【裏YOUTUBE大学】 やられてもやりかえさない ~2021.8.16のHRで語られた「ラストエンペラー習近平」の授業とは~

執筆者 | 21/08/16 (月) | コラム

 8.16のHRでの中田さん。「トレードオフですね。YOUTUBE大学や、PROGRESSが、大きくなったことで、できることも増えたが、できないことも増えた。政治や、批評、偏った意見等をコンテンツとして取り上げるのはかなり注意しないといけないと思っています」

 YOUTUBE大学で取り上げない判断をされた「ラストエンペラー習近平」という文春新書の本を紹介いただいた。PROGRESSメンバーとして幸運にも貴重なお話を聞くことができたため、中田さんの一人称でとして残しておきたい(あくまでの筆者の理解です)。

はじめに

  • 「ラストエンペラー習近平」。面白かった。いい悪いとか、中国が好きか嫌いか、それぞれあると思うがフラットで語っていこうと思います。
  • そもそも、国家というのは、一つのプラットフォームに過ぎないと思っているし、国家そのものよりも、大事なのはその国に住む国民の生活の安全だと思っています。
  • この本を読んでPROGRESSのあるべき姿を考えた。これまで、1万人を目指す、といっていたが、それは結果であって目標ではないと思います。
  • 今まで、「みんなの夢を応援し合う終わらない学園」をスローガンにしてきました。これからは、「終わらない」のところを、「安心できるコミュニティーを目指します」っていう風に入れ替えたいなと。PROGRESS は、「みんなの夢を応援し合う、安心できるコミュニティーを目指します」、これをスローガンにしたいですね。

これだけは押さえたい中国の基礎知識

  • まず、習近平は独特な立ち位置にいます。まず任期を撤廃したトップであるということ。2018年に、2期10年までという任期を撤廃しているということを御存じでしょうか。
  • さらに、中国という国は、日本やアメリカなどの資本主義国家と異なり、共産党の一党独裁国家であるということ。そしてそれを憲法で規定されているということを押さえてください。すなわち選挙がない国であり、共産党がすべてをコントロールすることが決まっている。その党首=国家主席が国を仕切るとなっているのです。
  • 中国の歴史では、その国家主席が7名。党首でありながら、国家主席にならなかった例は、鄧小平という人物の時代です。中国という国は、社会主義という理想を追いかけて毛沢東が建国した国ですが、経済が上手くいかなかった。そこで、資本主義の原理を取り入れたのが鄧小平。彼は、任期のある国家主席ではなく、軍のトップに就いた。なぜか?任期に制約を受けることなくトップに君臨できる。彼は、軍のトップとして実権を握り、国家主席は傀儡政権として自分の息のかかった人物を据えたこと。ロシアのプーチンと同じようなやり方を取ったのです。
  • その後、鄧小平の息のかかった国家主席が2代続きますが、そのあとに国家主席となったのが習近平です。2012年に習近平は第7代の国家主席となります。そして経済的な躍進を遂げていきます。習近平は毛沢東以外の絶対権力者。さきほどいったとおり、任期が撤廃されたため、命に係わるような事件が起きない限り、死ぬまでトップ。皇帝に位置するといっていいと思います。

中国の外交政策とは

  • 外交政策の推移を見ていきましょう。中国という国は、2008年頃までは、周囲に配慮した外交政策をとっていた。国際的な枠組みに参加しながら経済を整えてきた。
  • ところが、2008年、リーマンショック後にその方針が一気に変わります。この本では、「チャイナ2.0」といっています。尖閣諸島問題、インドとの国境問題、など、世界に対して、拡大路線をあらわにしていく。
  • ところが、それによって、周囲が中国に対して恐怖心を抱くようになる。中国は、恐怖心を抱かせすぎたとの認識に立ち、国力、発言力の大きい、日本やインドを揉めるのは得策でないと判断した。そこで、まずは抵抗しないところ、影響力の少ないところということで、香港や台湾、その他部族に対してアプローチを強めた。これがチャイナ3.0。局地的攻撃ですね。
  • それが、コロナをきっかけとして変わった。チャイナ4.0です。アメリカ、ヨーロッパがコロナに対して苦境にあえいでいたなか、中国は早期にコロナの抑え込みに成功したため、一帯一路政策で一気呵成の態度を取っていた。
  • 著者は、この外交戦略こそが、中国の問題点であると指摘しています。周囲に敵を拡大する政策だと。かつては米中対立と言われたが、現在はそんな状況にない。かつてのように、アメリカだけが中国をマークしているのではなく、全世界的に、中国を恐れるという構図が出来てしまったのです。コロナ禍で欧州=EUと揉めたことで決定的になった。もともと、EUは中国とビジネスがしたかった。アメリカが中国に牽制しても、EUは中国とのビジネスを締結すべく進めていた。ところがコロナのなかで、EUがそれをひっくり返した。アメリカがHuaweiを排除したのと同様に、EUも中国を排除し始めたのです。

