スクリプト立候補!読んだ気になる(*´꒳`*)「ジャングル大帝」〜手塚治虫の未来予想〜

執筆者 | 21/06/21 (月) | コラム

 今回は、リクエストいただきました超考察系の手塚治虫先生作品です!

 スクリプト立候補も兼ねちゃおう!ということで、読むと大体8分におさまるように書いています。もし、「声優をやりたいけれど、スクリプトができない、間に合わない」という方がいらっしゃいましたら、progress theaterへのアップロードの際の原稿としてご自由にお使いください。AとBの対話形式とし、声優さんの技量がわかるように言葉遣いなどに大きな特徴を持たせず、表現の余白の多い書き方をしています!

 では本題に入ります!

 

 「読んだ気になる!手塚治虫「ジャングル大帝」編」

A  「手塚治虫の「ジャングル大帝」。名前を聞いたことがある人は多いんじゃないかな?でも、ストーリーを説明できる人って意外と少ないよね。」

B 「たしかに!『白いライオンのやつ〜』、とか『ジャングルで動物がしゃべるやつ〜』とか、『ライオンキングがほにゃらら〜』になってしまうよね。」

A 「そこで、今回は漫画版「ジャングル大帝」のストーリーと、そこに込められた手塚先生の未来予想についてお話するよ!絶対にビックリするから!最後まで聞いてね!」

A 「アフリカのジャングルにパンジャという名の白いライオンが住んでいたところから物語は始まるよ。パンジャは、ジャングルの王で、動物たちは皆彼を尊敬し従うけれど、原住民は白い毛皮ほしさに命を狙っていたんだ。そこへ、白人の男ハム・エッグが現れる。彼は原住民の長がつけているダイヤのような宝石を渡すことを交換条件に、パンジャをライフルで殺したうえ、パンジャの妻ライザを捕らえてしまう。アフリカから出向した船の中でライザはパンジャの子供を産み、レオと名付けた。生まれたばかりのレオは、アフリカへ帰ることを決意し、ひとり海へ飛び込むんだ。その後、ライザを乗せた船は沈没。レオはアフリカ目指して泳いだけれど、辿り着いたのはアデンという先進国だったんだ。」

B 「急に王者が死んでるし。主人公、最初から天涯孤独なんだね。」

A 「アデンで、日本人のケン一とヒゲオヤジに拾われたレオは、ハム・エッグの娘メリーや、勉強ばかりしているアルベルトらと共に生活し、人間の文明を学ぶんだ。その後、ハム・エッグがアフリカ原住民から手に入れた石が、月光石(ムーン・ライトストーン)という地質学上大変貴重な品であることがわかり、探検隊のプラス教授とマイナス博士、資金援助をしたヒゲオヤジに加えケン一とレオ、ハム・エッグとメリーはアフリカへ行くことになるんだ。」

B 「レオは故郷へ帰るんだね。」

A  「アフリカで彼らを待っていたのは、ランプという男だった。彼は、ハム・エッグが元ナチス兵であることをネタに彼を脅迫し、探検隊の資金を奪おうと画策するんだ。その計画実行中に、ハム・エッグが銃を撃ったことで原住民が決起し、ケン一らは追われる身となりちりじりに逃げ出す。その最中、ハム・エッグは命を落とし、メリーが原住民に捕らえられてしまうんだ。」

B  「決起?」

A  「白人を心から信頼していたわけではない原住民は、謎の恐ろしい兵器を使ったことで逆に攻撃を仕掛けたんだ。       ケン一とレオは共に逃げ延び、レオはジャングルの動物たちから王子として迎えられる。そこで、レオは動物たちに人間の文明と言葉を教え動物どおしで争わなくていいような統治を図るんだ。その一方で、コンガと名乗る女王が原住民のジャングラ族を率い、暴力と密告への報酬で動物たちを支配していた。コンガは、土地の明け渡しを要求して、ケン一とレオを襲うんだ。動物たちはレオ一派とコンガ一派に分かれ、全面対決となってしまう。コンガの正体はメリーだった。ケン一はメリーとジャングラ族を説き伏せ、メリーと共に日本へ帰ったんだ。」

B  「めでたし、めでたし?」

A  「まだまだ続くよ。

 レオは、メスライオンのライヤと結婚し、ルネという男の子とルッキオという女の子を授かるんだ。ルネは、人間の文明に憧れを抱き家出をしてしまう。たどり着いた船でアダムと名乗る男に拾われるんだけれど、彼の正体はA国とB国の二重スパイだったんだ。アダムは、ルネをサーカスの見せ物として扱い、暴力をふるい続けるんだ。」

B  「なんてひどいやつ。」

A  「ルネがいなくなったことを嘆くライヤは、死斑病という病に犯され命を落としまう。続いて、ルッキオも死斑病にかかってしまうんだ。そのころ、月光石が採れる幻の山、ムーン山へ向かうA国の探検隊(ヒゲオヤジ、マイナス博士、アルベルトら)とレオが遭遇するんだ。ヒゲオヤジたちは、血清を打ちルッキオを救って、そのお礼として、レオはムーン山へ同行することになるんだ。」

