マズロー心理学で分析する「中田敦彦」という人材

執筆者 | 21/04/29 (木) | コラム

2020年11月入会のWoojong Shinです。
HR聞くだけ勢ですが、いつも感じることを以下に記しました。
中田さんが、もっとコラムを読みたいとおっしゃっていたので、つい投稿しまったという流れです。よろしくお願いいたします。

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Youtube大学で大成功をおさめ、最近ではシンガポールへ家族で移住した中田敦彦氏。彼の行動・言動を見ていると、何度も想起されるのが、マズローの自己実現論だ。
マズローは、その著書『人間性の心理学』のなかで「自己実現的人間」の特性を調査研究し、その特徴を詳細に述べている。
中田氏は希少なタイプの芸能人/教育系youtuberとして認知され、また時には誤解を受けながらも、独自の存在感を放っている存在と言えるだろう。何が彼をその存在たらしめているのか。マズロー的切り口から彼を分析してみたい。

マズローは「自己実現的人間」の特性について15項目にわたって論じているが、以下、8項目に絞って考えてみたい。

 

①【現実をより有効に知覚し、それとより快適な関係を保つこと】
②【受容(自己、他者、自然)】
③【自発性、単純さ、自然さ】
④【超越性―プライバシーの欲求】
⑤【民主的性格構造】
⑥【哲学的で悪意のないユーモアのセンス】
⑦【創造性】
⑧【文化に組み込まれることに対する抵抗、文化の超越】

 

まず、①【現実をより有効に知覚し、それとより快適な関係を保つこと】

・美術や音楽、知的なこと、科学的なこと、政治・社会的問題などの中に隠れた混乱した実体を他の人々よりすばやく、しかも正確に読みとることができる。

・彼らは願望とか欲望、不安や恐怖、あるいは一般的に言われるところの楽観主義とか悲観主義に基づいて予見をすることがほとんどないからである。

これはYoutube大学における彼の解説や見解を聞いていれば明らかである。視聴者は中田氏ならではの着眼点を潜在的に欲していると言える。中田氏は膨大な情報量の中から、注目すべき実体を抽出できる。もしその着眼点に多くの偏見が含まれている場合、共感を得ることは難しいはずである。フラットに情報の核心を抽出できる客観性は彼の武器であろう。

 

②【受容(自己、他者、自然)】

・彼らは、人間性の脆さや罪深さや弱さ、邪悪さを、あたかも自然を自然のままに無条件に受け入れるのと同じ精神で受け入れることができる。

・現実をあるがままに見るのであり、自分たちがそうあってほしいというような姿としては見ないのである。

自己実現的人間は、防衛、保護色、見せかけの態度がないこと、他人のそのような不自然さを嫌うという。もったいぶった偽善的言葉づかい、狡猾、偽善などは彼らには全くみられないそうだ。人間の負の側面を素直に受け止める中田氏の姿勢は、受容の精神につながっていると言えるだろう。受容ができるということや、自分の弱みもあえてさらけ出すことができることが、人に安心感と共感を与えることにつながっているように見える。

 

③【自発性、単純さ、自然さ】

・行動がかなり自発的で、内面生活、思想、衝動などにおいては、さらにいっそう自発的である。

・因襲にこだわらず自発的で自然なのは、彼の衝動であり、思想であり、意識なのである。

人々がいつもの頑迷さや慣習で盲目になっているのに、いらいらすることもあるのが「自己実現的人間」とあるが、まさに中田氏はそういう意味でのフラストレーションを抱くことがしばしばあるようだ。因襲にこだわらず自発的で自然とは、まさに「前言撤回」の彼の姿勢に見て取れる。

 

④【超越性―プライバシーの欲求】

・彼らは独りでいても、傷ついたり不安になることはない。平均的な人々よりもはるかに孤独やプライバシーを好む。

社会生活において、この超越性はある種の面倒を引き起こすことがあるという。普通の人が、それを冷たさ、愛情の欠落、友情のなさ、さらには敵意と解釈してしまうこともあるという。自己実現的人間には自律性があり、自己決定、自己管理、自己統制など、外部からの制御から脱して自分自身が課した規範に従って行動するという意味で強いのである。
彼のエピソードには、人に合わせて行動するより、たとえ一人になろうとも、常に自分の行動を自分で決めて実行するという自律性の強さが見て取れる。

 

⑤【民主的性格構造】

・彼らは階級や教育程度、政治的信念、あるいは人種とか皮膚の色などに関係なく、彼らにふさわしい性格の人とはだれとも親しくできる。

彼らは自分自身エリートであり、友人としてもエリートを選ぶらしい。ただそれは、出生、人種、血統、名前、家柄、年齢、名声、権力などのエリートではなく、むしろ性格、能力、才能のエリートであるらしい。こういう人たちに対し、表面的にはなく、心から尊敬し、自分は謙虚でありうるという。また、中田氏には外国人や外国文化に関しても好奇心を持ち、変に構えることなく接する態度というのも見て取れる。

 

⑥【哲学的で悪意のないユーモアのセンス】

・彼らがユーモアとみなすものの特徴は、他の何よりも哲学に類似している。それは、一般に人間がばかげているとき、あるいは、宇宙における自分の位置を忘れているとき、また、実際にはちっぽけなくせに偉そうにふるまおうとするときに、それをからかうことが大部分であるからである。

これは、芸人中田敦彦の神髄であるがゆえ、言うまでもない。状況に本質的な、繰り返すことができないような、思慮深い哲学的なユーモアの方が多いというのが自己実現的人間の特徴らしい。

 

⑦【創造性】

・研究の対象とした人すべてに特徴的なことで、例外なく、一人ひとりがある独特の性質を持つ特殊な創造性、独創性、発明の才を示している。

彼らは抑制されたり締め付けられたり拘束されたりすることが比較的少ないそうだ。文化に組み込まれることが比較的少なく、より自発的で自然で人間的であるがゆえに結果として他の人にとって創造的であるということになるらしい。中田氏が環境に依存し続けることをあえて避けてきた過程で、創造性を獲得していったと言えるのかもしれない。

 

⑧【文化に組み込まれることに対する抵抗、文化の超越】

・彼らは文化に組み込まれることに抵抗し、彼らがどっぷりとつかっている文化からのある種の内面的な超越を保持している。

・彼らはそれ(文化)を比較考察し、分析試験し、味わって、そのよし悪しを、自分自身で決定をするのである。

・見慣れたものや慣習的なものを必要とする度合いが平均よりも少ない。

中田氏は、最近家族でシンガポールに移住したが、移住自体それほどたいしたことではない、と力説しているが、これもこの特性から説明できる気がする。

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以上、事実と違う部分やこじつけを感じる部分もあるだろう。しかし、彼が成し遂げたブレークスルーを甘く見てはいけない。なぜなら、彼の持つメンタリティーというものが、現在の日本において実は希少かつ価値があると思うからだ。

彼自身、驚異的な知力の持ち主であることは間違いないが、それだけでは説明できない独特の特性というものが、彼を希少な存在たらしめているように思う。

「自己実現的人間」は非常に少ない割合でしか存在しないらしい。ゆえに容易には理解しがたい特性ともいえるかもしれない。だからこそ面白い存在である。

 

執筆者 | 21/04/29 (木) | コラム


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