プログレスと私

執筆者 | 22/11/20 (日) | コラムコンテスト

 興奮して熱気を持った肌に夜気が気持ちいい。授業観覧を終えて乃木坂駅へ向かうわずかな時間、PGメンバーと語らいながら歩く至福の時間であった。
 彼とまともに話したのはその日が初めてだったと記憶している。
 その彼が言った。『末永さんのことを親友と呼んでも良いかな』
 照れくさそうに破顔したその表情に彼の実直さを見てとったぼくは、すぐさま『もちろん』と答えていた。

 普段生活しているとなかなか親友と呼べる相手には巡り会えない。これは良い相手がいないのではなく、自分が傷つかないために親友という領域まで踏み込めない防衛本能が働くためではないだろうか。
 よく長年付き合いのある友達をさして、『友達っていうより腐れ縁だな』などと嘯いてみたりするのも、ある種の防衛本能だとぼくは思う。それに対して前述の彼は相当な勇気を振り絞って件の言葉を口に上したのであろう。ぼくは素直にかっこいいと思った。

 PGには親友と呼べる仲間が多くいる。あっちゃんという太陽を中心に集まったぼくらは、世代や性別や住んでいる地域、それに社会的立場までばらばらなのに、要所要所で同じ方向を向くことによってすんなりと相手を受け入れる瞬間ができるのではないだろうか。
 これはその他いくつものコミュニティーでついぞ体験することのなかったレアな経験である。そしてこれは、これからの世界を生き抜く知恵なのだとぼくは考える。
 信頼で繋がったチームだけが世界で戦っていけるのだという確信がある。
 では信頼できる仲間の選別というデスゲームがこれから始まるのだろうか? いやそうではない。自分がまず心を開いて相手を受けいるれことが肝要なのだ。
 はっきり言って怖い。もしかしたら裏切られてひどく傷つくこともあるかもしれない。でもそんな時、あの日乃木坂での、彼の言葉を思い出す。
 そしてぼくはこう言うんだ。
『みんな大好きだよ』


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