B  「月光石を求めて探検するわけだね。」

A  「ムーン山にはA国の敵国であるB国の探検隊もいた。両国とも自国の戦争の資金調達のために月光石を狙っていたんだ。両陣営は睨みあったり協力したりしながらついに頂上にたどり着き月光石を手に入れる。けれど、レオは失明し、さらには下山中、大自然の力の前に多くの人命が失われ、残ったのはヒゲオヤジとレオだけになってしまったんだ。そして、ヒゲオヤジが山中で倒れたとき、レオはヒゲオヤジに自分の肉を食べ毛皮を着て山を降りるように言うんだ。」

B  「自己犠牲・・・。」

A  「レオの毛皮に包まれて下山したヒゲオヤジの前に現れたのは、ルネだった。ルネは、人間の恐ろしさを知り、サーカスから逃げ出して戻ってきたんだ。ヒゲオヤジはルネに語りかける。

『帰ったらみんなにおとうさんはどんなにりっぱだったかを話してやろうな』

 レオの姿をした入道雲のもと、ヒゲオヤジとルネは歩き出す。

 

 泣く泣く省略した部分も多いけれど、ざああああっとまとめるとこんな感じだよ!」

B  「可愛い動物ファンタジーじゃなかった・・・。」

A  「そうなんだ。このマンガ、動物が言葉を話し、歌を歌い、畑を耕し、城を建てたりするうえに、マンモスまで登場して、かなりファンタジックに描かれているけれど、荒唐無稽の子供向け漫画と侮るなかれ。ジャングルの動物たちと原住民の描写は、明らかに人間社会へのメタファーなんだ。」

B  「どういうこと?」

A  「アフリカの大地に住まう動物や原住民ははまだ文明を持たず、そこへ白人の人間が現れることで文明を手に入れる、という筋書きなんだけど、これは、実際にアフリカの開発途上国へ先進国が文明を持ち込んだのと同じ構造になっているんだよ。その上で、文明を受け入れる者とそうでない者に分かれ原住民の間に紛争がおこるというストーリーは、その後のアフリカでの数々の紛争を想起させるんだ。」

B 「アフリカの紛争はなんとなく聞いたことがあるけれど。」

A  「例えば、1994年に100万人以上が犠牲になったルワンダのジェノサイドではツチ族とフツ族が争ったけれど、これは、フランスによる長年の植民地支配が招いたものなんだ。コンガ=メリーという白人が文明をもたらし、レオ対コンガに分かれて戦ったのと同じ構造といえるよね。

 それに、ハム・エッグは原住民の持つダイヤのような宝石ほしさに拳銃でパンジャを殺したけれど、1991年から内戦が始まったシエラレオネでは、ダイヤモンドを売ることで武器を調達していたんだ。」

B  「筋書きの多くが、実際にアフリカ諸国が辿った経緯と酷似しているんだね。」

A 「このマンガが描かれたのは、昭和25年。つまり1950年。一般的にアフリカの年と言われるアフリカ諸国の独立は1960年だから、手塚先生はすくなくとも10年前にはアフリカの独立にまつわる紛争を予期していたのかもしれないね。」

B  「手塚先生の予知能力は有名だけど、ここにもそれがあったんだね。」

A  「驚くのは早いよ。実は、アルベルトというキャラクターが人造肉の研究と開発をしているんだ。」

B  「人造肉?代替肉のこと!?」

A  「最近ようやく認知されてきた大豆ミートなどの代替肉の構想をすでに持っていたんだね。もう一度言うけれど、このマンガが最初に描かれたのは1950年〜1959年。戦後5年だよ。」

B  「みんなが『今日の晩ご飯どうする?』とか言っていたころに、手塚先生ははるか75年先のお夕飯がわかっていたんだね。」

A  「アルベルトのセリフに、『これが完成すれば動物たちの共食いはいっさいなくなります』というのがあるんだ。人間だって動物にかわりないよ。人間が自然界から連れてきた動物を家畜として飼い慣らしてその肉を食べることに、ある種の抵抗を感じていたのかもしれないね。」

B  「結局人間が一番恐ろしい獣だけれど、それを乗り越えるのも人間の文明の力だと暗示しているような気もするね。」

A  「他にも、動物の犠牲のもとに命をつなぐことや、親の言うことを聞かず家出したけれど現実を知って帰ってきた頃には親はいないこととか、戦争と友情とか、文明を受け入れるレオの葛藤とか、これでもかと言うほど胸をえぐる内容が描かれているんだ。しかも、たった3巻で!!言いたいことはまだまだあるけれど、今日はこの辺で!」

AB 「ではまた(*´`*)」

 

*参考文献*

「ジャングル大帝」 手塚治虫(手塚治虫マンガ全集 講談社)

「帝国への抵抗」 戸田真紀子 編 (世界思想社)

 

 

 

執筆者 | 21/06/21 (月) | コラム


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