牛についてシェアします

執筆者 | 21/10/13 (水) | コラム

2021年2月入会の松岡勇毅(パディ)です。

初めてコラムを投稿します。ご覧頂けたら幸いです。

今日の授業「気候変動と脱炭素ビジネス」で畜産業と環境負荷の話題がありました。

私の知っている畜産業(特に酪農業)の知識をシェアして授業のお役に立ててもらえれば幸いです。

※このコラムは授業の批判ではありません。また、各ご専門の方もいらっしゃるかと思いますが、お仕事の批判ではありませんのでご容赦下さい。

 

1.私のキャリアについて

私は現在は全く別の仕事をしていますが、昨年までアイルランドで酪農業に従事、その前は北海道で酪農ヘルパーという仕事をしていました。

ここでは趣旨と離れるので詳しくは説明しませんが、酪農ヘルパーとは牛相手で休みの取れない酪農家の皆さんに休暇等を取ってもらう為にその業務代行をする職業です。

2.牛と温室効果ガス

畜産業(特に牛)が環境への負担が大きい事は授業の中でもあったように、気候変動に寄与する牛由来の温室効果ガス排出の割合が大きいと言われています。

牛などの反芻動物はその消化の特性上、消化過程でメタンという二酸化炭素よりも強力な温室効果ガスが生成され、あい気(げっぷ)などで排出します。

世界の牛の飼養頭数(飼われている数)は様々なデータがありますが、およそ15億頭です。この飼養頭数は微増ですが、毎年右肩上がりを続けています。

参考:帝国書院 統計資料https://www.teikokushoin.co.jp/statistics/world/index30.html

3.日本の酪農の変遷

日本における乳牛の状況を1985年と2019年で比較すると以下のようになります。

酪農家戸数  約8万2千戸 → 約1万5千戸

飼養頭数   約211万頭   → 約130万頭

生乳生産量  約738万トン  → 約731万トン

世界動向とは異なり、ここ40年ほどで酪農家戸数の減少に伴い飼養頭数も減少しました。しかし、当時と生産している生乳の量はほぼ変わりません。

これは乳牛1頭あたりの生産量が劇的に増えたことに起因します。1985年と2019年で比較すると年間で1頭あたり約3,000kgも多く泌乳出来るようになりました。

酪農家の皆さんが牛舎をきれいに掃除したり、暑さから守ってあげたりなど愛情持って牛に与えるストレスを少なくしたりする努力があったのはもちろんですが、品種改良と飼料(えさ)の改良など科学技術の後押しがありました。

参考:農林水産省 最近の牛乳乳製品をめぐる情勢についてhttps://www.maff.go.jp/j/chikusan/gyunyu/lin/attach/pdf/index-323.pdf

4.乳牛の栄養

ここまで書いてピンと来る方もいらっしゃると思いますが、1頭あたりのパフォーマンスが向上するということは、必要なエネルギーも多くなります。つまり、牛は飼料をたくさん食べる必要があるということです。

牛は基本的には草(牧草)を主に食べます。しかし、牧草だけを食べていると草のエネルギーのみで生乳を作ることになります。牧草は牛にとって不可欠ですが、消化に時間がかかります。消化に時間がかかるということはその分お腹の中に草がある時間が長くなるので、次にお腹が空くまで時間が必要になります。そうなると品種改良でたくさんの生乳を作れるはずの牛が大量のエネルギーを摂取できずに、思う存分働けないということになります。(牛にとっては楽できてラッキーなのかもしれませんが…)

そこで人類は穀物を牛に食べさせたり、穀類やビタミンなどを混ぜてペレット状に加工し、消化吸収しやすくした飼料を与えるようになりました。これらは牧草とは別に生産する必要があります。牛用に穀物を生産する圃場、家畜用飼料を生産する工場が必要です。

国産飼料自給率はおよそ25%と言われています。これら不足分の飼料は北米などから輸入されます。

もちろん他の農業と同様に、たくさんの牛を相手に仕事するためには搾乳に使用するミルカーやトラクターなどの農業機械の操作は欠かせません。

この状況は世界の酪農業で同じように行われています。

5.終わりに

簡単な説明でしたが、なんとなく酪農を巡る状況が見えてきたでしょうか?

まだまだ生乳の加工や生産地域などお伝えしたいことはあるのですが、長くなりますし話が大きくなるのでこの辺で止めておきます。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

執筆者 | 21/10/13 (水) | コラム


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