私は夢見がちな子どもだった
言語障害を疑われるほど言葉を発するのが遅く、風邪をひけば高熱を出して寝込み、医者からは転地療養を勧められるほど体が弱く、幼稚園は規定の半分ほどの日数しか通っていない。
必然的に友だちもできず、遊ぶ場所は家の中。相手をしてくれるのは絵本のみ。それでも空想の中にいれば、それだけで私の小さな世界は穏やかに過ぎていった。
小学生になると一転、風邪ひとつひかない子どもに。友だちもでき、帰りのチャイムが鳴るまで外で遊んでいる子どもになった。でもやはり読書は続けていた。
中学ではお決まりの受験戦争に突入。学級委員、部活の部長、生徒会副会長を「受験に有利だから」と塾の先生に言われて、逆らうことを知らなかった私はやりたくもないのにやったりして。そんな毎日でも隙間で本が読めればそれで生きていかれた。
高校から大学はエスカレーター式だったから大学受験もせずに部活、バイト、サークル、飲みに行ったり、遊びに行ったり、それなりに楽しかった。それに反比例するかのように読書の時間は無くなって行ったけど。
その後は就職、結婚、子育ての毎日。仕事まで始めて、本を読んでいる時間なんて無くなってた。
何かが足りない…でもその思いは日々の忙しさの中で隅っこに追いやられていった。
仕事にも慣れ、子育てもひと段落した時、何かが足りないことを思い出す。YouTube大学を見始め、progressに入会した私はまた読書をし始めた。
でも…まだ何か忘れている…
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
この夏、2年遅れで2020年に放送されていたドラマにハマることになる。いわゆるBL系作品なのだが、映像の美しさ、storyの出来の良さ、キャラクターの魅力にジャンルを超えてのめりこんだ。
普段ならどんなドラマをみているなど、誰にも言わないのだがこれだけはどうしても誰かに話したくなった。でも…誰に?BL系は敬遠する人も多いから…
そんな時、一人の女性の姿が思い浮かんだ
彼女ならもしかしたら…
彼女の独特な世界観や言葉遣いに一縷の望みをかけて…
progressではあまり推奨されていないDMをした。
「恋愛に性別とか年齢とか気にしますか?」
今、考えれば、あまりに唐突であまりに衝撃的な一文だったと思う。私なら無視するレベル。しかし彼女は返事を返してくれた。リアルな恋愛をイメージしているようだったのでフィクションであり、「あなたは美しいものを好むと思うので」と伝えると、また返事をくれた。
彼女のことは認識していたし、私がスタッフを勤めていた配信に出てもらったこともあるので知ってはいたのだが。
この日から私たちの交流は始まった。
最初はドラマの感想をメッセンジャーでやり取りするだけ。
転機が訪れたのは、そのドラマの出演者の一枚の写真をネットで見つけた朝のことだった。
「この写真、良くない?呉服屋の若旦那って感じよね」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
私が忘れていたもの、それまでの私に足りなかったもの。
そう…『空想の世界』(私はそれを妄想と呼んでいるが)
幼き日、絵本を読みながら空想にふけっていた自分の姿。大きくなるにつれて影をひそめていた世界。誰にも話したことのない私だけの楽しみ。言っても誰も理解してくれないし、役に立たないし、「そんなことしてる暇があるなら勉強しなさい」と言われそうで、怖くて…
でも、彼女は「あら、佳代さん、それ面白いわね」と言ってくれた。写真の彼がどんな境遇で、なぜこんな表情をしているのかを書くと「お話にできそうね」と。
初めて、頭の中だけで考えていたstoryを文章に仕立てた。
「今度はこんな話を思いついちゃったんだけど」とメッセする度に「それいいわね、読んでみたい」と言ってくれる。
私の好きなことを認められた気がした。
ちょうどその頃、あっちゃんがHRで趣味の話をしていた。
「生産性が無くて、ただ楽しくて、誰かと共有できることを毎日コツコツやる」
私にとっては、この空想(妄想)を文字にすることこそがまさにそれ!
私がやっていることを許された気がした。
折川朋子さま
この夏、あなたにメッセージを送って、仲良くなれて、心友になれたこと。
毎日メッセージのやり取りをしたり、長時間にわたるおしゃべりをしたり、映画を観に行ったり、家事や仕事の疲れをいたわり合ったりできたこと。
本当に感謝しています。
あなたと仲良くなれていなければ、私は今でも自分の好きなことを隠して生きていたと思います。
また来年もその先もあなたとこうして楽しく交流できたらと思っています。
これからもよろしくね。
2022/12/27
寺岡佳代