ストロベリー・ストーリー 赤くて甘くておいしい苺 第4話

執筆者 | 21/03/25 (木) | コラム

こんにちは。アリスカーナの竹内睦(たけうち ちか)です。
ストロベリー・ストーリー第4話をお読みいただきありがとうございます。

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ストロベリー・ストーリー
第2章

翌日、Fに連れて行かれたDとの面談場所は、
超一流と言われるホテルのロビーにあるティールームだった。

そんな場所で一杯1000円のコーヒーを飲むなんて、
彼には初めての経験だった。

そわそわしている彼を見て、Dが笑いながら言った。

「落ち着かないかい?」

「えぇ、もちろんです」

「僕も最初はそうだったよ。居心地が悪かった。でも、慣れた。
人間は周りの環境に染まる生き物なんだよ。」

そうか。Dさんでも最初は居心地悪かったんだ。
俺もいつかDさんみたいになりたいな。

「そうなりたいかい?」

心を見透かされて、彼はドキッとした。

「そうなりたかったら、口に出すといいよ。
周りの人に宣言しちゃうと、いつかそのとおりになる。
僕はずっとそうしてきた」

Fが自分の商材について相談している間、
彼は何も口をはさむことができなかった。

その居心地の悪い思いに、何度も途中で帰りたくなったが、
この機会を逃したら、次にDに会えるのはいつになるかわからないと、
踏みとどまった。

Fの相談が一通り終わったとき、彼は思いきって、口を開いた。

「Dさん、あの、見てほしいものがあるんですけど・・・」

昨日届いたあのファックスを、二人の前に広げた。

「ただの間違いファックスです。
でも、これ、人生のことを書いてあるっていうけど、
ビジネスにも通じるような気がして。
でも、意味がよくわからなくて、それで…」

Dが読み終わったページからFに渡していった。
そしてFは、最後の一枚を読み終わったとき、黙ってDの顔を見た。

DはFの表情を見て、小さくうなずいて、話しだした。

「Fさんはたぶん、この話の意味がわかったと思うよ。
いや、この苺の話の意味というより、ビジネスへの応用だね。

それは、Fさんが今、自分の商材を持っていて、
ビジネスが動き始めているからだよ。
自分の中で、具体的に置き換えることができるんだ。

もちろん、何が正解かなんてわからないが、
これを読んで僕の感じたことを話していいかな?」

「お願いします!」

彼は、Fが閉じかけたノートを開いてペンを持ち直したのを見て、
あわててファックスを裏返して、メモにしようとした。

が、書くものが何もない。
こういうところだよ、俺がダメなのは…

冷たい汗が背中を伝う感覚を生涯忘れないだろうと思っていると
Dが高級そうなペンを貸してくれた。

「まず最初の赤くて甘い苺を、
匂いをかいで慎重に選ぶという考え方。

これは品質重視の考え方だな。

もちろん、王道だ。

これは作るときも徹底的にクオリティ、性能、美しさ、
そういうものにこだわって、完成度の高いものを作る。

売り方も、そこを前面に出す。

品質もいい。機能性も高い。商品に自信がある。
ナンバーワンを売りにするんだな。

これは素晴らしい。
これは上質だ。
これは美味しい。
これは最高だ。

持っているだけでステイタスになるブランド品と一緒だね。

二番目の例。
二人が選んでいった普通の苺というやつ。

消費者の意識とは必ずしも、一番志向ではないっていう例だね。
完璧でなくてもいい。

超高級で高額な苺より、
割安でそこそこ美味しい苺が売れ筋だ。

でも、安いからといって見切り品の苺はいらない、という客層は多い。

大事なキーワードは
「みんな一緒」「みんな買ってる」
たくさんの人に支持されているから、安心。

この仲間意識というのは、馬鹿にできないものなんだよ。

最後のまずい苺っていうのは比喩だろうから、
普通の人は、まず見向きもしないような、
変わった物っていう意味だろうな。

超個性的。
オリジナル。
誰も真似できないオンリーワン。

支持者は多くないかもしれないが、熱狂的なファンがいればそれでいい。

競合が現われないほど、突き抜けていれば最強だね。

リアルのビジネスなら、それぞれのパターンを突き詰めて
徹底的にやればいい。

だって、商品が目の前にあって、目の前にお客さんがいる。

お客さんの表情を見ながら、話をしながら、
感動を提供して、良い人間関係を作って買ってもらうこともできる。

まぁ、良い人間関係が作れなくても、
お客さんは自分で商品を吟味して、納得して買っていくことができる。

それは、わかるよね。

ネットビジネスはどうだろう?

