こんにちは!先日のホームルームで、トラブルシューティングのお話がありましたね。トラブルの大きな原因のひとつとして、クレームがあると思います。
そんなわけで、今回は筆者の経験を元にクレーム対応のいろはをお伝えしたいと思います。
あくまで、経験則に基づくものなので、異論・反論等はあるかと思いますが、そういったご意見がある場合には個人的にお聞かせください。
どんな職種にも必ず現れる
筆者は、法律事務所や社労士法人に勤務経験があるのですが、どの職種においても必ずトラブルを持ち込むのがクレーマーでした。ここでいう、クレーマーとは、こちらに落ち度はないにもかかわらず、全く筋の通らない主張を繰り広げて憤慨しながら訪ねてきたり、電話してきたりする人たちのこと。あらかじめ伝えていた内容について「説明がなかった」と罵ったり、法律上もらえない給付金について「私の生活はどうしてくれるんですか!?」と怒号を浴びせたりする。そういう人たちは珍しくありません。
どのように対応すべきでしょうか?色々と対応策はあるかと思いますが、まずは経験則上、絶対にダメな対応からご紹介します。
やってはいけないこと・言ってはいけないこと①
書くまでもありませんが、まずクレームに対して逆上・逆切れは論外です。これ、そんなことする人間いないだろう、と思われるかも知れませんが、自身の経験を語ると、相手がお客様ではないときにありがちなのです。例えば、役所の担当者から電話がかかってきたとき語気が強くなる人は少なくありません。中小企業の場合、ハローワークや年金機構などとはやり取りがあると思いますが、彼らは往々にして、「お役所仕事」「お役所対応」。とても高圧的で不愉快な物の言い方をする人は少なからずいます。それでも、逆切れはダメです。お客ほど大事にしなくても良い、という価値判断が根底にあるのだと思いますが、絶対にダメです。立場を悪くするだけですよね。
やってはいけないこと・言ってはいけないこと②
理路整然と相手の間違いを指摘する。ダメに決まってます。クレーマーは大抵頭に血が上り、冷静さを欠いています。そこへ、「法律ではこのようになってます」だの「行政の判断はこうです」だの言ったところで、火に油を注ぐだけです。まして、「あなたのお話は筋が通りません」とか言った日には地獄です。こういった対応をしたために、危険な人物から1時間にわたり怒鳴り散らされた社員を見たことがあります。
どう考えても相手の主張が間違っていたとしても、間違いの指摘はNGです。
やってはいけないこと・言ってはいけないこと③
安易な謝罪は禁物です。こちらに非がないことが前提ですが、クレームの内容のいかんにかかわらず相手の溜飲を下げようとして安易に謝罪すると、こちらがミスをしたと認めることになります。これ、法律事務所や医療法人では命とりになる場合があります。真摯な謝罪が必要なのは、こちらに非がある場合のみです。
法律や医療じゃないなら、謝った方が相手は納得するんだからそれでいいんじゃない?あえて、こちらが折れるのも手段のひとつでは?と思う方もいるかも知れませんが、それも間違いです。
「すみません。説明不足でした。」「ごめんなさい。わかりづらかったですよね。」こちらに落ち度がない場合に、謝罪をしようとしても出てくる言葉はこの程度のものです。そして、言葉の調子は必ず上滑りしています。「この度は大変申し訳ございませんでした。」と言った場合と比べて、明らかに柔らかい語調になります。これは、危険です。
確かに、お客様側の担当者と世間話で盛り上れるくらいの信頼関係があったうえでのこの言葉・語調ならば功を奏することは有るでしょう。ただ、多くの場合、問題を孕んでいます。
例えば、お客様側の担当者が若い女性で、こちら側の担当者が40代〜50代くらいの女性だったとします。40代から「ごめんなさ〜い。わかりづらかったですよね〜。」と、猫撫で声で言われた20代女性の気持ち・・・。ただでさえクレームをつけるメンタルの持ち主なのですから、子供扱いされた、馬鹿にされた、と思わないわけがないのです。こういう対応をしたために、担当者を代えてくれというさらなるクレームを生んだ同僚もいました。
間違いを指摘してもダメ。謝罪してもダメ。では、どうすればいいのでしょうか。
まずやるべきこと
相手の話を真剣に聞く。progress用語でいうところのパワー傾聴ですよね。これは実践できている方も多いのでは、と思います。
いかにクレーマーといえど、人間15分も20分も怒り続けるなんていう体力は、そうそう持ち合わせていません。クレーマーの多くが、カッと頭に血が上ってよく考えもせずに電話をしてしまった人たちです。話をしながらしばらく時間が経つと、少し冷静になってこちらの言葉を聞いてくれるようになります。このタイミングで、「おっしゃることはよくわかります。」など、相手の感情に寄り添う言葉を発するのも大事です。憤慨している人間にとって、冷静すぎる相手はさらなる不快を生みます。頭と感情は冷静であっても、言葉の上ではクレーマーと同じ熱量を持つことが大事です。
ただ、この対応は十分ではありません。なぜなら、相手に長い時間話させることが前提なので、クレーム対応にそれなりの時間を割かれることになるからです。また、クレームをつけることに慣れた人は、これがマニュアル回答であると瞬時に見抜きます。
