ことばの花束

執筆者 | 22/11/27 (日) | コラム

 

人それぞれこだわりが強いものってあると思うのだけど、

やっぱり私は「言葉」だなぁと気づかされたコラムコンテスト。

小中学校で一番好きな科目は国語だった。

5歳で始めた英語とは、出会ってすぐに仲良くなれた。

フランス語に一目惚れしたのは高校1年生の時。

すっかり虜になったフランス語を大学で専攻に選ぶことに、何のためらいもなかった。

会社員時代、語学力が求められない環境があまりに無味乾燥で耐えられず

やっぱり言語の世界に戻りたくて、日本語教師養成講座に通い始めた。

日本語の世界を知れることがおもしろくてうれしくて

壁にぶつかってもそれさえ興味深かった。

この秋、来仏3年目にしてようやく本格的にフランス語の学習を再開した。

難しいけどやっぱりその楽しさは変わらない。

こんな感じで私はずっと言葉とともに生きてきた。

話す言葉ももちろん大事なんだけど、書く時の言葉は、より大切に選びたくなる。

文章を書くことは、頭の中に浮かんでは消える言葉の取捨選択を、

何度も何度も何度も繰り返す作業。

 どんな言葉をえらぼうかな

 伝えたいニュアンスにふさわしいのはどれだろう

 順番を入れ替えた方が読みやすいかな

 せっかくえらんだけど、この言葉は消した方がいいかな

私にとって、言葉を選んで文章にしていくことは、なんというか…

お花屋さんでお花を選んで花束を作っていくようなイメージ。

 同じ種類のお花でも、色合いや大きさはそれぞれちがうから、慎重に選びたい

 きれいで大好きなお花が目の前にふたつ…

 どっちも花束に入れたいけど、このふたつを組み合わせるのはなんか違うなと悩んだり

 例えばカスミソウみたいな、目立つわけではない繊細なお花が

 アクセントになってくれたり全体のバランスを整えてくれたり

 花束が大きくなりすぎたらどれを間引くか考えないといけないし

 花束を作ってるのは楽しいけれど、どこかでキリをつけて完成品にしないといけない

「progressとわたし」のコラムを書くために私が訪れたお花屋さんには

それはそれはたくさんの草花が並んでいた。

どんな形、色、大きさのものがあるかなとひとつひとつ見ていると、

店長さんがやってきて「実はこんなオススメもあるんですよ」と

お店の奥に連れてってくれる。

そこには、ふつうのお花屋さんでは売っていないような魅力的なお花が並んでいて

さらに私を悩ませる。

今作れる一番きれいな花束を何とか作りたくて、何日もお花屋さんに足を運んだ。

「これもいいけど、あれも捨てがたい」と頭を悩ませ、

何かを選ぶと同時に、選べなかったものにも思いをはせる。

時間をかければかけるほど、作品への思い入れは大きくなっていく。

コラム完成前日、私はTELL-USで自分のコラムのとっちらかり具合を表すのに

「デコレーションに失敗したお誕生日ケーキみたい」という表現を選んだ。

完成間近の自分のコラムを傍に、たくさんのメンバーさんのコラムを読んでいるうち

ここに集まるコラムも、私が書いているコラムも

お誕生日ケーキともまた違うなぁと思った。

なんか…もっとこう繊細で、

貰うのも贈るのも、もう少し非日常な感じがして

ケーキみたいに一瞬で目の前からなくならない…

そうだ、花束だ!

贈られている相手が私ではないことは百も千も承知なのだけど

私だったら、両腕で優しく受け取ったまま、どんなお花があるのかなって

じっくり眺めてしまうような、繊細で美しいプレゼント。

読む人に必ず伝わる思いが、全てのコラムに込められていることは間違いなくて

一人一人がどんな気持ちでこの花束を作ったのかなって想像すると

どのコラムも特別に見えてくる。

そして、これを受け取ったあっちゃんはどんなにうれしいんだろうと想像して

またあったかい気持ちになる。

今回のコンテストに参加して、

私は自分がいかに「言葉」へのこだわりを持っているのかを自覚せざるを得なかった。

少しこだわりすぎる節があるとも思いつつ

それでもじっくり大切に選びたいものらしい。

ただそれは、今回のテーマがサラッと書けるものではなく、

progress 4周年というお祝いの機会にお届けするものだったから。

あっちゃんへの感謝を最大限込めた特別な作品にしたかったから。

プレゼントする人の笑顔を思い浮かべて

お花を選ぶような気持ちでコラムを書いていたら

いつの間にか私の方がプレゼントを受け取っていたというくらい

書きながら感じることがいくつもあった。

言葉を選ぶ楽しさ、選んだ言葉を紡ぐこと、それが形になっていくことのよろこび。

そして、そんな作業をすることが、自分の内面と向き合う時間にもなるという気付き。

このコラムコンテストに参加したことが

これから私の背中を押してくれるかもしれないと

ドキドキワクワクしながら完成した花束をお届けした。

何とか提出した後は、共に並ぶ350を超える作品を順番に読んでいる。

文章を書くことで表れる人柄、シュートや配信ではあまりされない自己開示を

のぞけることが楽しくて楽しくて…

「交流」から少し距離を置いていたけれど

お一人お一人のコラムを通して、静かに交流を楽しませてもらっている気分。

全てのコラムが、私にとっては「ことばの花束」

ひとりでも多くの人の目にとまるといいなという気持ちを込めて、

作品一覧のリンクも貼らせていただきます。

あなたのお気に入りが見つかりますように。

pgコラムコンテスト応募作品一覧


5,381 ビュー
21いいね!
読み込み中...