PROGRESSの皆さん、メリークリスマス!
2021年2月入会の松岡勇毅(パディ)です。
今日はそれぞれのクリスマスイブをお過ごしになると思いますが、ケーキや洋菓子を食べたりする方は多いですよね!
ケーキや洋菓子には沢山の乳製品が使われていますが、今月初旬に年末年始に生乳が廃棄される可能性があるという報道があったのをご存知ですか?(https://www.jacom.or.jp/niku/closeup/2020/201211-48264.php)
コンビニ大手のローソンでは牛乳消費拡大を支援するため、年末年始にホットミルクを半額で販売することを発表しました。(https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2112/21/news070.html)
新型コロナウイルスのパンデミックが始まり2年が経とうとしている今、なぜこのような状況になったのか、簡単にですがまとめてみました。
過去のコラムはこちら
1.牛について
I.生乳の生産
乳牛が生乳を生み出す仕組みを簡単に説明します。
乳牛も人と同じで妊娠・出産を経て泌乳を開始します。乳牛は季節による特定の発情期を持つ動物ではないため、牛それぞれの妊娠・出産する時期が異なることによって、私達は1年中牛乳や乳製品を口にすることができます。
しかしながら、季節によって生乳の生産量は変化します。乳牛が食べる牧草は春から初夏に生長最盛期を迎え、それに伴い牧草の栄養もピークになります。栄養満点の牧草をたくさん食べられた牛はより多くの生乳を生産することができます。
また乳牛は寒さに強く、暑さに弱い動物です。
つまり、夏は暑さにやられて食欲が低下し疾病リスクも上がるほか、生乳生産へエネルギーを回しにくくなります。しかし2021年は夏と秋が比較的涼しかったことから、生乳の生産量が例年よりも増えました(前年度比17万トン増の見込み)。
II.生乳の需給バランスと乳製品在庫
「牛乳」の需要と「生乳」の供給は逆の動きをします。夏場は牛乳需要のピークを迎えますが、前述の通り生産量が減ります。冬場は生産量が回復傾向になりますが牛乳の消費量がそもそも落ち込みます。
この時、各地域で不足する部分は北海道から生乳を移送する量を増やして対応します。一方、冬に飲用需要が減る時は各地の乳業メーカーでその他の乳製品へ加工するようにします。
このように対応することが業界全体として決まっていますが、各企業の想定を超えて生乳の需要と供給のバランスが崩れた時は国が需給調整に介入します。
生乳の供給量が過剰になった場合は保存の効く脱脂粉乳やバターに加工されます。家庭用バターではなく1個20〜25kgの業務用バターの生産で国内在庫に回すことになっているようです。コロナ禍以降、外食産業からの需要低迷により生乳は乳製品在庫へ多く回されるようになりました。これが今回のケースです。
III.廃棄しないための対策
一旦ここまでの状況を整理します。
①2020年からの新型コロナウイルスパンデミック
↓
②外食産業の需要低下や学校休校による学校給食の停止
↓
③需要低下による生乳の供給過多
↓
④国の需給調整により乳製品在庫が高水準に
↓
⑤2021年夏秋の涼しい気候により生乳生産量が増える
↓
⑥廃棄しないように工場フル回転で在庫製造、需要が回復してないのに生産量増えて…
つまり全国の工場で以下のような状況が起こる可能性が高いということです。
【 需要減の中で通常稼働 + 在庫製造 + 良気候のため生乳量増 ⇛ 処理しきれないかも… 】
「そもそも生乳を作り過ぎなのでは?」と思う方もいるかも知れません。
1つの見方として正しいとは思いますが、業界全体としては数年前のバター不足問題の二の轍を踏まないように生産量を増やしてきました(この問題は複雑なので解説はまた別の機会に)。
仮に牛の飼養頭数を減らすと需要が回復してきた際に供給量を急激に元の状態まで戻すことは出来ません。親牛が妊娠・出産し、生まれた子牛が成長して搾乳を始められるまでに最低でも約3年必要です。生乳の減産は酪農家のモチベーションの低下を招くため各乳業メーカーが努力しているのですが、今回ばかりは最悪の事態を想定する必要が出ているようです。
この状況を何とか打開するために、ローソンがキャンペーンに率先して取り組みました。
酪農・乳業業界としても牛乳・乳製品の消費喚起キャンペーンを行っています。
乳製品を摂取できない方もいらっしゃると思いますが、今夜は少しの応援の気持ちを持ってケーキなど食べて頂ければ牛たちのためになるような気がします。
IV.おわりに
ここまで書いてみて、クリスマスイブに投稿する内容ではなかったかも…とやや反省しております。もしよかったら、デートの会話ネタにでも使ってもらえたら幸いです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
参考: