アートオークションって何?画廊って何?

執筆者 | 21/07/16 (金) | コラム

こんにちは。美術解説をしたり子育てしたりしてます、良知です。

最近HRより画商やオークションの話が出てきたということで、アート市場の基本的な所を書き留めておこうかなと思います。

アート市場は主に2種類

アートを購入する場合、主に2種の購入方法があります。

1つはプライマリーマーケット

2つはセカンダリーマーケットです。

何のこっちゃ( )ᐟᐠ( )

例えばあなたが洋服がほしいとしましょう。

購入方法は2種類あります。

1つはお店で買う

2つはメルカリで買うです。

1つ目のお店で買うとは

新品の商品をブランドから下ろして(或いはブランドがお店を構えて)販売する場所ですよね?

2つ目のメルカリの場合は

中古の商品を定価とは別の価格を付けて買える場所です。

洋服の場合、2つ目の方が値段が往々にして低いわけですが、アートの場合、2つ目(セカンダリーマーケット)の方が高く買われる場合が多く存在するんです。

画商とオークションは売り方が違う

ここで言う「お店で買う」は

プライマリーマーケットにあたり、アート市場の場合、画商やギャラリーと呼ばれる場所が主に担います。

そして「メルカリで買う」は

セカンダリーマーケット、オークションがそれにあたります。

株式市場では「発行市場」「流通市場」とも言うそうですね

さて、ここでポイントとなるのは、

「セカンダリーマーケットがある作家なのか」ってことです。

人気が無ければメルカリで売れないと同じ

「ディオールの服だから中古でも欲しい」

「プラダのバッグだから中古でも欲しい」

そうゆう時にセカンダリーマーケットは力を発揮します。

アートでも同じで、そもそも重要があるアーティストではないとセカンダリー市場を持っていません。

無闇やたらに価格高騰をさせる意味がないからです。人気ないならわざわざ高くなりがちな市場(セカンダリー)に行かず画商(プライマリー)で買えばいいんだから。

セカンダリー市場を持てるまで

何故セカンダリーマーケットが存在するのでしょうか。

それは、需要が供給を大幅に上回る時に希少価値が生まれ、高値で売買されるからです。

需要より供給が少ない作品は、いくらそのアートが素晴らしいものであっても高値で売れません。

このプライマリーマーケットとセカンダリーマーケットのバランスを崩した失敗例として時々上がる作家はクリスチャン・ラッセンです。

ラッセンとはマリンアートと呼ばれる作品を出してる、何かキラキラなイルカ描いてる人。

中流階級(子金持ち)を中心にプライマリーマーケットでめちゃくちゃ人気となりました。全盛期の90年代には1作品を1000-3000枚ほど刷り熱心に販売をしていました。ラッセンなどの作品を扱っていることで有名な販売業者・アールビバン(版画を扱う画商)のアート関連事業は、売上高が359700万円と、一社だけでも多くの利益を与えています。

しかし需要と供給のバランスが崩れ、セカンダリーマーケットではラッセンは価格が付かないという状況がおきました。

画商の役割

さて、ここで画商の役割とは「絵を売ること」と「幅広い絵を量産してもらうこと」です。なので画商はその画家が本当に本腰を入れて絵を描く人物かを見極めなければならない。また画家はその画商が本気で売ってくれるかを見なければいけません。

プライマリーだけを見ているのか、セカンダリー市場も視野に入れているか、市場は何処か(世界、国内、一部美術協会内など)それらビジョンが互いにマッチしているか。

そしてその需要が供給を充分に上回った時に画家はセカンダリーマーケットを持てることとなります。

セカンダリーマーケットの実態

セカンダリーマーケット(オークション)では、推定落札価格が設定されています。

(この画家のこの作品はこのくらい需要があるから、大体7-11万の間で落札されるだろう)みたいな

オークション参加者は事前資料としてその一覧が推定落札価格と一緒に明記されています。サザビーズ(最大規模を誇るアートオークションハウス)などでは、1ヶ月くらい前から出品される作品と推定落札価格がネットで話題になります。

推定落札価格より下回れば、人気のない作家と判断され、また上回れば実績になりプライマリーマーケット(画商目線なら自分が売る分の値段)での値段も上がります。

プライマリーとセカンダリーを上手く回すと、作品の単価が上がるという仕組みです。

作品の値段ってどう決まる?

