雨が降っていた。いつ止むとも知れない雨を、窓越しにずっと眺めていた。
ある日、Windowsのモニターから熱量ある声が聞こえた。一度、二度……、30、50…気づくと右手で何度もクリックしていた。
「人は何者にでもなれる。いつからでも」と、熱を帯びた声が言った。半信半疑のまま戸を開けてみた。開いた。それも思っていた以上に軽く、速く。たくさんの人がはしゃぎ、笑い、それぞれに楽しんでいる眩しい景色が広がった。
手始めに朝9時からのホームルームにズーム参加してみた。初めてのホームルームはイレギュラーの夕方配信。シン・エヴァンゲリオンの感想を述べながら涙するという情景に動揺しながらも目が離せなかった。そして、「今日から『大好きだよ』と言ってお見送りさせてください」と言い、初参加の私にさえ、その言葉が贈られた。衝撃が走った。
以来、朝9時にズームを開くのが日課になった。Twitterの鍵アカウントを作り、呟くと、すぐさま「いいね」と優しいリプが届いた。部活にも複数参加し、入学時期関係なく、多くの人が温かく迎え入れてくれた。メンバーのお店に行くと、気軽に話しかけてももらえた。雨が降っていても全国各地、国境すら超えて仲良くなれ、授業やホームルームを聞くだけではなくT V配信で歌ったり、クイズに出たり、インタビューされたり……“やったことない”が次々叶う毎日。
オンラインで知り合い、オフラインで「はじめまして」と挨拶する不思議な体験に何度も心奮わせ、会うなり話が盛り上がった。宝物のようなヒト、モノ、コトとの出会いの数々。その中心にいつもいるのが、そう中田敦彦だ。彼の一挙手一投足が活気あるグルーヴを生み、時間も場所も飛び越え、多くの人を笑顔にする。私も気づくと笑顔になっていた。どこまで行くのだろう。いやどこまでも行きたい。ここで、みんなと。
雨はまだ降っている。でも、歩き出している自分がいる。