6/4のホームルームにて。
学校の先生(あっちゃん)から見て「印象に残る生徒」像の話がありました。
それを受け、PROGRESSという終わらない学園で皆が(生徒)になり、たまに配信で(先生)にもなれる、この特殊な空間で、皆が先生になった場合のことを想像してほしいと思い、書いてみました。
私は今、「初心者向け」の洋裁教室を経営しているのですが、初心者向けの教室って、実は最も先生の技量を問われるんじゃないかなぁと思うのです。
あっちゃんが、PROGRESSビギナーに対する姿勢を日々模索している時の心境をホームルームで度々吐露しているのを聞いて毎回、首がもげそうなくらい頷いています。
例えば、あなたが料理教室の先生だったとして。
初対面の生徒さんに
「私、料理をほとんどしないのですが、茶碗蒸しが作りたいんです。」
と言われた場合、まず何から始めてもらうのが良いでしょうか。
・・・・
答えに詰まっている間にも、相手は続けます。
「レシピとか見ずに冷蔵庫にある材料でチャチャっと作れるようになりたいんです。」
さらに相手は続けます。
「因みに茶碗蒸しを最後に食べたのはずいぶん前だなぁ・・・祖母が作ってくれたあの味が忘れられないんです。」
そして、必ずこの質問を先生に投げかけます。
「どのくらい教室に通えば、私は私の思う理想の茶わん蒸しを作れるようになりますか?」
はい。
きました。
色々アウトです。
はい。
最も先生が困るパターンです。
はい。
初心者の人は、概ねこんな感じです。
あ、全然私の仕事と絡まって居りせんので、同様のパターンをどうぞ。
「私、裁縫はほとんどしたこと無いのですが、コートが作りたいんです。
本とか見ずに好きな生地を買って来て、
既製品が合わない私の体型でも1番似合う形で作れるようになりたいんです。
あ、最後に因みにミシンに触れたのは高校生の時だったかな。」
はい。
再びきました。
色々アウトです。
はい。
いろんな角度からコツコツたたいて突破口を見つけてゆきましょう。
こんな場合、ウチではまず
「まー、、、、まずは玉子焼きを作りましょうか」
と言います。
すると、反応は二分されます。
①「はい!玉子焼き作りたいです!実は毎回、目分量で作っていて形もあんまり良くないんです。」
②「いや、私は茶碗蒸しが作りたくてきたんです。玉子焼きはいいんです。」
↑これ、まんま洋裁の話になるんですね。
まず、茶碗蒸しを作るには
・どんな材料をどのくらい使うか?
・どんな道具をどのように使うか?
・どんな塩梅で何をすれば良いのか?
を知っている必要があります。
「茶碗蒸し」を「作りたい服」に置き換えれば、その人の現在地がわかるのではないかと思います。
是非、「作りたい服」を「あなたが伝えたい事」に置き換えて考えてみてください。
玉子、上手く割れますか?
→針に糸を上手く通せますか?
玉子焼き、上手く焼けますか?
→スカート上手く作れますか?
茶碗蒸しは玉子からできている事を知っていますか?
→コートはウールで作る事を知っていますか?
今まで食べた美味しい茶碗蒸しの味を覚えていますか?
→1番似合うコートに出会った事はありますか?
どのくらいの分量で、どのくらいの温度で、何分蒸したらどのくらいの硬さになるか?
わかりますか?
→ どのくらいの工程で、いくつのパーツで、何処をどうすれば自分にとって似合う形になるかわかりますか?
蒸し器の使い方はわかりますか?
→ミシンの使い方はわかりますか?
エビの背腸は取りましたか?
→地直しはしましたか?
などなど。
それを習いに来て欲しいんです。
初心者クラスでは、まずは玉子焼きを失敗せずに「好きな味」に仕上げられるようになる事が目標です。
少々カタチが悪くても味がイマイチでも毎日のお弁当に玉子焼きを焼いている人は必ず上手くなるし、オムレツや、カニ玉も上手に作れるようになります。
そうして毎日少しずつ、玉子に何をすればどんな風に変化するか?
を体に刻み込んでゆくんです。
#それが技術です
「茶碗蒸し」とは玉子の変化に対する知識をはじめ
和食技術の集大成であり、「美味しい」とは食の経験の集大成です。
「コート」とは洋裁技術の結晶であり
「似合う」かどうかは
・洋服と
・自分と
・感性と
・世の中と
・人
に対してどのくらい向き合ったか?
それが判断材料になります。
何回作ればそれが出来るようになる、とか、そう言う話じゃ無いんです。
理想のシルエットの服を作れるようになるまでの道のりは、それはそれは地味で地味で地味で、つまらない鍛錬です。
ええ、そうですとも。
だから私は何度も挫折したし、何度もやめたし、いつもミシンが嫌いだった。
でも、だからこそ、地味でつまらない鍛錬を楽しむ為に必要な事を知っています。
なぜ、挫折したか?
あの時どうすれば良かったのか?
それを知っています。
今、私が「先生」をやれているのは、地味でつまらない鍛錬に何度も挫折したからで、
それが何のために必要かを
「こんな風に伝えてくれる先生がいたら」
という理想がはっきり有るからです。
地味で地味でつまらないと感じる鍛錬の時間が
「豊かな文化を育む時間」と感じられるように
1人の生徒さんに対して毎回必ずこの工程をやっているけれど、なかなか伝わり辛い。
残念ながら
「いや、私は茶碗蒸しが作りたくてきたんです。玉子焼きはいいんです。」
と言われる事も、時々あります。
Progressには沢山のおいしそうな茶わん蒸しが並んでいて、実際に味わうことが出来ます。
その中で、自分の好きな味の茶わん蒸しを見つけて、まずは玉子焼きから始めてみる。
うまく玉子焼きが焼けるようになってきたら、つぎはイイ感じのオムレツが焼けるようになろうとしてみる。
今私は、progressでイイ感じのオムレツが見えてきている気がしています。
あなたもまずは、うまく玉子を割る練習から始めてみてはいかがですか??
ではまた。