大島てるに 載った 君を 忘れられない 忘れない。

執筆者 | 21/05/06 (木) | コラム

亀石明日香です。

※ 刺激的な内容が含まれています。
心が疲れている方は元気になった時に
読むことをオススメします。

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「Kちゃん・・・
死んじゃったぁ・・・」

 

知らない番号からの突然の電話。
女性が泣きながら私に話してきた。
Kちゃん・・・
もしかしてKくんの彼女さん?

 

その当時私は趣味であった緊縛好きが集まる
イベント会場にいた。
Kくんの事を頭で理解できた時に
足に力が入らなくなって座り込んでしまった。

 

なんでいきなり・・・?

 

前日にTwitterでこう呟いていた。
「店舗が見つからなくて困っています。」
私はそのツイートを見てイイねを押すのは
なんとなく違う気がしてスルーをした。
まさかKくんが逝くとは思わずに。

 

当時のパートナーと共通の友人だったので
すぐに事情を話してイベント会場を
後にした。車の中で泣く私を励ますように
「ひとまず夕飯食べよう。」
と焼き肉屋さんへ入った。

 

「3名様でよろしかったですか?」

 

と店員さんに言われ後ろを振り返ると
そこには誰もいなかった・・・
「2名です。」
と言い席に座った時にパートナーが
「会いに来てくれたんじゃないかな。」
って言うもんだから次々涙が出た。

 

____

 

 

それから数日後・・・

 

葬式はしないけど出棺をすると聞き
私とパートナーはKくんに会いに行った。
他に知っている人は彼女さん以外は
いないしご家族にも初めて会う。

 

幼い頃に父親を亡くし、お母さんと
7個下の弟と別々に住んでいた。
「いやーーーー!!!!!」
と足元がおぼつかないお母さんの
叫び声が絶え間なく聞こえていた。

 

いざ・・・眠っている棺に案内をされ
目の前にいた人たちが続々泣き始めた。
身体がひゅっと冷たくなって
心臓が脈を打ってる音が聞こえた気がした。

 

いつもの可愛い笑顔はそこにはなくて
真っ赤で息が詰まって苦しそうな表情の
Kくんの顔が今でも目を閉じると浮かぶ。

 

 

練炭自殺だった。

 

___

 

私とKくんとの出会いは今から8年前。
パートナーがピアスを入れてくれる所を
探したいと、ネットで見つけたのが
Kくんのお店だった。

 

1度カウンセリングに・・・との事で
車で向かった。とても笑顔が可愛くて
22歳と若いのに知識も豊富で
性癖やフェチに寛大で。
カウンセリングなのに多くを語った。

 

女王様に縛られるのが好き。
という性癖を持ち、彼女は女性。
だけど遊び相手は男性。
という面白い男の子だった。

 

私が性器ピアスを入れるという事で
SMの主従についても深く語った。
今はパートナーともお別れしたが
私達の事をとても気に入ってくれて
手枷をプレゼントしてくれた。

 

___

 

次第に彼女を紹介してくれて一緒に
ご飯を食べたり。
静岡へ来てくれて釣りをしたり。
Kくん主催のイベントへ行って
ピアスや刺青が好きな人たちと
楽しんだり。そんなわいわいとした
思い出がとても多かった。

 

職種からか大家さんと合わなかったり
問題があって引っ越すことが多く
引っ越しを3度手伝った。
3度目の引っ越しがKくんの最期を
過ごした家になったのだが
その頃から様子がおかしくなっていた。

 

 

「しばらくお店を休みます。」

「病気の治療に専念します。」

「また再開しようと思っています。」

「あまり病状が良くなりません。」

 

 

そんな一喜一憂のツイートを連ねていても
病院に入院していたら会えないよねって
パートナーと話をして連絡を控えていた。
Kくんの抱えていた病気・・・

 

 

統合失調症だった。

 

 

___

 

入院する前。私はKくんに
刺青のデザインを書いてほしいと
お願いしていた。

 

以前彫ってもらった藪椿もKくんに
デザインしてもらったのだけど
今回は菊と蛇を絡ませたような絵が
いいなぁ~と伝えた。

 