著者が伝えたかった教訓とは

  • 大きな大国といえども、包囲されると絶対的ピンチに陥るということなのです。それはかつてのフランスと同じ。ナポレオンが圧倒的脅威になったとき、イギリスを中心として、小国が結託して反ナポレオン同盟を作ったことで、ナポレオンといえど、その同盟に勝てなかった。
  • 世界には多くの国がある。大国があって小国がある。著者は戦争に関しての研究者。「戦略のジレンマ」=「大国は小国に勝てない」というジレンマを突き付けています。
  • 小国はつぶせそうでつぶせない。なぜか。大国は他の中規模小規模国にとっても脅威だからです。大国が小国をつぶそうとすると、小国や中規模国が連携する。Aという小国をつぶそうとすると、それ以外の全員を敵に回すことになるのです。
  • 「孫氏の兵法」にも通じるのですが、「攻撃を与えることは最大の悪手」なのです。例えば、クラスの中で嫌われたければ、たった一人をいじめてみること。その人のことを好きだと思っている友達とかみんなに嫌われますよね。一人女子を泣かすとクラス全員に嫌われる感じです。
  • 習近平は、国家のなかでも、権力としてもエンペラーの位置にいる。ただ、それは最後になるだろう。この本は言います。だから「ラストエンペラー」であると。
  • 大事なのは軍事力でも、経済力でも、国力でもない。著者はこう提案します。中国はチャイナ1.0に戻って、国際的に融和し、協調路線を取り、決して、他国を侵略しないことを明確にメッセージとして伝えること。経済力や技術力が高いことは明らかなので、周囲から頼られる存在になれば、安泰であろうと。一帯一路で世界中に中国の経済圏を拡大するといっているなかでは、外交的に追い込まれるであろうと。

徳川家康にあって、織田信長になかったものとは

  • 織田信長や、豊臣秀吉の時代を振り返って、何が間違っていたのだろうと考えてみました。
  • 織田信長のキャッチコピー、「天下布武」だったのです。「天下取るよ!武力で!」と。怖くないですか?向こうから「天下布武」って書いているひとがやってくる。絶対に暴力振るわれる。怖い。信長って、誰しもにとって怖かったのだと思います。部下にとっても。「これ以上やりますか?」「この人止めないととんでもないことになる」、と。
  • 秀吉の朝鮮出兵に関しても良くない手だと思います。ただの侵略を始めるというのはどうしても正義がないですよね。
  • そんななか、徳川家康はすごい。家康の「遺訓」は何度読んでも名文。「人生は重き荷を背負って、長き道を行くがごとし。焦るべからず。怒りは敵と思え。勝つことばかりを知りて、負けることを知らなければ、その害は身に及ぶ。人を責めず自分を責めよ。及ばざるは過ぎたるに勝れり」。とにかく、耐えろ。忍耐だと。決して外に打って出なかった。凄いなと思います。
  • 大事なのは、「侮らないでね(笑)」ではなく、「侮られる」こと。恐れさせないこと。特に喧嘩を売るのは一番よくない。「●●を倒す」だと、指名された段階で、その人と仲良くできない。物議をかもしてしまいます。

国家のあるべき姿とは

  • なぜシンガポールに移住したかを考えたときに、治安の良さが一つありました。国家の仕事はなにか。絶対に国民の安全だと思います。経済的に一位になることではなく、失業をなくす、治安を保つ、が国家の仕事だと思うのです。
  • 「食べていけなくなるほど貧しくなる」のは問題。「鉄バットでコンビニたたき割る」というのは問題。そうならないようにするのが国家の仕事。
  • プラットフォームというのは安全と安心を提供すること。そこを見誤ってはいけないですね。繁栄や頂点を極めることがゴールではないのです。
  • 日本の首相が、「経済を世界のナンバーワンにする」とか、「国土を倍にする」とか言ったら怖くないですか?「北方領土を来年中に取り戻す」とか言ったら怖くないですか?

PROGRESSのあるべき姿とは

  • この本を読んで、改めてPROGRESSのあるべき姿を考えてみました。これまで、「1万人を目指す」といっていましたが、それは結果であって目標ではないと感じます。「安心できるコミュニティ」であれば、自然と人数が増えていくと思います。
  • かつては、HRや、YOUTUBE大学にも参加しない人を寂しいなと思っていましたが、最近は、それでもいいと思えます。ファンクラブではなく、コミュニティーになったのだなと。それを守ろうと思いました。
  • これまでは、リー・クアンユーを目標に、ワントップで、いわば「開発独裁」としてやってきました。超絶のスピードで。急成長したければ、ワントップであるべきだと思うのです。前言撤回も厭わず。
  • ところが、大きくなると、リスクが高くなる。登録者が千人~二千人のときはいろんなことができました。登録者五千人を超えた今、自分自身の意思決定だけでこれ以上進めるのは怖いとも感じます。企業で例えると、シード段階は過ぎたと思います。
  • なので、中田としてはより穏健にならなければならない。中田のコアバリューとして、「やられてもやりかえさない」「だれのことも叩かない」で行こうと思います。弱気に思えるが、それが本当の強さだと思う。これが一番強いのではないかと思っています。

執筆者 | 21/08/16 (月) | コラム


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