19世紀の革命を学ぶ文献紹介

執筆者 | 23/02/06 (月) | コラム

 2020年公開のドキュメンタリー映画『三島由紀夫vs東大全共闘〜50年目の真実〜』が話題になった。ネットで見た人も多いだろう。
 1960年代から1970年代には学生運動と呼ばれる、大学生たちによる反政府左翼運動が起きていた。「左翼」からして意味がわからない人もいるかもしれない。語源としてはフランス大革命の時の革命軍たちの会議において、より保守的な考えの派閥が右側に、より過激な考えの派閥が左側になったことで、右翼、左翼となったのだが、これでは、「どっちにしろ革命軍」の中での右左になってしまうので、当時の学生運動の時の「左翼」とは、「社会主義革命」を夢見た「インテリ層の若者」を主体にした「組織化された実行部隊」のような感じと言ったらよいだろうか?
 それに対して「右翼」とは何か? となるがこれは「政府」もしくは「国会」に任せるという穏健派的な、言わば「庶民」から、天皇を崇拝する「王党派」までも含まれるのかな?
 ちょっと範囲の定義は曖昧だが、映画の中で三島由紀夫が学生に向かって「君たちがひと言、天皇と共にあるというのなら私は君たちの側になる」的な内容を言っているのは「王党派」だからである。三島由紀夫は1970年に自衛隊の蜂起を促すも失敗し、自決する。

 さて、これらの「革命」に対する熱が、一体全体、なんで高度経済成長を経てどんどん裕福になっていく日本で起きたのか? 
 これは日本だけの話ではなく、世界中で疑問になった。つまり、「ブルジョワ階級、富裕層に属する大学生たちが、どうしてプロレタリアート、労働者階級の為の階級闘争を演じているのか?」という疑問である。この疑問に対する答えは「自身がブルジョワ階級にある罪の意識から解放する為に全てを破壊する」という、鬱屈した自家撞着の回避なのかもしれない。まあ、基本的にその真意、心理的な真実はよくわからない。単純に「お金と暇と仲間を増やす環境」が全部揃うと、人間は派手な祭りをやりたくなるのかもしれない。そして、たまたま「日米安保条約に反対する」という祭りが「革命」にまで「デカくなった」だけなのかもしれない。

 こうした、「革命」の熱とは、舞台『XENO(ゼノ)』の背景のモデルとなった、『アレクサンドルⅡ世』の時代にもあったわけである。そうした、時代の熱を理解する手助けとして、諸々の事実を文献から学んでみるのも「PROGRESS」の王道であるということで、今回はいくつかの書籍を紹介したいと思う。

エドマンド・ウィルソン『フィンランド駅へ』
 共産主義、社会主義という思想は、歴史的にどういう文脈で生まれ育ったのか、を探究した名著です。タイトルのフィンランド駅とは、レーニンがフィンランド駅に降り立つ終局がクライマックスになっているからである。

鹿島茂『怪帝ナポレオン三世 第二帝政全史』
 ヨーロッパに広まった近代政治の流れは、やはりフランス革命に原典がある。そして、その長きにわたる「革命の季節」の終局として、このフランス第二帝政期を知っておくことは有意義であろう。いずれにしても、とにかく面白い本である。

河盛好蔵『フランス文壇史 第三共和国時代』
 第二帝政期の後の第一次世界大戦までの文壇が中心なのだけれども、中で、「パリコミューン」の詳細が簡潔明瞭に書いてあるので、今回の流れとしては、ここをピンポイントで読んで欲しい。

エドワード・ラジンスキー『アレクサンドルⅡ世暗殺』
 あっちゃんもテキストにしている。歴史的な背景をみっちり書き込みながら、いくつかの推論を発展させ、知的好奇心が刺激される。舞台『XENO(ゼノ)』をより楽しむ為に、ちょっと図書館で探してみよう。

ドストエフスキー『悪霊』
 ネチャーエフ事件を参考にしたフィクション。上記の参考文献を読めば、ネチャーエフ事件の知識はもう大丈夫。ドストエフスキーが生み出した怪物的な登場人物たちを味わいつくして欲しい。

以上です。
よろしくお願いいたします。
おしまい。

執筆者 | 23/02/06 (月) | コラム


19 ビュー
1いいね!
読み込み中...