海外の投資詐欺に騙されて考えたこと

執筆者 | 21/04/27 (火) | コラム

去年の12月、私はインターネットを経由して、ある日本人投資家から、ZOOMミーティングでの通訳を依頼されました。ワイズリングというフィンランド拠点の投資会社のCEOのプレゼンの通訳とのことでした。FXや仮想通貨などについてはある程度知識がある(と思っていた)ので、引き受けることにしたのですが、これが大きな落とし穴でした。
通訳業務を遂行した時点で「不自然」な所を見抜くことができれば良かったのですが、その時私には海外の投資詐欺についての手口に関する知識はほとんどありませんでした。

そのCEOは、自分がフィンランド出身であり、元金全額保証を謳い、あたかも実際に運用を行っているかのようなプレゼンを行いました。
ワイズリングの手口は非常に巧妙で、CEOの氏名は偽名であり、実際にはロシア人の役者でした。ウェブサイトに掲載されていたヘルシンキにある会社の住所はレンタルオフィスの住所であり、そこには実は会社は存在しませんでした。
顧客を騙すために撮影されたオフィスの動画は、ウクライナのレンタルオフィスで撮影されていたということでした。その動画に映っていた数十人の従業員も役者であるということでした。
元金保証を謳うために依拠していたイギリスの保険会社も、詐欺を目的として設立された偽企業でした。その保険会社は、イギリスで保険業務を行うための企業として登録されていないため、小奇麗な保証書も全く機能しないことが判明しました。
ワイズリングはドバイなどでかなりの規模の国際会議を開催し、FacebookやInstagram、YouTube、TwitterなどのSNSで宣伝活動を行っていました。
そしてある日突然、ワイズリングのウェブサイトはアクセス不能になりました。
私と夫はまんまと騙されて、今年の1月時点での時価で約330万円相当の仮想通貨を失いました。
そして、その損失を取り戻したいと焦った私は、その他のHYIP(高利回りの投資案件)に手を出し、そのウェブサイトが飛び(アクセス不能になること)、損失を膨らませました。又、ワイズリングを騙る詐欺師たちが、様々な手口で私のような騙された人間が資金を取り戻したい心理を悪用して、非常に多様な手段で私たちのお金をさらに騙し取ろうとしました。
彼らはTelegramというSNSを用いてグループを作成したり、そのような被害者のグループに紛れ込み、カモを狙って個別に話しかけてくるのです。
やっとのことで私は過去の失敗への執着心をある程度克服することができてはいるのですが、SNSで知らない外国人から英語でメッセージが送られてくると、先ず詐欺師ではないかと疑うようになりました。
そんな折、ワイズリングに騙された友人の紹介で、香川県在住の大富豪を紹介されました。私がワイズリングの被害者の日本人グループを救おうと英語のサポートで尽力していたので、通訳や翻訳、できればトレーダーとしても働いて欲しいとのことでした。月に50~100万円支払っても良いと言われました。
私はしくじり投資家という肩書がぴったりなトレーダーなので、さすがに1回の建て玉が1億円(!?)というような取引を仕事をするのは荷が重いので、トレードのお仕事は丁重にお断りしました。でも、通訳や翻訳なら単価ベースでお引き受けすることにしました。
その大富豪は、「トレードに失敗した人は、必ず上手くなれる」と仰ってくださいました。
悩んだ挙句、私は、これまで仮想通貨はガチホ(買ったまま持っておくこと)していたのですが、これからは1~2週間の周期の波に乗るトレードを自分の裁量でしてみることを決意しました。
夫も、今回の痛手がきっかけで、お金について勉強するようになり、義母が保険屋に言われるがままに契約してしまっていた詐欺的な保険を解約させたり、個別株のトレードを始めたり、ドル建ての保険や個人年金を解約したり、まるで別人のようになりました。
二人で大失敗したものの、それ以上の被害を防ぐことができるようになり、その上、トレーダーとしても一歩成長することができました。
それでも大失敗を前向きに捉えることは非常に難しいですが、悔しさを胸に、先に進んでいこうと思います。

執筆者 | 21/04/27 (火) | コラム


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