Kくんが逝く少し前。
1枚の写真が送られてきた。
菊だけを書いた絵を撮ったもので
「蛇も楽しみにしてるよ~!」
なんて話したけど・・・
結局蛇とは出会えなかった。

 

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出棺の時。

 

心を落ち着かせようと外に出たら
刺青がいっぱいの人たちが3人いた。
Kくんの戦友で彫師の女性と男性で
少し思い出話をしてKくんの写真を
LINEで交換したりした。

 

「Kくんが吸ってた煙草吸いません?」

 

と1人の女性が煙草を差し出したので
全員でその煙草を口にした。
やっと気持ちが落ち着いた頃
菊と蛇の刺青のデザイン画の話をしたら

 

「私で良ければ彫らせてもらえませんか?」

 

と声をかけてくれた。
普通自分のデザインでないものを彫るのは
タブーだったり、あまりしないのに
Kくんの遺したものを受け継いで
彫りたいと言ってくれる事が有難かった。

 

後日東京で施術をしてくれた彼女は
偶然にも私と同じ年で、この出会いが
キッカケとなって今でも仲良く
させてもらっている。

 

「出会えてKくんには感謝だよね~」

 

と笑う彼女とは今じゃ7年の付き合いになる。
今週末も私は刺青をいれに通うのだけど
義理や恩を大事にする人間は
あまり周りにいなかったので月1の
彼女との時間は私の安らぎになっている。

 

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Kくんが亡くなった後
こっそりと書いていたブログがあったと
彼女に教えてもらったのだけど
URLを押すまでに躊躇う気持ちが強く
苦しい気持ちになった。

 

 

病気への苦悩

お店についての心の変化

普通の仕事が決まらない

薬の過剰摂取

生まれた時は女性性だった

親への謝罪の気持ち

希死念慮が常にある事

 

 

最終的には「練炭をネットで購入した。」
という記事が出てきた。

 

「〇月〇日に死ぬことにした。
親には会いたいけど会ったら
気持ちが揺らいでしまう。
死にたい。死ぬしかないのだ。」

 

なぜKくんはそんなに悩んでいたのか
彼女以外に知っている人はいなくて。

 

「つらいなら一緒に逝こう?」

 

と声をかけた彼女を置いて
1人で逝ってしまった・・・

 

 

___

 

Kくんがいなくなった後の彼女と
お母さんは見てられなかった。
2人とも後を追うんじゃないかと
周りにいたKくんの友人みんなが
気にかけてしょっちゅう会いに行った。

 

私がもっと相談にのってあげてたら
あの時声をかけていたら
Twitterに反応していたら
会いに行っていたら

 

「もしかしたら死ななかったかも」

 

 

自死を選んだ人が近くにいると
周りはみんな自分を責める。
心を騙したり自分を責めて
余計に苦しくする。
救えなかった償いに。

 

___

 

Kくんが逝って7年。

 

今思うのは
「自分を決して責めないでほしい」
思い出を大事に楽しく人生を
過ごしてほしい。

 

年に1回だけでもいい。
亡くなった方を思い出すだけでいい。
時間薬が癒してくれるから。

 

遺骨は船に乗って海へ散骨したので
命日に毎年行くことにしている。
Kくんの笑顔を思い出しながら。

 

会いたい人には
今すぐに会いに行く。

 

Kくんの事があってから私はそれを
心がけるようにしている。
そのおかげか、小さい頃から一緒に
住んでいた祖父が病気で亡くなるまで
何度も会いに行ったので
後悔する事無くお別れができた。

 

PROGRESSメンバーにも
会いに行きたい。
みんなに会いたい。

 

いつなんどき何が起こるかは
誰にもわからないから
後悔だけはしてほしくない。

 

私はKくんを
一生忘れられない忘れない。

 

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※大島てる 事故物件サイト
https://www.oshimaland.co.jp/

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今回微妙な表現がたくさんでしたが
最後まで見て頂き感謝です。

 

前回初コラムを読んで頂いた皆様も
ありがとうございました。

 

 

あっちゃん・Tさん
PROGRESSメンバー
全員が幸せな日々を送れますように。

執筆者 | 21/05/06 (木) | コラム


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