野草で前に進む

執筆者 | 21/04/04 (日) | コラム

野草の季節

野草の季節となった。春になると、私たちの食費はグンッと減る。野草が主食源となるからだ。野草のパワーはすさまじい。カロリーの摂取量も減るため、みるみる脂肪が落とされていく。体調もエネルギー溢れたものとなる。

草食動物を見ればわかる。草食動物は少しの野草を食べて体を維持する。食事に多くの時間を取っていては肉食動物の餌食になる確率が上がってしまう。栄養素が濃縮しているのが野草である。たんぽぽ100gで1日の摂取量目安はビタミンAで2倍、ビタミンKに至っては9倍だそうだ。その他、胃腸の働きも改善してくれるという。実体験でもそうだろうなと思う。

春になると、早朝に散歩を兼ねて野草を採るのが私の日課となる。ツクシを採り、カラスノエンドウを採り、タンポポ、ヨモギを採る。スギナは60%のブランデーにつけると、3週間後に超高濃度のビタミン剤となる。

子供が生まれたとき、自然の中で育てたいと思った。33歳のときだった。仕事を辞め、富士山麓の広大な敷地に移住した。大した仕事もせず、今でいう利息で生活をしたわけでもない。ある親切な人の伝手で校庭ほどある5000坪の土地に住まわせてもらった。家は、廃電車だったか廃トレーナーだったかを改造したものである。火起こし道具も作り、半分サバイバル生活だった。そして、その生活を望み楽しんでもいた。

卵を産むよりエサ代がかかるニワトリは殺処分される。そんなニワトリをたくさんもらって復活させ、あとは生えている野草を料理する。当時はサバイバル的な生き方をして、生を実感したかった。妻もそうだった。妻との出会いはサバイバルキャンプだったので、幸いなことに彼女も抵抗感はなかった。

飢えの不安をクリアする

 FIREをするヒントは生活コストを下げることにあると言われる。その通りだと思う。生活の基本が衣食住にあるとするならば、一番の問題は食だろう。

 衣は上下3000円もあれば揃う。住もうまくやれば、何とかなる場合が多い。空家は多いし、信頼関係が築ければ無料で良いから管理してほしい家主もいる(実際、私たちは、茅ケ崎を本拠としているが、他にも江の島、鎌倉、南足柄と計4つの拠点を住み分けている。借り賃も破格だ)。富士山麓に住んでいた時は廃電車か廃トレーラーを改造した家に住んでいたが、これは趣味である。その後、河口湖の湖畔で5万円で7DK、駐車場3台付の家に住んだ。結論から言って、そんなに部屋が多いのは無駄だった。周りをみても1-2万円の家賃で3ルームくらいついている家はあったし、住居費は実はそれほどかからないと思う。

 食の問題がクリアできれば恐怖心は大きく減る。仕事を辞めたら飢え死にするかもしれないと不安を抱く人も少なくない。

そこで考えたのが、食草との付き合い方を学ぶことだった。野生動物と同じように食草を学べば、生きられるだろうと思ったのだ。そして、食草の学びは、私たちの死の恐怖を和らげてくれた。最悪稼げなかったとしても死ぬことはないという実感を得られるだけで、前に進みやすくなる。

という訳で、生活を大きく変えたいと願う人には、野草を学び死の恐怖を和らげることをお勧めしたい。

もちろん、極論は承知である。野草をマスターしたからといってFIREできるわけでもなく、安らぎが得られるに過ぎないといえばそうだ。しかし、最悪飢え死にはないと思えるだけで、人は前進できるのも事実である。

最悪何とかなるという実感は、社会の大きな変化の中で安らぎを与えてくれる。ちょうど、海面が荒れ狂っていようと、海底近くの海は静まっているような感覚が訪れる。

さて、私は今日これから滝に打たれてくる。ついでに野草を採ってこよう。

執筆者 | 21/04/04 (日) | コラム


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