古畑任三郎は和製刑事コロンボだよってお話

執筆者 | 21/05/25 (火) | コラム

 こんにちは!ホームルームで田村正和さんと古畑任三郎について取り上げられましたね。そんなわけで、今回は古畑任三郎と刑事コロンボについて書きたいと思います。

刑事コロンボとは

 アメリカの刑事ドラマ。1968年から1978年までの第1シリーズと、1989年から2003年まで放映された第2シリーズがあります。

 このドラマの魅力はなんといっても、主演のピーター・フォーク演じるコロンボ。ロス市警の警部補(lieutenantなのですが、片目は義眼で、ヨレヨレのトレンチコートにボロッボロの車で登場。しかも、犯人を追い詰めるためにわざと下手に出てから犯人の懐に入り、去り際に「just one more thing(もうひとつだけ)」と言って嫌な質問をぶつけるという、かなりたちの悪い手法をとります。スーパーマンやアベンジャーズに代表されるようなアメリカンヒーローとは真逆のいでたちです。

 それでも、このドラマは大人気になりました。理由を察するに、コロンボが捕まえていく犯人が、当時のアメリカの大多数の人にとっての「敵」だったからではないかと思います。初回の犯人は男性医師、第2回は女性弁護士、他にも退役軍人や大女優など、実力が如何程のものかは分からないが、なぜか大金持ちで鼻持ちならない性格の連中が犯人なのです。彼らの企んだ完全犯罪を、小汚い警部補が華麗にあばく。その様が痛快だったのではないでしょうか。放映回数が進むにつれて、犯人のパーソナリテイも変わるので、このドラマを見ると当時のアメリカ人が何に対してフラストレーションを抱いていたのかがわかる気がします。

 人気の理由は他にもあります。コロンボが事あるごとに奥さんの話をするのです。口癖は「my wife says(うちのカミさんがね)」。垣間見える愛妻家ぶりもステキなのです。

 個人的な刑事コロンボの最高傑作は「忘れられたスター」。往年の大女優による殺人事件ですが、コロンボがある事情を知って犯人を見逃します。いつもはねちねちと犯人を追い詰めるコロンボが、人情味を見せるとてもいい回です。犯人役は、ヒッチコックの「サイコ」で知られたジャネット・リー。彼女の名演技も冴え渡ります。

コロンボと古畑の共通点

 ミステリーは、大別すると2種類になります。本格ものと倒叙ものです。本格ものは、読者(視聴者)には犯人がわからず探偵役とともに推理するものであるのに対し、倒叙ものは読者(視聴者)には犯人が分かっていて探偵役が犯人を追い詰める様を楽しむものです。

 コロンボと古畑は、いずれも倒叙ものです。しかも、犯人役(ゲストスター)が超大物という点でも共通します。また、犯人の追い詰めかたもそっくりで、まずは犯人を褒めそやしたりなだめたりして懐に入ってから、去り際に犯人にとって都合の悪い質問をぶつけるのです。

 その他にも、階級が警部補であることや女性犯人に優しいなど、共通点は多岐に渡ります。きっと、三谷幸喜がコロンボを好きなんでしょうね。

決定的な違い

 さて、ドラマ古畑任三郎は大人気を博しましたが、コロンボをベースにしたから人気になったわけではないでしょう。

 古畑が人気な理由はなんといっても、主演の田村正和さん。コロンボと似てるのは猫背なところぐらいなもので、あとはこれでもかというぐらいスターの輝きに満ちています。常に折り目のついたスーツを清潔に着こなし、愛用の自転車はセリーヌ。癖のある喋りと名(迷)推理。そして圧倒的イケメン。これだけでも面白そうです。

 そして、忘れてはならないのが今泉くんですよね!三谷幸喜の多くの作品に起用される超実力派の俳優、西村まさ彦さん演じる相棒です。コロンボが単独行動なのに対して、古畑は基本的に今泉くんと行動します。相棒と言っても、ワトソンやヘイスティングス大尉(アガサ・クリスティー原作・ポアロシリーズの相棒です)のような活躍はありません。

 皆さんご存知のようにこの今泉くん、超絶ポンコツのトラブルメーカーなのです。爆弾解体を混乱させるわ、犯人に仕立て上げられるわで、古畑から何度おでこを叩かれたことやら。そのうえ、同僚の西園寺くんと古畑が一緒に行動すると嫉妬して、「ふるはたさぁぁぁぁぁん!」としつこく付き纏うという異常に粘着質な性格の持ち主。ただ、ごく稀に事件解決のヒントになるようなことも言うので、古畑から「だから手放せない」と言われています。

 探偵役の頭脳を際立たせるために常人の相棒を置くことはミステリーの定石ですが、いくらなんでも今泉くんは酷すぎる。そのバカバカしさと愛くるしいキャラクターが視聴者にうけたのでしょうね。

 田村さんと西村さん。お二人の演技がドラマを支えたことは間違い無いでしょう。

最後に

 ミステリーマニアの私としては、正直古畑のトリックはかなりお粗末です(焼蛤と焼酎は特に酷かった)。それでも面白いと感じるのは、振り切って可笑しさにフォーカスしているからでしょう。セリーヌの自転車で現場に来る警部補はいないし、いかに巡査であってもあそこまでポンコツでは警察にはいられません。多くの場合ファクトチェックがうるさいミステリー(刑事ドラマ)において、全力で荒唐無稽な描写をすることで、「こんなことあるわけないよ。でも、こんな人がいたらステキだなぁ。」と、見る側に思わせたのでしょうね。

 さて、長々と書きましたが最後にお勧め映画をひとつ。監督・脚本:伊丹十三、企画協力:三谷幸喜の「マルタイの女」。とある事件現場を目撃しマルタイ(警察の護衛対象者)となった女性が、犯罪組織に追われながらも裁判での証言台に立つというストーリー。伊丹十三監督の遺作でありながら、三谷幸喜が考えたであろうギャグシーンも冴え渡ります。もちろん西村さんも出てます。刑事役で(笑)

 ではまた(*´꒳`*)

執筆者 | 21/05/25 (火) | コラム


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