商品のメリットを勘違いしないために
その商品のメリットって何ですか?という質問に、明確に答えられる人は少ないです。
自分が大切にしている商品になればなるほど起こりがちです。
販売論のコラムを書こうとしたら、くわはらまりほさんの素晴らしい記事を見てしまい、ビビッて間隔を空けてのコラム投稿です。
今日お伝えするのは、商品のメリットの伝え方について。
私自身も気が付くと間違ってしまうので、勘違いしがちなポイントを備忘録と戒めに記録していきます。
結論:それは相手にとってのメリットか?
最初に結論を書くと、自分が商品に対してメリットと考えていることが、果たして「相手にとってのメリットか」ということを考えましょう。
こう聞くと「そんなの当たり前じゃん」と感じると思います
自分は商売をしていないから関係ない、と思った方もいるでしょう。
しかし、この知識は、役に立つのは商売だけはありません。
自己紹介であっても、プレゼンであっても、人とのコミュニケーションであっても役に立ちます。
この「勘違いしがちなポイント」を押さえていくだけで、きっと相手から、自分の商品や、活動や、自分自身も好かれる可能性が高まるでしょう。
その商品のメリットは?
物を販売するとき、当然ですがほとんどの人は「商品のメリット」をちゃんと考えています。
「この服を買ってください!この服は最も原価率が良くて、自分がめちゃくちゃ儲かるんです!ついでに在庫も100枚あるので、段ボールの置き場を無くしたいんです!」
なんて売り込みをする人はまずいません。
ただ、商品のメリットを考えた結果、勘違いして伝えてしまう人はたくさんいます。
例えばその服が、2年の歳月をかけて構想していて、新技術を応用しながら職人が手編みで作って、フェアトレードの材料を使っていて、売り上げの一部を発展途上国に寄付しているとしましょう。
では、この商品のメリットは何でしょうか?
「いや、直前にメリット書いてるじゃん」と思った方は、残念ながら勘違いしてしまっています。
2年間の構想を経て、
手編みかつ新技術で作り、
フェアトレードであり
寄付をしている
ことは、全く持って商品のメリットではないのです。
これらはすべて「商品の特徴」に過ぎません。
特徴はスペックであり、メリットではない
実は多くの方が勘違いしがちなポイントは、「商品の特徴は、そのまま相手のメリットになる」と思い込んでしまうことにあります。
商品の特徴と相手のメリットは、全く別物なのです。
でも2年間のストーリーと職人の技術はちゃんと伝えてますよ!
フェアトレードで利益も寄付してるんですよ!何が悪いんですか!?
なんて、販売者から怒りの声が飛んできそうですが、残念ながらこの説明は「相手のメリット」の説明にはなっていないのです。
端的に言えば、これらのスペックは「事実」です。
勘違いしてしまう人は「事実を聞いただけでメリットと感じてしまう」パターンが多いです。この勘違いは、特に見識が深いがゆえに起こりがちです。何でこのスゴさが分からないかな~!となってしまうのです。
誰だって専門分野以外は素人です。例えば「この椅子は無垢のナラ材でホゾ構造!虎斑がポイント!」と言われても、普通の人は困るだけなのです。
相手のメリットは「得られるもの」
相手のメリットとは、商品を手にすることでその人が「得られるもの」です。
椅子は分かりづら過ぎるので置いといて、先に出た「手編みの服」の場合の相手のメリットは
2年の構想で新技術と職人の手編みだから「丈夫で長持ちして肌触りが良くて」
フェアトレードで寄付もしてるから「社会貢献が出来る(満たされた気持ちになる)」
ことにあります。
「新技術と職人の手編みによるフェアトレードの服」は商品スペックを伝えていますが、
「他にはない技術で心地よい着心地を体験し、感謝される服」は、商品の特徴を伝えているのではなく、その先にある「相手が得られる」体験や思いを伝えています。
スペックはあくまで相手が得られるメリット=体験や思いのために必要なもので、スペックだけではメリットにはならないことを忘れてはいけません。
YouTubeしか見ない人に、超高性能のゲーミングPCのスペックがあっても、特にメリットとならないということです。使わない機能ですから。
だったら4Kディスプレイの方が綺麗な映像を見られて、見られる動画の幅が広がるため、メリットがあります。
今のように、そのスペックが「なぜ」相手にとってメリットとなるのか?を考えてみると、思わぬ勘違いは少なくなります。
それであれば「この服はフェアトレードなんですよ!!スゴい服でしょ!」というスペックの売り込みではなく、「フェアトレードなのであなたが自信をもって堂々と着られます」とか「この服を買うことであなたに感謝する人がいます」という説明になるんじゃないでしょうか。
そして冒頭に書いたように、この考え方は商品販売だけでなく、自分自身の自己紹介にも同じことが言えます。
私はこんなことが出来ます!は素晴らしいことですが、残念ながら人はスペックを見ても、その先のメリットは想像できません。そのスペックにより相手が得られるメリットを言葉にすれば、きっとよりスマートに、あなたの素晴らしさが伝わることでしょう。
ぜひご参考になさってください。
