私は北海道で学習塾をやっています。塾と言っても、講師は私一人。お手伝いに教え子の高専生に一人来てもらっているだけの個人塾です。25歳のころに大手塾から独立し、今年で20年目。現在の塾生数は小学生から高校生まで85人います。
独立してから今に至るまで、自分なりにずいぶん頑張って仕事をしてきたと思います。年間の休日はお盆や正月を合わせても45日程度、テストの立て込む6月、9月、10月、11月、2月には、1日も休めないことも珍しくありません。まあまあのブラック企業です。
この状況は自分でも普通だとは思っていません。独立前に勤めていた塾だって、ここまでひどくはありませんでしたが、教師のブラック化が社会問題となっている昨今、塾もやはりブラックです(笑)
そんな話を人にすると、「自分が経営しているんだから、調整して休日をとればよいのでは?」と今までに何度となく言われていきました。そうですね。その通りだと思います。そして実際にやろうとすればそうできます。でも私はそれをしていません。
その理由は、私自身、この仕事が「ビジネスと教育のはざま」にあると思っているからです。
塾講師はその職責上、既定の回数の授業を行っていれば怒られることはありません。
私の塾の場合だと、各学年に週2回、2.5時間ずつ。計5時間の授業を行う。期日内にテスト範囲の授業が終わっていれば大丈夫。何の問題もありません。うん、これなら少なくとも週に1日は休日をとることができますね。授業をオンライン化して、もっとたくさんの生徒を相手にすることもできるでしょう。
ではどうして、私は日々狂ったように仕事をしているのか、といいますと、それは自分の塾を成績アップと低コストに特化した塾にするためです。
成績の上昇は、講師の技量もありますが、一番ものをいうのは生徒本人の努力であり、それは主に「自己責任」という形で処理されます。「きちんと復習すれば成果は出る。成果が出ない子は、きっと復習していないんでしょ?もっときちんと勉強しようね。」と、こうなります。私が以前働いていた大手塾のマニュアルにも、「成績不良のクレームは家庭学習の不足を指摘すること」と明記していました。実際に成績がアップしている子がいれば、それで納得せざるを得ません。
いや、まったくもってその通りです。実際に、学習塾への成績不良のクレームは多くありません。保護者様も皆さんそうお考えなのでしょう。
ただ、私が自分の塾を作る時、一番気になったのは、その自己責任を課す相手が、「精神的にまだまだ未熟な子供」と「仕事を抱えながらも必死に子供の面倒を見なければならない保護者」であるということです。「家での勉強が足りないから伸びないのです。ちゃんとやってる子は伸びてます。」彼らはこの正論を浴びせていい相手なのか。それは少し酷なのではないかと思うのです。(続きます)