では、どうするのが最も有効な解決手段か。それをお話する前に、クレーマーの正体について書きたいと思います。
クレーマーの正体
クレームの内容とクレーマーの主張を精査してみてわかることは、「クレーマーとは漠然とした不安を投げつけてくる人」だということです。そして、その不安とは、「何らかの自分に関わることの内容やシステムが理解できないこと」、平たく言えば、「わからないこと」です。
(クレームが趣味の人もいますが、それはただのかまってちゃんであることが多いので、お話を聞いてあげて受け流しましょう。)
『製品の使い方がわからない』、『法律がわからない』、『保険証がどこに行ったか分からない』。分からないと思ったとき、クレーマーの中で不安は拡大しそれが怒りや他責に繋がります。『私がわからないのは、担当者の説明が悪いからだ』。『給付金ももらえないのに、どうやって生活しろというんだ。』この怒りと他責が増幅した結果ぶつけられる言葉が「説明がなかった。」や、「どうしてくれるんですか!?」になるわけです。
クレームの正体が、わからないことから訪れる漠然とした不安だとわかれば、こちらの対応も決まってきます。
解決策その1
クレーマーの不安を取り除いて差し上げる。これが、クレーム対応の要です。
例えば、「どうして私は出産手当金を受け取れないんですか!?私の生活はどうなるんですか!?」というクレームが女性から来たとします。このときにやりがちな回答が、「あなたが社会保険に加入していないからです。」なのですが、それを始めに言ったところで、「そんなこと言われても知らねぇよ。もらえないことは分かってんだよ。」が相手の感情です。
この場合、女性の不安は「生活が成り立たないこと」なわけですから、生活が成り立つような策を提案すること、一緒に考えることが大事です。「配偶者の方が社会保険に加入していれば、出産育児一時金を受け取ることができることもありますよ。」「雇用保険に加入していれば、産後は給付金が受けとれることがありますよ。」などの解決策を、わかりやすく説明します。そうすると、相手はもらえるお金があるとわかり、多少なりとも不安が解消されるわけです。その結果落ち着いて、クレームは止むのです。
お気づきの方も多いと思いますが、上記の対応をしたところで、パワー傾聴による時間のロス問題は解決していません。そこで、一瞬でクレーマーの激怒の熱を下げる言葉をお伝えします。
解決策その2
「ご指摘いただきまして、まことにありがとうございます。」最初にこの言葉を伝えましょう。「お電話(ご連絡)いただきまして、ありがとうございます。」というマニュアル回答ではなく、相手の指摘(クレーム内容)に対してお礼を述べることが大事です。実際、クレームが更なる良質なサービス・対応を生むきっかけとなり、結果クレームが減ることもあるので、この言葉は本質です。
サービスそれ自体もそうですが、クレームも相手の予測を上回る対応をしなければ良質とは言い難いです。クレーマーは、謝罪や説明を受けるぐらいには思っていますが、まさかお礼を言われるとは思っていないので、驚愕して激怒の熱が冷めるのです。さらに、クレームを待っているかの如く、言葉を伝えることも有効です。
まとめると、お礼→共感→解決策→クレーム待ち、の順でお伝えすることになります。
先ほどの例で言うと、「出産手当金を受け取れないということですね。ご確認いただきありがとうございます。」「社会保険の関係ですからね。それは、お困りになりますよね。」「他に受け取れる給付金がございますよ。」「他にもお困りのことがありましたら、いつでもご相談下さい。」の流れになります。
先ほど、クレーマーは頭に血が上っていると書きましたが、実は、多くのクレーマーが、自分の発言は相手にとって不快である、これはきっとクレームに違いない、と頭のどこかで分かっているのです。クレームではなく、相談だと受け止めてくれた。相手にとっては不快だろうに、その不快に対して真摯に対応してくれた。クレーマーからこのように評価されたとき、相手の信頼を勝ち取ることができます。
結論
色々と書きましたが、タイトル通り、これは対応のいろは、つまり初級編です。大前提として「お話が通じる相手」を想定しています。クレーマーにも黒帯がいて、会社なり組織のもっとも権力のある人物としか話したくない人(自分はそれに値する人間だと思っている人)はいますし、毎日別件で電話をしてくる人もいます。個人的な経験では、重度の精神疾患の方からのクレーム対応はかなり難儀でした。
また、上述の方法が功を奏したとしても、やり過ぎればクレーマーから電話対応のご指名が入ったり、何の用事もないのに電話をかけてきたりするようになるなど、悪い面も露呈します。さじ加減が一番大事です。それに、大前提として、法律であれば法の趣旨や適用条件など、製品であればその使用方法や類似品などの基礎知識がなければこの方法は使えません。
最後の最後に不安を煽るようなことを書いてしまいましたが、多くの方はお話が通じるので大丈夫です!ブチギレ怒髪天のクレームで始まった電話が、最後には「ありがとう」と言ってもらえることも多いです。
自分自身も何か問いかける前に、冷静に不安の正体を分析したいと思います。ツイートやコメントも然り。ですね!対応するのは大変なのですから。
ではまた(*´꒳`*)