みなさん、こんにちわ。
2021年1月入会の鈴木リカです。
私は元細胞生物学の研究者で、現在はお酒のお仕事をしています。
主にお酒に関して記事を書いています。お気軽にご覧ください。
■一升瓶1本の日本酒を作るのに、お米はどれだけ使うか?
私は週末に「ノンダクレナイト」というTV配信に出演しています。
先週は日本酒のつくり手さんであるたけちゃんがゲスト来てくださり、ちょっとしたクイズ企画をしました。
その中で「日本酒一升を作るのに必要な米の量は?」という問題がありましたが、皆さん予想は当たりましたか?
配信でお伝えした答えは「780 g」です。ただしこれはお酒の条件などにもよって変わり、なかなか深い問題なのです。
そこで今日はこの解説をしたいと思います。
■酒造りの流れを復習
考えていく前に、お米がお酒になるまでの過程を復習します。
1)玄米を精米する(重さは減る)
2)蒸した米と水を混ぜ、発酵させ、「もろみ」をつくる(重さはあまり変わらない)
3)できた「もろみ」をしぼって、液体部分を原酒として取り出す(重さは減る)
4)(場合によっては)水を足して度数を調整する(重さは増える)
これが大まかな流れです。
■計算してみる
仮に1 kgの玄米があったとします。
1)で60%に精米したら(外側40%を取り除いたら)、1 kgの玄米は600 gになります。
(ちなみに食べるお米の精米歩合は90%です(取り除いているのは外側10%)ので、この時点で贅沢ですよね!)
2)では白米1:水1.3で混ぜるので、600 gの米+780 gの水→1380 gのもろみになります。
3)ここでは「白米に対して」3割ほどが酒粕になってしまうため、1380 gのもろみ→(420 g分の米+780 gの水=)1200 gの原酒になります。
4)原酒はアルコール度数が18~19度です。これを日本酒で一般的な度数(16度)まで水で調整すると、1200 g*(18.5/16)=1387.5 gのお酒になります。
(アルコールの比重は0.79なので、厳密には1387.5 g=1387.5 mLではありませんが)
ここまでで1 kgの玄米をスタートにして、約0.77升(=1387.5/1800)のお酒ができたことになります。
逆算すれば、一升のお酒を造るためには、1 kg*(1/0.77)=約1.3 kgの玄米が必要だということです。
これが白米(60%精米の場合)だと780gとなるわけです。
■これは例でしかない
ただし、前述の値は概算値でしかありません。
実際にはこれより多くなったり、少なくなったりします。
例えば、
1)での精米は物によってさまざまで、有名な獺祭の「磨き2割3分」は精米歩合が23%(外側77%は取り除いてしまう)です。この場合玄米は上記の約2倍必要になります。
さらに極端な例だと1桁代(90%以上取り除く)のこともあり、精米歩合の数字が小さいお酒ほど高額なのは、ここにも一因がありますね。
また、3)での粕歩合も様々で、場合によっては使った白米の半分くらいが粕になってしまう、という場合もあります。
この場合は回収できるお酒が減ることになってしまうため、やはり必要な元の量は増えます。
お米を効率よくお酒にできること(=うまくアルコール発酵させられること)は、お酒のコスト面においても重要なのです。
さらに4)では度数を一般的な16度にしましたが、この作業をしないお酒を「原酒」といいます(厳密には1%までの調整なら原酒を名乗れますが)。
皆さんも「生原酒」などといういい方を聞いたことがあるのではないでしょうか?
水分での度数調整をしていない分飲み応えのあるお酒になることが多いのですが、裏を返せばもともと使っているお米の量が相対的に多いお酒ということになります。
■おわりに
今日は数字が多くなってしまいましたが、日本酒がいかに贅沢なものかということが伝わりましたでしょうか?
私の家には4合(0.4升)瓶のお酒が常時20本くらいあるので、約10 kgの白米が化けてここにあるということなのですね…笑
同様な内容のコラムはたくさん流通しており、正直内容としての新規性はないですが、「あのお酒の人が書いたのねー!」と気軽に読んでいただければ幸いです。
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