こんにちは!先日、東京国立博物館平成館で開催中の鳥獣戯画展に行ったのですが、そこでは鳥獣戯画の他にも気になるものがたくさんありました!また、筆者はいつも「YouTube大学でいつか、動物・植物・昆虫についても取り扱って欲しいなあ(再生回数は期待できないけれど笑)」と思っています。
そんなわけで(?)、今回は鳥獣戯画展で展示されていた「子犬」から着想していろんなことを書きたいと思います。
明恵上人の子犬と巻き尾
鳥獣戯画が納められていることで有名な高山寺。その高山寺の歴史のなかでもっとも愛されているのが、明恵上人です。今回の鳥獣戯画展でも、彼の遺物が多く展示されていました。その中でも特にご紹介したいのが、「子犬」像です。(画像は鳥獣戯画展公式ツイッターより引用)
首を傾げてつぶらな瞳でこちらを見ている。なんとも愛くるしい姿ですね。瞳は、玉眼(水晶の板に裏側から着彩し、像の内側からはめ込む技法)という通常は仏像に使われる技法で造られています。愛おしい生き物を生きた姿に似せて造ろう、と強いこだわりをもって造られたことが伺えます。明恵上人の個人的な所持品だったと考えられているようで、とても犬(生き物)を可愛がっていた上人の人柄が想像されますね。
さて、筆者が注目したのは犬の尾の部分です。緩やかにくるりと巻いているのですが、これは愛犬家の方々の間では「巻き尾」と言って愛でられるのだそうですね。芝犬や秋田犬などを見てみるとわかるように、日本犬の尾は巻いています。狼の尾がまっすぐなのに対して、犬に特徴的な部分といえます。家畜化される過程で筋力が低下し巻いたものと考えられているのですが、この尾がたまらなくかわいいですよね!
これより降(くだ)った時代に作られた犬像で有名なものといえば、三代将軍徳川家光の湯たんぽでしょうか。正直、あまり可愛い姿とは思いませんが、やはり子犬の姿で尾はゆるく巻いています。
原始の犬の姿とは
では、いつから尾が巻いたのでしょうか。原始の犬とはどんな姿だったのでしょうか。
ご存知のように、犬は狼が家畜化されたものです。狼と犬の分岐点、すなわち犬の起源は解明されていないようですが、原始の犬の姿について考え始めたときに思い出されるのが、MIHO MUSEUMに展示されている埴輪の犬です。(画像は公式HPより引用)
首輪に施されているのは、土鈴(どれい:粘土でできた鈴)でしょうか。豪華な首輪をつけてもらって、親しげな眼差しで振り返っています。モデルになった犬は、きっととても可愛がられていたんですね。そして、やはり巻き尾です!!(圧倒的にかわいいです!!)古墳時代ですから、すくなくとも7世紀あたりには日本でも犬は完全に家畜化し、尾が巻いていたと考えられます。
この巻き尾に加え注目されるのが、犬の耳です。ピンと立っていて狼のそれによく似ています。他にも口元が尖っていることや、全体のフォルムなど、狼との共通点が多いです。原始の犬の姿とは、現在の日本犬の姿とほとんど変わりないのではないでしょうか。
古代エジプトの犬
上述したのは、あくまで日本における犬の姿、と言うお話です。世界ではどうだったのでしょう。
犬の家畜化で有名な古代文明といえば、YouTube大学でも扱われた古代エジプト文明ですよね。古代エジプト人が彫った犬がメトロポリタン美術館にあるのですが、こちらは埴輪とは随分と姿が異なります。(画像は公式HPより引用)
残念ながら尾は破損しているようで確認ができませんが、耳は垂れており手足は長くてスマート。日本犬というよりもラブラドール・レトリーバーなどの洋犬に近いように見えます。この全体のフォルムから想像するに、尾は巻き尾ではなく、ピンと伸びていたと考えるのが自然な気がします(ちなみに、この犬、胸の下のレバーで口が開閉する細工が施してあり、口の中に歯と赤い舌が見られる、と説明文に書かれています。古代エジプト人の技術力に脱帽です)。
エジプトでは、日本などの東アジアとは異なる家畜化の途を辿ったと考えるのが良さそうですね。
文章量の関係で今回はご紹介しませんが、他にもアステカ文明やマヤ文明など、世界中のあらゆる地域で犬にまつわる遺跡があるので、それらを調べてみるのも楽しいと思います!
余談
上記で紹介したMIHO MUSEUMですが、こちらのレストランとカフェは、かねてより無農薬・無肥料にこだわったお食事とお飲みものを提供しています。もちろん、化学調味料などは不使用です。「食べてはいけないもの」の授業とも通じるところがありますね!
見るものや着るものだけでなく、普段の生活の食の中にも美や尊敬を取り入れようという姿勢が好きです。自分もそうありたいものですね。
ではまた(*´꒳`*)
*参考文献*
「特別展 国宝鳥獣戯画のすべて」(鳥獣戯画展公式図録)