ところで初期設定としてのアートの値段はどうやって決まるのでしょうか?

基本計算は

「単価×サイズ+額装費」です。

単価とは画家それぞれが持つ評価格(号価格と言う)です。

新人だと大体5000-1万円あたりから始まります。

因みに「美術市場」という日本人画家の価格表がズラーっと並んだ分厚い本が毎年出されるんですが、そこに登録されてる最高価格の洋画家は中山忠彦の号価格200万円です。

ではサイズは?

キャンバスに描かれた作品では「F20号」「P10号」みたいな感じで大きさを数字で表します。大きい数字だとサイズも大きくなります。

と言うことで例えば

1万円(単価)×F6号(サイズ)+1万円(額装費)」=7万円

みたいな感じでおおよその値段が決まります。

デジタルではどう設定されるかは未発達ですが、「デカイものが高い」風潮は西洋美術の系譜であることからこの様な仕組みが作られたことでしょう。

世界では「デカイものが高い」を基本に、絵画、彫刻などの価格が決まります。

因みに日本の小っちゃい茶碗が1000万することに首を傾げるのが世界市場です。

セカンダリーで高騰しすぎる昨今

「バンクシーの作品がオークションで25億円で落札されました!」とか

NFTアートが75億円で落札されました!」

のようなニュースが注目を集めて居ますが、私は正直これが持続的な現象なのか投棄的な動きなのかはまだわかりません。

投機的な動きであれば、今後価格が下がる可能性が高いと言えるでしょう。

またギャラリー等が落札価格で権威的に注目されたい場合に、不要に値段が上がったりする例もあります。如実にあらわれたのがポール・ゴーギャンの例です。

アートは投資という側面も持ち合わせて居ます。全ての作品が投資対象になるわけではありませんが、少なくともセカンダリーを持っていて、年々価格が上がる作品は投資対象として充分含まれるでしょう。

投資という事は、値段が下がることもあります。株ほどではないにせよ、稀に人気を集めていた作家が大暴落する(あるいは無価値)場合もないこともないのです。

今の突発的なニュースに振り回されず、丁寧に作家の価格を上げて行くことが、市場に求められて居ます。

中田さんのノートオークションは何だったのか

中田さんが以前自分のノートでオークションをした所、数百万の値が付き交渉そのものが無効になったことがありました。

あれはオークションの仕組みとしてどんな状態だったのでしょう。

オークションには「推定落札価格」またヤフオクなどでも「即決価格」などのように、ある程度目安となる価格が提示されています。

厳密に定められたルールではないので、小規模オークションではない場合もあるかもしれませんが、アートオークションには「この位の値段だよ」と表示があります。

落札希望者は出品作品とその価格を目安に予算を組み、オークション会場に出向くこととなります。

またその作品が長期的に価値を生むものなのかも検討材料となります。

アートがセカンダリーに出るという事は、作者が死んでも落札者が死んでも生き続ける道を選んだことです。

自分の欲求を満たすものか、あるいは長期的に価値がありその一端を担うのか。その尺度が価格に左右されるでしょう。

ノートの場合、推定価格が無かったことで予算を組むことが難しく、ただ高騰した値段に不安を抱かせてしまったのかと思います。

オークションに臨む時は、インテリアアートとして楽しみたいのか、投資なのか、作家支援か、コレクションなのか。この辺を自分の中でスッキリさせてから、予算を決め、オーバーすればスッパリ諦める。そうやってみんなが楽しめたらいいなと思います。

あのオークション、総じてあって良かったなあと思ってます。

おまけ

大体似たようなことをYouTubeで喋ってました笑

一応載せときます

あと、これ読んどきゃokって本をご紹介します。ここでは初心者がアートを投資目的で購入する場合、10万円を目安に予算を組むことを勧めていました。

「教養としてのアート投資としてのアート」徳光健治

最後までありがとうございました。


150 ビュー
12いいね!
読み込み中...