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さて、続きは相手のメリットの勘違いの核心に触れていきます。
結論:相手にとってメリットでないことを押し付けない
身も蓋もない結論ですが、これが出来ていない方は非常に多いです。
自分が思っているメリットを、相手のメリットだと思い込んで、前面に押し出してしまうパターンです。これは自分たちの商品にこだわって、自信があればあるほど起こりがちです。
例えばノンシリコンシャンプーなどは、頭皮に気を遣っている方からすれば大きなメリットですが、とにかく安く買いたい人からするとデメリットになることもあります。
これは「そのメリット私は要らないです」パターンです。
ここで「ノンシリコンシャンプーはあなたの体にも良い!」と正論パンチをかましてしまうと、それはおせっかいなメリットの押し付けになってしまいます。
その場合は、「シリコンシャンプーの危険性」を伝えるなどして、まず相手の価値観を崩してあげるところから始めると効果的でしょう。
では、フェアトレードの服はどうでしょう?フェアトレードであることは、社会通念上も素晴らしいことですし、フェアトレードだからと言ってめちゃくちゃ高いわけではありません。
しかし、こうした「絶対正義」的な商品にありがちなもう一つの勘違いパターンとして、売り手側がフェアトレードであることにこだわった結果、そこに価値を置きすぎて、「フェアトレードの作業着売ってます」みたいなプロモーションをしてしまうことです。
売り手側の理想の反応は「フェアトレードの服があるのか!それは社会的な意義がある!ちょっと高くてもこれを買うことは良いことだ!フェアトレードの服にしよう!」みたいな感じです。
でも、こんな理想的な反応をしてくれるのはステマかテレホンショッピングくらいで、実際の反応は「へー、フェアトレードなんだ」程度です。
もちろん、服を買おうと思って、最後に迷っているときに「フェアトレードですよ」と言われたら、他製品との差別化にはなるでしょう。機能も値段も同じなら、社会貢献しようと思えるわけです。
ただ、最初から「フェアトレードです!」と言われても、相手は服を買いに来ているわけであって、「フェアトレードだったらより良いな」と思っていても、「よ~し、今日は気分がいいからフェアトレードの商品探そっ!」と思って来ているわけではないのです。
仮にそう思う人いても、それは「最初からフェアトレードの商品を買いに来ている人」なので、だったらいっそフェアトレード専門店を作ってしまった方が賢いのです。
これは特徴が「確かにメリットだけど、そのメリットの優先度は高くない」というパターンです。
しかし、売り手のこだわりが強く出てしまった結果、その優先度を勘違いしてしまうのです。
この例で言えば、フェアトレードがそれだけで購入理由にはなりませんが、特にそこに正義がある場合、プロモーションを否定することが悪になってしまうため否定しきれず、結局推し進められてしまいがちなので注意が必要です。
相手にとってメリットか?を見極める方法
そんな悲劇を起こさないためには、①その優先度は何よりも高いか?②そもそも相手はそのメリットを求めているのか?という視点に立つと改善しやすいです。
①に関しては、その特徴が「他の商品にはない」ものであるか?と考えてみてください
他の商品には作れない機能性やデザイン性であれば、それを前面に推し出すことは「明確な差別化」となり、大きな意味があります。
しかし、様々な商品が溢れる今、全く新しいものを開発することは容易ではありませんので、それも忘れないようにしましょう。
②は、それらのメリットを「相手が求めているか?」という視点です。
そもそも相手はフェアトレードをしたいと思っているのか?
そもそも相手は無垢材の椅子を求めているのか?最先端のPCを求めているのか?みたいな感じで考えてみてください。
その時に「必ずそれじゃなきゃダメだ!」なのか、「せっかく買うならその方が良いよね」というレベルなのか。
もし後者であれば、それは前面に出してプロモーションする必要がないことだったりします。
(もちろん需要が多かったり、強烈な付加価値の場合は専門店として成り立ちます。地元の野菜専門店とか、サイン付きの本とかです)
もしあなたが商品の魅力よりも先に「付加価値」を推し出してしまっている場合は、この視点でプロモーションを見直してみる価値はあると思います。
多くのビジネス書で「付加価値!」「差別化!」という言葉が飛び交うことで、いつの間にか付加価値だらけで本来の商品から得られるものを伝えられていないものも多く見受けています。
付加価値に重きを置きすぎず、本来の相手のメリットをきちんと伝えて、最後におまけ程度に付加価値を説明した方が、間口が広がる可能性がありますよ。
ぜひ実践してみてください。
おまけ
一応最後にストーリーの共有についても触れておきますが、確かにストーリーを共有することで、相手がそのストーリーに共感すれば「その商品を手にしたときの満足度」を高めることができるため、有効なテクニックです。
しかし、ストーリーの伝え方も一歩間違えば逆効果になってしまうので、次回はその点を深堀りしていきます。
お読みいただきありがとうございました。