特に僕たちが関わっている情報商材は中身が見えないよね。

本屋のように立ち読みをさせない。
この話に出てくる中身の見えない苺の箱と一緒だよ。

お客さんにリスクがある。
先にお金を払って、ゴミみたいな情報をつかまされる可能性もある。
セールスページで判断するしかない。

売る側もそうだ。
最初に商品をすべて見せるわけにはいかない。
セールスページでがんばるしかない。

いくら広告費を大量に使って、アクセスを送っても、
見に来たセールスページに魅力がなければ、売上は上がらない。

そのためには、最低でもこの3つの条件は抑えておく必要がある。
クオリティと満足感とブランディング。

自信を持って売ることのできるクオリティ。
作った本人がお金をもらうのにためらいがある商品を、
誰が欲しがるだろうか。

良いものを作ったんだから、買ってもらって当然だという自信。
その自信が、セールスページでの熱い文章になる。

売るときには数字的な裏づけもあったほうがいいだろうね。

そして、機能性の向こう側にある満足感を、
熱い文章で伝えなければならない。

この商品を手に入れた人が、必ず幸せになれるというイメージ。

この商品を買った人は、みんな幸せになっているという安心感、連帯感。
それがわかりやすいこと。

手に入れたときのメリットがわかりやすくなくちゃいけない。
できるだけたくさんの、お客様の喜びの声が必要だよ。

著名人の推薦もあればいい。
そうやって、権威もつけていく。

そして、君自身が支持されるというブランディング。
それを売っているのが君だから、という信用だ。

信用があれば、商材やサービスが、他の誰かに真似されても、
お客さんは必ず君のところで買ってくれる。

食べ物でもそうだろう。
何々県のなんとかさんが作った有機野菜のように
生産者の顔が見えるものは安心するよね。

いま、僕が言ったことは、まだまだほんの一部だけどね。」

Dは言葉を切って、コーヒーを飲んだ。

そして、彼の顔をじっと見ながら、ゆっくりと問いかけた。

「君はどんな人に喜んでもらいたいんだい?

君が人を喜ばせることができる情報はなんだろう?

その情報をどういう風に提供したら、
人は喜んでお金を払って、お客さんになってくれるだろうか?

君の持っている情報が、お客さんを喜ばせるものだと、
どうやって伝えればいいんだろうか?

世界のどこかで君の情報を待っている人たちを、
どうやってセールスページまで呼んできたらいいだろうか?

君が考えなければいけないことがわかったかい?」

彼は必死でメモを取っていた。

以前にDのセミナーに参加して話を聞いたときとは、何かが変わっていた。

Dの声が沁みこむように心の中に入ってきた。

「商材が売れて、お客さんから喜びの感想をもらうと、
本当に嬉しいもんだよ。

もちろん、何百万、何千万のお金を儲けたっていうのも嬉しいことだよ。

それだけの報酬をもらえたっていうのは、
自分の努力をそれだけたくさんの人に認められたってことだからね。

たぶん、役者さんが舞台の上で、たくさんの拍手をもらったときと、
同じ気持ちなんじゃないかな。」

柔らかな微笑みを浮かべているDを見て
彼は苺の話の一節を思い出していた。

『さっき味わった幸福感を、彼らはもうすでに手に入れていて
他の誰かにも味わわせてあげたい、と考えたのかもしれない』

誰かを幸福にしたい、喜ばせたい…
俺はいままで、そんなふうに考えたことはなかった。

金を稼ぎたいとしか考えていなかった。

彼はいままでなかなか一歩を踏み出せなかったのは、
どこに向かって進めばいいか、わかっていなかったからだと気づいた。

遠くても、小さくても、光が見えたら、
ただ真っすぐに、その光を目指して進んでいけばいい。

彼は、今度こそやるぞ!という気持ちとともに、
動いている自分の姿が、リアルに頭の中にイメージできた。

ビジネスという舞台の上で、たくさんの拍手を受けている自分の姿。

立ち上がって手を叩いてくれているお客さんの顔は、
みんなとても幸せそうだ。

終わり

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最後までお読みくださって、ありがとうございます。

この話は2005年にメルマガに掲載したものです。
(当時は情報ビジネスが最先端だったのですよ)

「苺の話」はある春の日の朝10時頃、駅のホームで電車を待っていた時に
突然、わたしの頭の中に降りてきました。

ここではビジネスのお話としましたが、
やはり人生のお話でもあると思っています。

わたしの手を離れて、いまこれを読んでくださっているあなたの心の中で、
どのような物語に変換されていくのかはわかりません。

ただ、自分でも思いがけなく生まれてきたこの部分を、
大切に伝えていきたいと思っています。

『けれど、あとの二組は、もしかしたら、
自分たち以外の、誰かのために
美味しい苺を残して置いてあげよう、と思ったのかもしれない。

疲れた体にしみわたる、あの苺のおいしさ、
さっき味わったあの幸福感を、彼らは、もうすでに手に入れていて、
他の誰かにも味わわせてあげたい、と考えたのかもしれない。』

FはFriend、DはDreamを表しています。

PROGRESSで出会ったたくさんのお友達と夢に、感謝をこめて…

執筆者 | 21/03/25 (木) | コラム


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