない。

引き続き、集団の「チーム」化を妨げる罠について考察しつつ、リーダーはどのように周りの協力を得ていけばよいかも考えたい。

執筆者 | 21/03/27 (土) | コラム


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